大晦日の、少し静かな夜に。
年越しまで、あと六時間。
私は、自分のスマホで今年撮った写真を眺めていた。懐かしさと、ちょっとした恥ずかしさが交差する。あっという間の一年。特に、女の子になってからは月日が流れるスピードが一段と早くなった気がする。
「懐かしいなぁ……」
制服姿で友達と写る写真。文化祭で撮った集合写真。みうや天とふざけ合ってる自撮り。……どれも、すごく愛おしい。
「今年も、終わりか……」
画面をスリープにして、ふうっと息を吐く。来年はきっと、もっと忙しい。姉さんとの関西旅行、引っ越し、そして——母さんとの同居。
「まさか、一緒に暮らせるなんて思わなかったな……」
ぽつりとつぶやく。あれは突然決まったことで、未だに実感が追いついていない。でも、それでも——母さんともう一度一緒に暮らせることが、ちょっとだけ楽しみだった。
私は布団の上でうとうとしながら、風呂に入っている姉が出てくるのを待っていた。
(早くお風呂入りたいな……早く、年越したい……)
そして——みうや天、クラスメイトたちに会いたい。あとは、なぜか私と結婚しようとしてる人もいるけれど、それはまあ、今は置いておこう。
「カナ! お風呂入ってきな!」
姉の声が脱衣所から響いた。どうやら順番が来たようだ。
「わかったー」
私はのそのそと立ち上がり、部屋着を持って脱衣所へ向かった。湯気のこもった浴室に入ると、ふっと気が緩む。
(姉さんと歳を越すのは、今年で最後になるかもしれないのか……)
自然と、そんなことを思っていた。小さい頃からずっと一緒だった。朝起きて、顔を合わせて、当たり前のように笑っていた時間。それが、変わっていく。そんな未来がすぐそこまで来ているのだ。
湯船の中で目を閉じながら、私は静かに思い出に浸った。
風呂上がり、私は姉とテレビを見ながら、年越しまでの時間を過ごしていた。
「お、そろそろ時間ね」
年明けまで15分。私は気がついた。
「年越しそば、準備しないと!」
「あっ、忘れてた!」
姉は慌てて立ち上がり、キッチンに向かう。
「三分待つのよ!」
「了解!」私はスマホを取り出して、タイマーをセットする。
年明けまで10分。タイマーの音が鳴った。
「三分、経ったよ!」
「ありがとう!」
二人でそばを前に並んで座る。
「美味しそう」
「でしょ? いつもと違うの買ってみたのよ」
「たまには違うやつもいいかもね」
夜も遅いので、私たちは一杯のそばを半分こにして食べることにした。
年明けまで、あと5分。
私はテレビのチャンネルを変える。画面の中では、各地の神社が映し出され、除夜の鐘を待つ人々の姿が映っている。
そして——鐘の音が、静かに響いた。
ごーん……。
テレビ越しに聞こえるその音は、どこか心の奥まで染み込んでくるようだった。
さらば、2024年。
ようこそ、2025年。
来年、私は新しい場所で暮らし、きっと新しい自分になる。それでも——。
私の物語は、まだまだ続いていく。




