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朝起きたら女の子になっていた件〜性別を超えた絆の物語〜  作者: 柴咲心桜
第1部 変化の兆し編

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30/70

名前で呼ぶ距離

楽しかったパーティーが終わった翌朝、私はベッドの中で伸びをしながら、ふと現実に戻ってきた感覚を覚えた。


もう、特別な時間は終わってしまった――そんな少しの寂しさと、でもまた日常が始まる安堵と。


そんな中、登校して教室に入った途端、声をかけてきたのは、昨日も一緒にいた四宮天だった。


「昨日のパーティー、楽しかった?」


天の問いかけに、私はすぐ笑顔になる。


「楽しかったよ!」


素直にそう答えると、天はほっとしたような、それでいてどこか誇らしげな表情を浮かべた。


「そっか。よかった」


会話はそれだけだったけど、それだけで充分だった。天との距離は少しずつ、でも確実に近づいている気がする。


***


季節は12月中旬。もうすぐ冬休みで、街中にはイルミネーションが灯り始めている。


教室でもクリスマスの話題が飛び交い始めた。そんな中、私に声をかけてきたのは、クラスの人気者、山岡恋だった。


「かなはさ、クリスマス誰と過ごすの?」


「え? クリスマス……?」私は少し考えてから答える。


「うーん、これといって、誰と過ごすかは決めてないかな?」


それは嘘でも照れ隠しでもなく、本当のこと。


「そうなんだ〜」


なぜか、山岡は嬉しそうに私の顔を見てきた。なんとなく視線をそらしたくなったけど、私はじっとその目を見返す。


「じゃあさ、家に来ない?」


「はい?」


「かなが、私の家に来るのよ?」


頭が一瞬真っ白になった。彼女の言葉の意味をすぐには理解できなかった。


「……それで、来るの? 来ないの?」


「わ、分かった! 行くよ!」


思わず答えてしまった。恋の顔がぱっと華やぐ。


「ありがとうございます!」


そう言って、恋は嬉しそうに笑うと、そのまま教室の外へと去っていった。


***


クリスマス当日。


待ち合わせは学校の正門前だった。約束の時間より少し早めに着いていたけれど、それでも、私はかなり前からそこにいた。


15分……いや、たぶん20分近く。


寒さで手がかじかんでいたとき、ようやく制服の上にコートを羽織った恋が、スキップでもするように軽やかにやってきた。


「お待たせしました!」


「私も今来たばかりだよ」


それは、嘘だった。


でも、正直に言って恋を気にさせたくはなかった。


「ほんとですか?」


「うん。嘘なんてつかないよ」


「……なら、手を触らせてください」


「え?」


「ほら、早く」


そう言うと、恋が私の手をそっと握った。


「……冷たい。……本当は、どのくらい待ってたのですか?」


逃げられなかった。


「……15分くらい、かな」


「……待たせてしまったのですね。ごめんなさい」


恋が小さく眉を下げる。私はふと思いついて、いたずらっぽく笑った。


「なら、恋のこと名前で呼んでもいい?」


「名前……ですか?」


「うん。私、恋のこと名前で呼びたいの」


照れくさそうに顔をそらした彼女の頬が、ほんのり赤く染まっているのがわかった。


「……もちろん、良いですわよ」


「ありがとう。ちなみに私のことは、かなって呼んでね」


「……分かりました、かな」


「よろしくね、れん」


名前を呼び合う――それだけで、なんだか心の距離が近づいた気がした。


二人で歩く街路には、クリスマスソングとイルミネーションが灯り始めている。


繋いだ手の温度が、少しずつ上がっていくのを感じながら、私たちはゆっくりと、恋の家へ向かっていった。

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