パーティーと、ちょっとだけ恋の予感?
四条家の広大な庭園に設けられた特設ステージの前、シャンデリアのような灯りが夜空に浮かぶ。
「皆さん! 本日はお忙しい中、パーティーにご参加いただき、誠にありがとうございます。当主様よりご挨拶がございます!」
司会役の声が響くと、会場にいた大勢の招待客たちが一斉に視線を向ける。その中央に立つのは、この豪邸の主――四条家の当主だった。
「皆のもの、来てくれてありがとう! 今日はうまい料理をたくさん用意しておる。遠慮せず、思いっきり楽しんでいってくれ!」
その一言が合図だったかのように、広がる歓声と拍手。場が一気に華やいでいく。
「すごい……美味しそうなものがいっぱい……!」
私は目を輝かせながら、長テーブルに並べられた料理の数々に目を奪われていた。オマール海老のグラタンに、金箔が乗ったケーキ、見たことのないオードブル……どれもこれも、まるで高級ホテルのビュッフェのよう。
「かな! 落ち着こ?」
「ご、ごめん……ちょっと、はしゃぎすぎたかも……」
慌てて背筋を伸ばす私に、みうが笑いながら肩を軽く叩いた。
「パーティーなんだから、大人しくしなさいよ」
そう声をかけてきたのは――天だった。
「天!」
呆れたような顔をしているが、どこか楽しんでるのが分かる。私は気にせず笑って返した。
「だってさ、美味しそうで我慢できなかったんだもん!」
「ふふっ……ほんと、子どもみたいね」
天が軽く肩をすくめる。
「でも、もう一年経つのね」
「まだ経ってないけどね?」
「そう?」
「今、12月になったばっかりだよ。あと少しで冬休み」
「そっかそっか! 進級できるといいわね」
「なに、それ。心配してくれてるの?」
軽口のつもりで言ったけど、天は真顔で首を傾げた。
「……まさか、ギリギリなの?」
「いや、そういうわけじゃないけど!」
「私は一緒のクラスでいれれば、それでいいわ」
「……天」
名前を呼んだあと、私はふと口をつぐむ。そして――顔を覗き込んで聞いた。
「ねえ、私のこと……好きなの?」
「――っ!」
天の目が、まんまるになった。
口を開けたままフリーズしていて、完全に思考が止まってる。
……あれ、変なこと言った?
「誰が……誰を……好き、ですって……?」
「うん。天が私のこと、好きなんじゃないかって」
「なっ……なに言ってるのよ!? ば、ばかじゃないの!?」
突然取り乱したように声を上げた天は、顔を真っ赤にしながら身をよじっていた。
そして、最悪なタイミングで――。
「どうした? 天?」
四条家の夫婦、つまり天のご両親が、音もなく現れた。
「パパ、ママっ!? かなが変なこと言うの! 私が、かなのこと好きなんじゃないかって!」
「へえ、天とカナ? いいじゃないか。僕はお似合いだと思うなぁ」
「ママも賛成よ~。カナちゃんなら、安心して天を任せられるわ!」
「ちょっと!? 同性同士よ!? そんなの認められてないってば!」
「まあまあ、天。パーティーの最中に騒ぐ話でもないし、また今度ね?」
「そ、そうね……」
天は顔を真っ赤にしながら背を向けて逃げていった。みうと私は見送りながら、思わず笑ってしまう。
「……なんでみんな笑ってるのよ……」天の遠くから聞こえる小声に、ますます笑いがこみあげてきた。
私の一言が、こんなに騒ぎになるなんて――。
でも、なんだかちょっとだけ、嬉しかった。




