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朝起きたら女の子になっていた件〜性別を超えた絆の物語〜  作者: 柴咲心桜
第1部 変化の兆し編

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四宮家の扉を叩く

「まさか、こんなに早く話しかけてもらえるとは思ってなかったよ」


放課後、人気の少なくなった中庭で私は四宮天と向かい合っていた。昨夜、弦水さんに「四宮家なら協力してくれるはずだ」と言われた私は、天を呼び出していた。


「それで、話って何?」

天は不思議そうな顔で首をかしげる。冷静でどこか理知的なその目は、いつもながら人の嘘を見透かしそうで少し怖い。


「……結論から言うと、あなたの家に住まわせてもらえないかしら?」


「ごめん、ちょっと何言ってるか分からないわ」


当然の反応だった。だけど、私は引き下がらない。


「ごめん、つまり――同棲してください」


「言い方の問題じゃないのよ、それ」


あきれたように額を押さえる天。そりゃそうだ。


「どうして私の家に住みたいの?あなた、家あるでしょ?」


「それは……」


私は小さく息を吐き、姉の失踪と、家に住めなくなった事情をかいつまんで話した。天は黙って聞いていたが、最後まで真剣な顔を崩さなかった。


「それは……残念だったわね。でも、なんで四宮なの?友達なら他にいるでしょ?」


「弦水さんに言われたのよ。四条なら協力してくれるってね」


その瞬間、天の表情がぴたりと止まった。


「……あなた、今なんて言った?」


「え? 四宮なら協力してくれるって?」


「違う!その前!」


「弦水さんに言われたこと?」


「なんであなたが……『四王グループ』のNo.2の名前を知ってるのよ!?」


天の声が鋭くなり、私は思わず首をすくめた。


「弦水さんって、そんなに偉かったの?」


「……あなた、まさか知らないで会ってたの?」


「うん、普通にタメ口でいいって言われたし……」


「ありえない……」


天は頭を抱え、しばらく沈黙した後、私をじっと見つめた。


「ねぇ、叶。四王グループってなにか知ってる?」


「えっと……美味しいの?」


「食べ物じゃないわよ! 四王グループっていうのは、日本を動かしてるような四大財閥の総称なの。政界、財界、学界、すべてに深く根を張ってるわ」


「なるほど……」


意外とわかりやすい説明だった。


「つまり、四宮もその一つ……?」


「違うわ。私たち四宮家は、四条の分家よ」


「……だから本家の当主を名前呼びしてた私を見て、驚いてたのね」


「そうよ。常識的にありえないのよ、それ……」


天はため息をついたが、すぐに話を戻した。


「それで……さっきの件だけど、今すぐ答えを出すのは難しいわ。少し時間をもらえる?」


「うん! もちろんだよ!」


「ありがとう」


そう言って天が微笑んだそのとき、部屋の扉がノックされ、両親らしき人物が入ってきた。


「あなたが……星宮さん?」


「はい。星宮叶と申します。いつも娘さんにはお世話になっております」


自然と背筋が伸び、深く一礼していた。母親らしき女性は目を見開き、感心したように声をあげた。


「まぁ! なんて礼儀正しい子なのかしら」


「いえいえ。両親に昔から教育されてましたので……」


そう答えながら、ふと心の中にひっかかりが生まれる。

――あの家の両親が、そんな教育をするわけがない。


加奈子姉さんを見れば分かる。家の中は、いつも騒がしくて、礼儀なんてあってないようなものだった。


なのに、私はなぜ……こんなに自然に、丁寧に頭を下げている?


「どうしたの?叶」


「ううん、なんでもないよ」


その違和感を、言葉にはできなかった。

もしかしたら、あの家と私は――本当は何の繋がりもないのかもしれない。


「今夜は何しに来たの?叶ちゃん」


天の父親が穏やかに尋ねてくる。


「内容は娘さんにお伝えしましたので」


そう言うと、両親はちらりと天を見て、後で話すように合図した。


「それでは、夜も遅くなってきたので……失礼します」


「また来てね!」


四宮家の人々は、最後まであたたかく私を見送ってくれた。

私は何度も頭を下げながら、ふと心の奥で思っていた。


――ここが、私の“帰る場所”になるかもしれない。

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