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朝起きたら女の子になっていた件〜性別を超えた絆の物語〜  作者: 柴咲心桜
第1部 変化の兆し編

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17/70

春は始まりと、知らない誰かの訪問と

県立東堂学院。

それが、私――星宮叶が今日から通うことになった高校の名前だ。


「かな! 起きなさい。今日は入学式でしょ!」


朝の空気を破るような姉さんの声。

慌てて布団を跳ねのけながら返事をする。


「はーい!」


「もう高校生になるんだから、自分で起きてほしいな」


「……次からは、頑張るね」


姉さんは呆れたように息をついたが、すぐに小さく笑って、「みうちゃんと待ち合わせしてるんでしょ?」と聞いた。


「うん!」


「待たせたら悪いでしょ。早く行きなさい!」


「行ってきます!」


私は制服のスカートをなびかせながら玄関を飛び出した。

今日から私は高校生。――ちゃんと、楽しもう。


* * *


歩いて10分ほどの場所にある公園に、みうの姿があった。


「叶! おはよう!」


「待ち合わせ場所、もう少し先じゃなかった?」


「うん。でも、今日は散歩したくなって。ごめんね」


「全然大丈夫。むしろ会えてうれしい!」


二人並んで歩く道。通い慣れた中学とは違う制服、少し緊張気味の胸。だけど、みうと一緒なら不思議と心が落ち着く。


校門をくぐると、先生たちが新入生を式場へと誘導していた。

玄関近くで、20代くらいの若い女性教師に声をかけられる。


「入学おめでとうございます」


「ありがとうございます!」


まっすぐ進むように指示され、その先の体育館へと向かった。


受付を済ませ、荷物を所定の場所に置き、私はスマホで姉さんに「学校に着いた」とメッセージを送った。


やがて式が始まる。


「新入生入場!」


整列して体育館へ入場。

壇上には校長先生、生徒会長、教頭先生……。


式典は粛々と進み、簡素ながらも温かみのある言葉が交わされた。


(いよいよ高校生活が始まるんだなぁ)


期待と不安が入り混じる中、式は閉式し、担任の先生に連れられて教室へ。


「担任の四葉桜と申します。今日から皆さんは高校生です。高校生らしい行動を心がけてくださいね」


「はい!」


「明日は席替えや教材配布をします。本格的な授業は来週の月曜からです。今日はこれで解散します」


「はい!」


帰り支度をしていると――


「もう!叶ったら先に行って」


「ごめん、みう!」


「一緒に帰ろ」


「うん!」


一緒に並んで歩く帰り道は、どこか懐かしくて心地よかった。


「明日は金曜日だから、頑張れば週末ね」


「それに午前中だけっていうのも嬉しい!」


笑い合いながら、私は家の前でみうに手を振った。


「また明日ね」


「うん、また明日!」


* * *


「ただいま」


鍵を開けて玄関に入る。リビングの明かりはついていない。


(姉さん、まだ帰ってきてないか)


炊飯器のご飯をよそい、簡単におかずをつけて一人の夕食。

静かな時間は嫌いじゃないけど、少しだけ心細さを感じた。


「……お風呂でも入ろうかな」


そう思った矢先――


ピンポーン!


インターホンの音が鳴る。時計を見ると、19時過ぎ。


「みうかな?」


姉さんなら鍵を持ってるし、インターホンは鳴らさないはず。


再びピンポーン!と鳴る音に、慌てて玄関へ向かい扉を開けた。


「はい……!?」


そこにいたのは、見知らぬ男だった。


30代後半ほどだろうか。スーツ姿のその男は、やや緊張した面持ちで口を開いた。


「あの、ここは……星宮かなこさんのお宅でしょうか?」


「はい。かなこは私の姉ですが……何か?」


「かなこさんはいらっしゃいますか?」


「いえ、まだ帰ってきていないんです。普段ならもう帰っている時間なんですが……」


「そうですか」


男の口調は丁寧だが、どこか探るような鋭さがあった。


「……あの、玄関先ではなんですし、よかったら中に」


「それではお言葉に甘えさせていただきます」


私は少し迷いながらも、その男をリビングへ案内した。


テーブル越しに向かい合い、男は静かに口を開いた。


「突然の訪問、申し訳ありません。私は――“かなこさんの元同僚”です。ある件で、どうしても彼女に伝えなければならないことがありまして」


「……そうですか」


「星宮叶さん、ですよね?」


「はい」


「あなたに関わる話でもあります。あなたと……ご両親についての」


空気が一瞬、凍ったように静まりかえった。


私と、家族。

この男は、いったい何を知っているんだろう。


私は、言葉を失ったまま男の目を見つめていた。


──続く。

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