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朝起きたら女の子になっていた件〜性別を超えた絆の物語〜  作者: 柴咲心桜
第1部 変化の兆し編

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16/70

春の夜、親友の家で

四条家から戻った私は、弦水さんの運転手に自宅の前まで送ってもらった。


「ありがとうございました」


車を降りて軽く会釈すると、運転手は無言でうなずき、そのまま静かに去っていった。


ほんの数時間前までとはまったく違う世界にいた気がして、玄関を開けた瞬間、胸に詰まっていたものがふわっと軽くなるようだった。


(……みうに、電話しなきゃ)


私はすぐにスマホを手に取り、連絡を入れた。


「みう! ごめん、連絡遅れて」


『大丈夫だよ! 何かトラブルでもあった?』


「ううん。スマホの充電が切れてて……」

四条家のことをどう伝えようかと迷ったけど、なぜか、今はまだ言わない方がいい気がした。


『そっか、大変だったね!』


「うん……それでさ、今から会えたりしない?」


『もちろん! 迎えに行こうか?』


「お願い!」


『少し待っててね』


「うん、ありがとう!」


電話を切って20分ほどたった頃、インターホンが鳴った。


「おまたせ!」


玄関の前には、笑顔のみうが立っていた。


「わざわざ家まで来てくれてありがとう」


「大丈夫だよ。それより、早く行こっ」


「うん」


私たちは車に乗り込み、みうの家へと向かった。


道中、車内では自然と話がはずんだ。


「みうの家って、大きいの?」


「うーん、他の家と比べたら……たぶん大きいかな?」


「なんとなく、そんな気がしてた。最近、他のクラスメイトに会ってないね」


「うん、クラスで集まったとき以来かな。叶とはよく会ってるけど」


「ふふ、たしかにね。みんな元気にしてるかな……」


そんな他愛のない会話をしているうちに、車は住宅街を抜け、門の前で止まった。


「そろそろ着くよ」


豪奢な門構えと、石畳のアプローチ。その先に見えるのは、想像以上に立派な洋風の邸宅だった。


(やっぱり……すごいお家)


玄関をくぐると、すぐにリビングに案内された。


「いらっしゃい、叶ちゃん」


「おじゃまします」


明るく迎えてくれたのは、みうの両親だった。


「みうの母の栞です」


「父の旅斗です」


「はじめまして。星宮叶と申します」


二人は柔らかく微笑みながら、私を見つめた。


「今日はゆっくりしていってね」


「ありがとうございます」


「ねぇねぇ、学校ではみうはどんな生徒だったの?」


「もう、ママったら、そういうの恥ずかしいからやめてよ」


「だって気になるじゃないの」


リビングには柔らかな笑い声が満ちていて、私はつい頬をゆるめた。


話は自然と盛り上がり、気がつけば空は夕暮れ色に染まっていた。


「そろそろ帰らないと……」


「まあ、まだ早いじゃない」


「でも、家族が心配しますから」


「じゃあ、夕飯食べてから送っていくわよ!」


「……では、お言葉に甘えて」


夕飯は驚くほど豪華だった。まるでレストランのように美しく盛りつけられた料理に、心も体もあたたまった。


「ご馳走様でした」


「お粗末さまでした」


「本当に、美味しかったです」


「それは料理人がいるからよ」


「なるほど……納得の味でした」


食後、リビングで少しお茶を飲んでいると、栞さんがふと微笑んで言った。


「叶ちゃん、また遊びに来てね。私たち家族は、叶ちゃんの味方だから」


その言葉に胸がきゅっとなった。


「……ありがとうございます。とても嬉しいです。また必ず来ます」


「パパ、ママ、私たちそろそろ行くね!」


「気をつけてね、みう」


「うん!」


みうの家の執事が車を運転してくれて、2人で私の家へ向かった。


夜の街は静かで、窓の外を流れる光が穏やかだった。


「みう、今日は本当にありがとうね」


「ううん。私、そんなに大したことしてないよ?」


「でも……あなたの家、すごく立派だった。驚いちゃった」


「そんなことないってば。ただの家だよ。叶の家も、素敵だよ」


私は少し笑った。


「そういえば……明日は入学式だね」


「うん。準備、ばっちり?」


「ばっちりよ! 前日になって慌てる人なんていないでしょ」


「それな!」


そして車が私の家の前に停まる。


「到着しました、叶様」


「ありがとうございます」


「ちょっと、なんで“様”つけてるのよ!」


「なんとなく……そう呼んだほうがいい気がして」


「もう、変なの……」


車を降りる前に、みうが少し笑って私に言った。


「またね、叶」


「うん。おやすみ、みう」


「おやすみ」


手を振って、私は玄関を開ける。


少しだけ、胸の奥があたたかい。


この日は私は、珍しく早くベッドに入った。

明日から始まる新しい生活に、胸を高鳴らせながら——。

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