殺気遣いのフリージア(短編)
「クソッたれがよぉぉぉお!!!!!!」
僕は今、酔っ払いの殺気遣いに追われている。
「テメェら〈機関〉のせいで俺らのダチが死んだんだヨォ!!!!!! ぶっ殺してやるッッッ!!!」
「それでも俺は関係ないだろォォォオオオオオ!!!!!!」
殺気遣いを取り締まる国営の対特殊戦力鎮圧機関、通称〈機関〉、僕がその訓練生であることを飲みの席でつい言ってしまったのだ。
「逃げるようならヨォ……こっちにも考えがあるぜぇぇえええッッッ!!!」
酔っ払ったイカついヤンキー風の男は、近くの自動販売機に手を伸ばす。ヤンキー男の手のひらからバチチッという千鳥が啼くような音とともに電気が放出される。その電気が自動販売機を捕らえた。
べきべきべきィ! と自動販売機が固定具を引き剥がし、宙へ浮かぶ。
「嘘だろォッッッ!?!?」
「死にさらせヤァッッッ!!!!!!」
ヤンキー男が僕へ向けて電気を放出していた腕を振る。それに合わせて自動販売機が剛速で吹き飛んできた。
「ウヒィッ!!!」
恐怖から変な声を出しながら振り返って腕を伸ばす。その先で自動販売機が爆散し、無数の缶やペットボトルを吐き出した。
その背後からヤンキー男が現れた。体を大きく仰け反らせ、電気を纏った拳を振りかぶっている。
「ぶっ殺してやらァァアッッッッ!!!」
「だから俺はただの訓練生でェェェエエエッッッ!!!!」
「……まったく、何やってんのさ、先輩」
その時、上空から風のように現れた一人の少女がヤンキー男を上から押さえつけた。地面に叩き伏せ、そのままアスファルトの地面に沈ませる。
アスファルトに首まですっぽりと埋まったヤンキー男を捨て置き、立ち上がった少女はパンパンと手を払いながら俺に目をやる。
「先輩の能力ならこんな奴、余裕でしょ」
「……う、うん、そうなんだけど下手したら殺しちゃうから……」