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第6話 パーティー結成

 フミカの力を眠らせてしまってから2日が経過していた。フミカの全スキルは未だに眠ったままだった。狼の力も大人しくなったようでそれは何よりなんだが……。


 俺に発現した“力を眠らせる能力”は分からないことだらけだ。眠らせた力を起こす方法も分からない。ギルドマスターにも分からんと言われた。分からんでは困るのだが。


 フミカの生活費は、俺が譲った報酬でしばらくなんとかなりそうだが、それもせいぜい数日が限界だろう。トレジャーハントが出来なくなった今、彼女の仕事をなんとかしてやらなければ……。とりあえず、フミカに紹介出来そうな仕事がないかギルドに探しに来た訳だが。


「おっと、あれは……」


 ギルドの依頼が大量に張り出されているボードの前に、フミカの姿があった。……声を掛けても良いんだが、力を奪ってしまった手前なんだか顔を合わせづらい……。俺は柱の陰から様子を伺うことにした。


「はぁ……」


 フミカの濃度の濃い溜め息が聞こえる……。目を凝らしてフミカが見ている依頼を確認すると、俺がパーティーを追放されてから始めた雑用系の依頼を眺めているようだった。


 雑用の依頼は安い、だるい、つまらないと三拍子揃った特に人気のない依頼だ。“冒険者”ギルドなんだから当たり前だが……。トレジャーハンターのような刺激とロマンを追い求める人種から見れば尚更だろう。


 あの状況を整理すると、トレジャーハンターが出来なくなったから雑用するしかない。だが、そんなもんやりたくないので溜め息が漏れている。……と、まぁそんな感じだろうか。フミカ、すまん……。


「どうした、フミカ? なんだか浮かない顔をしているが」


「ギルドマスターさん……!」


 ギルドマスターがフミカに声を掛けた。あの事件以来、ギルドマスターはフミカを気に掛けてくれているようだった。


「実は仕事を探しに来たのですが……私、冒険者ではないし、今はちょっと戦闘するのも厳しいので……」


「要するに、雑用しか出来ることがないが、そんなもんやりたくない……と、そんなとこかな?」


「い、いえ……ヤリタクナイナンテソンナコトハナインデスケド……」


「思いっきりカタコトだぞ……」


「うぅっ……」


 フミカが困っている……。ギルドマスターは良い人なんだが、繊細さに欠けている……。仕方ない。ここは俺が助け船を出そう。俺にはそれくらいしか出来ることがない。


「ギルドマスター。あんまりフミカを困らせないでくださいよ……」


「おぉ、スイマ。そうか。私はフミカを困らせていたか。すまないなフミカ」


「い、いえっ! そんなことはっ!」


「うーむ……。しかし、雑用はやはり人気がないのかな……」


「そりゃそうですよ……。俺たちは冒険がしたくてここにいるんですから……」


「え? スイマはよく雑用やってるじゃないか? 好きなんだろ雑用?」


「そんな訳あるか……! 俺だって好きでやってるんじゃありません……! それしか出来ないから仕方なくです……!」


「そうか……。スイマとフミカは雑用がやりたくないと……。それじゃ、2人で組んで他の依頼に挑戦したらどうかな?」


「えっ……!?」


 俺とフミカは同時に声を上げた。ギルドマスターの提案は俺たちが想定していなかった物だったからだ。


「討伐は無理でも、2人なら近場で採取依頼くらいは出来るんじゃないかな? まぁ、近場の採取も雑用と同じくらい人気はないけど」


 採取か。確かに、室内で延々と掃除するよりかは悪くない。……悪くはないんだが。フミカは俺なんかと組みたがるだろうか……? トレジャーハンターの力を奪ってしまった俺なんかと……。


「確かに、俺も雑用よりはそっちの方が良いですけど……でもフミカは……」


「やりますっ! やりたいですっ!」


「即答っ!?」


 俺の予想に反してフミカはノリノリだった。そこまで雑用がやりたくなかったのか……。


「決まりだね。それじゃ、仲良くやりなよ?」


「はいっ! スイマさん! よろしくお願いしますっ!」


「あ、あぁ……! よろしく……!」


 フミカとパーティー結成か……。ずっと殺伐としたパーティーで肩身の狭い思いをしてきた俺が、ようやくまともな仲間と組める時が来たのか……。冒険者を始めた前の夢と希望に溢れた気持ちが、少し蘇ってきた気がした。

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