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第4話 縁と因縁

「とある遺跡で手に入れた戦利品……彼女はそう言ってました……」


「そのブレスレット、古代文字が彫られているな。ずいぶん古い物なんだろう……」


「これを装備してから狼化に悩まされるようになりました……。もちろん、すぐに外そうとしましたが、全然外れなくて……」


「そりゃ、呪われてるな……」


「で、ですよね……」


 一度付けたら外せなくなる呪いの装備品。その存在自体は珍しい物ではない。大抵は呪いの解除が出来る職業に頼めば済む。


「教会には行ったのか?」


「はい……。でも、やはり古い物なので、古代文字が解読出来ないと外すことが出来ないようです……」


「そうか……」


「あたしは自分の力をどうすることも出来ず、途方に暮れて……夜は狼に意識を乗っ取られながら、気が付いたらこの街に流れ着いてました……」


 当然、彼女はブレスレットを外す手は尽くしているようだ。古代文字の解読は現実的ではない。随分と厄介な物をプレゼントされたな……。


「そのブレスレットを寄越した友人とかいうのは、今どうしてるんだ?」


「友人は私にこれを譲ってから、姿を消しました……。あたし、あの子のこと、信じてたのに……。本当に悲しくて……!」


「俺も君と似たようなもんだ……」


「え……?」


「ずっとギルドで一緒に依頼をこなしていた仲間からパーティーを追放されたんだよ。そのあとに難癖つけられて、装備と所持金をほとんど奪われたりもした……」


「そうなんですか……そんなことが……」


 フミカのことは他人事とは思えない。解けない呪いを抱えたまま生きるのはツラい。なんとかしてやりたいが……。


「うっ……!?」


「お、おい! どうした……!?」


「す、すみません……! また、狼化の症状が……! ア、アウゥ……!」


 この周辺には、イラトたちが狼化したこの子を狙ってうろついている……! このままだと討伐されちまうぞ……!


「グオオオオオッ!!」


「くっ……! フミカ……! 落ち着け……!」


 そんなこと言って通じるなら苦労しないか……! くそ……! 俺がこの子にしてあげられることはないのかよ……!?


「おいっ! こっちだ! こっちの林の中から狼の唸り声が聞こえたぞ!」


「こ、この声は……!?」


 最悪なタイミング……! 狼の捜索を続けていたイラトについに見つかっちまったか……!


「いたぞ! オッコ! カツム! ……ん? そこにいるのはスイマか……? 何やってるんだそんなところで……」


「イラト聞いてくれ……! この子は普通の人間の女の子なんだ! 呪いのアイテムの影響でこうなってる! 傷付けないでくれ……!」


「な、なんだと……?」


「グアアアアアアッ!!」


「うおっ!?」


「イラト……!」


 狼化したフミカはイラトに飛び掛かった! オッコは慌てて魔法の詠唱を始めようとしている……!


「や、やめろ! 人間の女の子だと言ってるだろッ!」


「スイマ……。お前、俺たちへの恨みを、あの狼を利用して晴らそうとしているんじゃねぇか?」


「はぁ!? カツム、こんな時に何言ってんだ!?」


「そうね……。こいつの言うことはいつもアテにならないもの」


「おい! ふざけんなよ……! あの服装見てみろ! 明らかに女の子の格好してるだろうが!」


「お、俺たちはこいつの正体など見ていないし、知らない……! そうだよな? オッコ!? カツム!?」


「えぇ、そうね。イラト!」


「知らねぇもんは、しょうがねぇよなぁ?」


「あの狼は街の害獣、俺たちはこの依頼でギルドの信頼を獲得するんだよ……!」


「お、お前ら……!!」


 こいつら、知らないでこのまま済ませる気か……!? あの子の命より、依頼の達成の方が大事だってのかよ……!?


「フレイム!!」


「くっ!!」


 オッコがフミカに向かって炎の魔法を唱えた! 俺は咄嗟に、炎の塊を体で受け止めていた……!


「うおあああっ!!」


「フレイムに飛び込んだ……!?」


「ば、馬鹿かこいつ……! 生身で炎に突っ込むなんて!」


「グアアアアアッ!!」


「お前も、いい加減離れろッ!!」


「ガァッ……!!」


 イラトが剣を抜き、フミカの肩を斬り裂いた……! くそ、このままじゃフミカが殺される……!


「うぅ……す、すみマせん……ゆ、ゆルしてくだサい……」


「フミカ……!」


 幸運にも、イラトに傷付けられてフミカの意識が戻ったようだ。身体も、耳と尻尾の生えた状態で半分人間に戻っている。これならイラトも分かってくれる……。


「はぁ……面倒だなぁ……」


「え……?」


「その尻尾だけ斬り落として、体は焼き尽くしちまうか……。それで依頼は達成だ。そうだよな? オッコ。カツム」


「えぇ、そうね。化け物には変わりないもの」


「こんな化け物を生かしておいたら、みんなの迷惑になるもんなぁ?」


「そ、そンな……」


「マ、マジで言ってんのか……?」


 怒りで気が遠くなりそうだ……。こいつら、自分たちさえ良ければそれで良いのか……!?


「死ねッ! 化け物!」


「ひっ……!」


 イラトがフミカの尻尾を切り落とそうとしている……! 本当に、殺される!


「やめろおおおおおォ!!」


 なんでもいい。奴らを止める力を。あの子を助けられる力を、俺にくれ……!


 そんな俺の願いも虚しく、イラトの剣は振り下ろされてしまった。


「あ? なんだ? 刃が通らないぞ……?」


「え……?」


 狼化したフミカの肩を容易に斬り裂いたイラトの剣。だが、弱々しく震えているフミカの尻尾が斬り落とせず、ピタリと止まっていた。


「な、なんだその力? スイマ、お前何しやがった!?」


 な、何を言ってるんだ……? 俺は何もしてな……。


「なんだこりゃ……!」


 俺は自分の手から放出されている魔力の光に気が付いた。その光がイラトを包み込んでいる。俺が、あいつの力を奪ったのか!?


「くそッ! カツム! オッコ! 俺の代わりに頼む!」


「わ、分かった……!」


「させるかッ!」


 なんだか分からないが、俺は魔力の光をオッコとカツムにも向けて放つ。イラトと同じように、光がオッコとカツムにも纏わり付いていく。


「このヤロッ!」


 カツムが手に持っていた大斧でフミカの尻尾を斬り落とそうとする。だが、まるで手の力が完全に抜けてしまったように、カツムの斧はフミカに届く前に地面にめり込んでいた。


「斧が……重い……! なんだこりゃあ……!?」


「フ、フレイム!……魔法が出ない!? なんで!?」


 オッコが杖を構え炎の魔法を放とうと呪文を唱える。だが、杖の先からは何も出なかった。なんだか分からないが、完全に形勢は逆転していた。


「もうそこまでにしてくれ。この依頼、諦めてくれるなら今回の件は黙っておいてやる」


「ぐぎ……! チクショオ……! なんで俺たちがスイマなんかにィ……!」


「もういい……! 行くぞ……!」


「イ、イラト……!」


「待ってくれよぉ!」


 悔しそうに顔を歪めながら、イラトたちは立ち去っていった。なんだかよく分からないが、なんとかなったようだ……。


「ウ、ウぅ……」


 フミカはまだ狼の力で苦しんでいる……! だが、もしかして今の俺の力なら……。


「はっ!」


 俺はイラトたちと同じように、フミカに向けて手をかざした。すると、フミカの耳と尻尾はみるみる引っ込んでいった。完全に人間の姿に戻ったフミカは、八重歯が特徴的な可愛らしい女の子だった。


「力が……落ち着いていく……?」


「これは一体なんなんだ……。まるで力が眠っちまったように……」


 力を……眠らせる? 俺にそんな能力が目覚めたってのか……?

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