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ショートショート12月~3回目

缶コーヒー

作者: たかさば

 加糖、微糖、ミルク入り、ブラック、オリジナルブレンド、スペシャルブレンド、プレミアム、赤いの、黒いの、金色に水色、虹色、小さいの、大きいの、細いの、太いの、その他もろもろ……。


 甘いのにしようか、ブラックにしようか、まろやかなやつもいいな、たくさん飲みたいからでかいのにするか、蓋付きのやつにしておけば飲みきれなくても後で飲めるぞ、……いやまて、鮮度が落ちて味が落ちるくらいなら、小さいのを飲み切った方が良いのではあるまいか。


 バラエティ豊かな缶コーヒーのラインナップに……戸惑う事がある。

 お気に入りの銘柄がないので……たまに自動販売機の前で迷ってしまうのだ。


 欲しいものをなかなか決める事が出来ない時、他人任せにしてみたくなるというか……誰かにつられることがある。

 前に並んでた人が新発売のものを買っているのを見るとついつい自分も買いたくなるし、部長の顔を見るとブラックが飲みたくなるし、受付の三木さんを見かけるとカフェオレを飲みたくなるのだ。


 コーヒー好きだからこそ……適当に選べない。

 どのコーヒーも個性豊かな面々で、どれを飲んでも一緒だとは思えないからだ。


 コーヒー好きだからこそ……適当に選びたい。

 どれを選んでも、何を飲んでも、コーヒーはうまいと思うからだ。


「ね〜、ゆうくんどれ飲む?」


 ……今日は、彼女の選んだものを飲もうかな。


「なんでもいいよ、里花の飲みたいやつと一緒で」

「えー?いっぱいあって選べなーい!ね、ゆうくん選んで!…あたしが喜びそうなやつ♡」


 里花の好きなコーヒーは…たしか砂糖とミルクがたっぷり入ったやつだったな。

 この前始発待ちをしてた時に、駅の階段で一本を分け合って飲んで…、うまいうまいって感動してたし。


「…はい、里花の大好きなミルクコーヒーどうぞ?今日も半分こ、する?」


 にっこり笑って、熱々の缶コーヒーを、差し出すと。


 ……うん?

 何やら、彼女の、様子が……。


「……ゆうくん、あたし…コーヒー飲めないって、言ったよ、ねぇ?……っていうか、今日も?半分こ…?ねえ、いったい……誰と、 ま ち が え て る の ? 」

「…ッ!あ、あはは!!ごめ、ねねねねぇちゃんと間違えちゃったよ、うちの姉ちゃんねえ、ホントいつまでたっても甘くてモッタリしたおこちゃまコーヒーがだだだ大ちゅきでね?!」


 大慌てで飲み干した、あっちんちんの砂糖がたっぷり入ったミルクコーヒーは、全く味なんかしなかったという、お話。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 声に出して笑いました! 面白かったです! そして主人公の優柔不断さがめちゃめちゃ効いてる!! 構成に痺れました!! 美味しい缶コーヒーをありがとうございました!
[良い点] 缶コーヒーを選んでるときの気持ちがうまく表されてるなぁと思ってみてみたら……。 [気になる点] 誰と間違えたのでしょうね?(*`艸´) [一言] オチが良かったです! 楽しい時間をありがと…
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