プロローグ
あるところに、一人の女の子と神様がいました。
女の子は石に座って神様は祠にもたれかかるようにして何やら話をしています。
「ねーねー。一花ちゃんって物にも魂は宿るってお話聞いたことある?」
「うーん、何かのおとぎ話というか、昔話みたいなのでなんとなく。でも、急にどうして?」
「うん、一花ちゃんが座っている石を見てたらふいに思い出したことがあってね」
「え、この壊したらまずい石がですか?」
「うん。というか、そういうこと言うわりに毎回座ってるよね?」
「う……なんとなく申し訳ないのはわかるんですけど、どうにも」
「どうにも?」
「座り心地が良いというか、安心するというか」
「あはは」
神様は一見大人の女性のように見えますが、よくよく見てみるとしっぽが生えています。しかも、足元は素足にサンダルでした。その神様は、本来は別の姿があったりしますが、あえてこの格好をしているのでした。
一花ちゃんと呼ばれた女の子は、前髪が綺麗に切り揃えられていて、とても可愛らしい顔をしていますが、どこか芯の強さもうかがえます。
二人からはどこにでもいる友達のようでいて、少しだけ不思議な雰囲気が漂っています。
「一花ちゃんに、少しだけお話を聞いてもらおっかな」
神様がそう言って伸びをすると、そこに少しだけ強めの光が降り注ぎました。しかし、それはまぶしくはなく、光が当たった場所は温かく明るく感じます。現に、その光を浴びた女の子は、気持ちよさそうに微笑みました。そして、その微笑みを神様に向けるとうなずきました。
「うん、それじゃあ木に宿った一つの魂――神様の話と、それに関わった女の子の話をするね」
神様は一つうなずくと、ゆっくり話し始めました。