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 上手さんはまず、ジャージの上着を脱いだ。

 その下は黒いスポーツ用のTシャツだった。これならまだ、夏場は普通に外でしているような格好なので、あまり恥ずかしくはないと思う。

 ただ、シャツ越しにも上手さんの細く引き締まった身体のラインがよくわかり、僕は息を飲んだ。制服や学校指定のゆるいジャージでは見られない姿だった。

 上手さんはジャージの上着を丁寧にたたみ、次に靴と、靴下を脱いだ。

 靴下も丁寧に畳んでいた。やはり、いきなりズボンやTシャツを脱ぐのは抵抗があるのだろう、と僕は考えた。

 頼む。ここで止まってくれ。


『やっぱり恥ずかしい、できないよ』


それでいい。これ以上脱がれたら、ほとんどの人は見たことがない部分を目に焼き付けてしまう。

 しかし僕の考えは甘かった。靴下をたたみ終わると、上手さんは躊躇なく、シャツを両手でたくし上げ、一気に脱いだ。

 上半身に残っていたのは、灰色のスポーツブラだった。

 大きくはないが、きれいな形の胸のふくらみで、上を向いてぱん、と張っている。


「ごめんね、色気ない下着で」


 上手さんは恥ずかしがる様子もなく、少し笑っているような顔で僕を見ていた。僕は上手さんを直視できなくなって、目をそらしていた。


「見たいんでしょ? 見ていいよ。私、バドミントンやめた後も走ったりしているし、カロリーにも気をつけてるから。自分でも、自慢の身体だよ?」

「……っ」


 上手さんの身体は、まるで太陽のように輝いているように見えて、僕はおそるおそるそちらを向いた。へその周りが、きゅっ、とアニメで見る美少女キャラのように絞られていて、こんな体型現実にあるのか、と僕はある種の感動を覚えてしまった。

 そして、上手さんは、ズボンもためらいなく一気に降ろした。

 パンツも、上のスポーツブラと同じく、灰色でスポーツ用の足まで生地があるタイプのものだった。

 下着にしては露出度が高くないというか、陸上部のユニフォームならありえる程度の格好だった。

 それ以上に、細く引き締まった足と、そこからパンツへの身体のラインが刺激的すぎて、上手さんの身体がさらに眩しく見えた。


「流石にちょっと、私も恥ずかしくなってきたかなあ」


 上手さんがけらけらと笑っている。

 僕の方が恥ずかしくなってしまって、また直視できずにいる。上手さんはそんな僕を笑っているのだ。


「次、ブラ外すけど。こっち見てくれないと意味ないよ?」

「……」

「どうしたの? 私、見てもらってもいいよ。誰かに言いふらして、あとで南條くんを悪者扱いしたりもしない。死ぬまで二人だけの秘密にしておく。私と南條くんだけの問題だから」

「ごめん……なさい……」

「ん?」

「ごめんなさい……もういいから……服、着てください……」


 もうこれ以上は、僕の方が限界だった。

 上手さんが、僕のことを好き――という言葉をそのまま受け取るとして、望まない形で、無理やり裸にさせられるのは、彼女にとって本意ではないし。

 何より僕自身、本当は嫌がっている上手さんの裸を見るのは、辛かった。

 上手さんは多分、僕がそこまで悪人になれないと理解していて、誘いに乗ったのだ。


「こんなチャンス、もう二度とないかもよ?」

「チャンスなんかじゃない……僕、上手さんがこれなら諦めてくれると思って、言っただけなんだ……ここまでするつもり、なかったんだ……」

「ごめんね。知ってたよ。私もやりすぎたかな」


 上手さんは黙って服を着直した。その間、僕も黙って、美術室の床を見つめていた。


「本当は、優しい南條くんが本気でこんなこと言うわけないって、信じてたよ」

「……」

「あんなところで偶然、今ケンカしてるお父さんに会って、その上私につきまとわれて……めちゃくちゃ嫌な気持ちになってただけだよね」

「……」

「しつこくつきまとった私が悪いから。南條くんは気にしないで」

「……」

「これで南條くんの頭が冷えて、オブジェの解体を諦めてくれたら、私はそれでいいから」

「ごめんなさい……」

「謝らなくていい。で、どうするの? まだオブジェの解体する気? したら邪魔するけど」

「いや……しばらく忘れる。それを解体することで上手さんが悲しむなら、それはできない」


 僕がそう言うと、上手さんは一瞬、服を着直す手をとめ、僕の方を見た。


「私のために、このオブジェを残してくれるって事?」

「僕の作品をここまでして守ってくれた人は他にいないから。上手さんにかなう人はいない」

「そ、そっか、あははは」


 急にヘンな笑い声をあげる上手さん。


「ごめん。本当にごめん」


 冷静になって、僕は上手さんにしてしまった事をひどく後悔した。多分、これで上手さんは少なからず傷ついただろう。女の子が命令されて、男に裸を見せる訳がない。


「何かお詫びがしたいけど、さっきのフラペチーノでは足りないよね」

「お詫び? いいよいいよ、南條くんだって辛かったんでしょ? 困った時はお互い様でしょ」

「いや。僕はやりすぎたと思う」

「そ、そう? 別に全然、南條くんには見てもらってよかったし……何なら既成事実で一気に彼氏と彼女になったり……へへ……」


 小声でうまく聞き取れなかったが、上手さんは怪しい表情で、指と指をつんつんしながら何かつぶやいていた。

 

「僕にできるお詫び。何かないかな。してほしい事、ない?」

「うーん、そ、そんな急に言われてもなあ」


 その時。

 カツン、カツン、という、誰かが階段を上がってくる音が聞こえて、二人とも硬直した。

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