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脳内の姉

  俺、日比野正尚ひびの まさたかには人には言えない秘密がある。

  言っても信じて貰えないことは確信しているからだ。


  でも誰だって自分の全てを打ち明けている訳じゃないだろう?性癖だったりちょっとした悪行だったり。大小は様々だったりするからな。


  しかし、俺のそれは誰にも信じて貰えないことは確信している。


  ん?そんな事は聞いてみないと分からない?


  そうだな。じゃあ話してやる。


「俺の中には他の人の記憶が存在している」


  どうだ?信じられるか?

  現に目の前にいる俺の友人は笑って受け流しているよ。


  どう思われようと仕方ないがこれは事実だ。

  俺の中にはある女の子の記憶が存在している。


  それも異世界で人生を過ごした女の子の記憶だ。


 ◇


  俺がその記憶の存在に気がついた時は物心ついた時だった。

  そんときは、それはもう幼心に驚いたし本当に悩んだもんだ。


  だって分かるか?日本語を覚えるより先に謎の言語を喋るわ存在しない文字を書くわで、悪魔の子なんじゃないかと噂されるし、羨まれることなんて何一つない。

 

  日本人は特に自分と違うもの…。いや違うな。「出る杭は打たれる」ってのが正しいか?

  なんでも尖ってるのは疎まれるって物だ。


  そんな過去もあり俺は生まれた土地を逃げる様に後にして、母親のツテを頼って京都の郊外に移り住んでいた。


  知ってるか?京都って意外と心霊スポットの聖地だったりするんだよ。

  本当にそこら中に散らばってるもんでな、調べたら徒歩圏内に有名なスポットがーってのはよくある話だ。


  そんな環境だからかな。

  俺に要らない変化が起こったんだよ。


『霊視』と『俺の脳内に発生した記憶の持ち主の人格の形成』と言ったふたつの大きな変化が。


  この2つが同時に発現した時、流石に普通の生活は出来ないだろうなと流石に悟ったわ。

  だって考えてみろ。頭の中で自分以外の意思で声が反芻するだぞ?一人になれないストレスも合わさってあわ良くば人格破綻者になりかけたんだ。


  形成された人格は本当に恐らく高校生くらいの女性だった。

  だったと言うのは彼女が俺の頭の中で見せるイメージが正しいなんて保証は何も無いからだ。


 ◇


  それからという物、俺の遊び相手はその「お姉ちゃん」と言う存在しない相手になり色々なものを教えてもらった。


 一つ違いの妹は居たが、異常な自分と正常な妹を見比べてしまい、素直に接することが出来ずに距離を置いてしまっていたので俺の会話相手はほぼこの姉のみだったと言っていいだろう。


  自分では見た事ないのに鮮明に映像として思い出せる「お姉ちゃん」の故郷である異世界。そこでは現代日本では想像上の産物とされているような魔法だったり剣技だったりが当たり前として共通認識だった世界。


「あーあ、俺も姉ちゃんの世界に生まれたかったなぁ」

『なんで?ここにだって素敵なものは沢山あるじゃん!ほらテレビとかっ!』

「別にテレビくらい当たり前じゃんかぁ」

『ふふ、結局向こうの世界で生まれてたとしても正尚はこっちの世界に恋焦がれてたと思うよ?』

「なんでそんな事分かるのさ」

『んー?だって、私がそうだったから♪』


  そう口癖のように言い聞かせられたのをよく覚えている。


  俺にしか存在を感じられないお姉ちゃんは本当に本当に、良い姉であり人間だった。


 ◇

 

  そんな小学生のある夏休み。

  とある女の子との出会いで俺の秘密は人に知られてしまう事になるのだった。

 

  運命は本当にイタズラが好きだ。

  隠しておきたいものは明るみに出させ、意思は尊重されない。

  そして歪な歯車が噛み合いそうになると躊躇なく破壊してくるのだから。


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