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真っ赤な吸血少女は好きな人を傷つけたくてたまらない  作者: M・A・J・O
第二章 吸血少女は愛されたい

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第60話 人生はよい

「え、厩務員……ですか?」

「はい。高宮先輩たちと馬術部で活動するうちに、馬と関わる仕事をしてみたいと思いまして」

「わ、私も同じ夢持ってますけど……その……結構重労働ですよ?」


 厩舎で馬の世話をするということは、当然馬を洗ったりブラッシングしたりもするし、生き物相手だから朝も早い。

 体力的にもかなりハードな仕事だ。


「大丈夫です。覚悟はできてますから」

「そ、そうですか……まあ、馬術部に入部してくれるのはありがたいからなにも言えませんけど……」


 あたしがそう言うと、高宮先輩は戸惑う様子を見せつつも受け入れてくれた。

 そんなこんなで入部届を記入し、あたしは正式に馬術部の部員となった。


 そのあと、あたしたちは空き教室へ向かうことになった。

 今日は馬術部で馬の餌やりや掃除などの当番を決めるらしい。

 もしかして、このタイミングであたしを部活に誘ったのは偶然ではなかったのか。

 教室の中に入ると、すでに何人かの部員らしき人たちがいた。


「あっ、沙織ちゃん! やっと来た!」


 こちらに気付いた一人の少女が手を振る。

 あの子は高宮先輩と同じ二年生だろうか。

 タメ口だし名前で呼んでるし。

 すると、他の部員たちも一斉にこちらを見た。


「もー、高宮先輩がいないと始まらないじゃないですかー」

「そうそう。先輩はこの部の中心的存在なんですから!」

「え、いや、そんなことはないと思うけど……第一、私部長じゃないし……」


 どうやら、彼女はこの部の中心人物であるようだ。

 それにしても、この前馬術部にお邪魔した時も思ったけど、ずいぶん慕われているんだな……

 馬の扱いが上手くて優しいから、慕われるのもわかる。


「ほらほら、沙織ちゃんは新たな部員を連れてきてくれたんだから。その子の話聞こうよ」


 ……もうすでにあたしは部員として認識されているのか。

 あたしが入部を断っていたらどうなっていたのだろう。

 とりあえず、あたしは仕切っている先輩に促されるまま自己紹介をした。


「黒衣花恋です! よろしくお願いします!」


 ☆ ☆ ☆


「……と、いうことがあったのですよ」

「そっか。花恋ちゃんも自分の夢を見つけたんだね」


 それからしばらく経って、あたしはそのことを渚に伝えていた。

 本当はもっと早く伝えたかったんだけど、なかなか話す機会がなかったのだ。

 そして今日、ようやく伝えることができた。


 ずっとあたしのことを考えてくれていた人だから。

 あたしの夢を、人生を、変えてくれた人だから。

 だから、渚にあたしのことをよく知ってもらいたかった。

 あたしが自分なりの夢を見つけようと思ったのは、渚のおかげだし。


「でも、本当によかった。花恋ちゃんが自分のやりたいことを見つけられたなんて。すごく嬉しいよ」

「ありがとね。これも全部渚のおかげだよ」

「えへへ、そんな大袈裟だよ~」


 あたしの言葉に、渚は照れ臭そうにはにかむ。

 その表情を見てると、なんだかこっちまで嬉しくなってきた。

 やっぱり、渚と一緒にいると落ち着くなぁ……


「あ、そうだ。これから時間ある?」


 ふと、渚がそんなことを聞いてきた。

 今日は特に予定はないはずだけど……なんだろう。


「うん、大丈夫だけど……」

「それならさ、私の血……飲まない?」

「おー! あたしも飲みたいと思ってたとこだよ! ありがとう!」


 あたしは笑顔でお礼を言う。

 昔から仲良くて色々なことがあったけど、ここまで気持ちが一つになったのは初めてな気がする。


「じゃあさっそく飲む? ちょっと待っててね」


 そう言って、渚は自分のバッグの中から小さな瓶を取り出した。

 その中には赤黒い液体が入っている。

 あれが彼女の血液だ。


「はい、これ飲んで」

「……え、元から用意してあるの?」

「実は花恋ちゃんが来る前に採ってきたんだ。だから安心していいよ」

「いや、安心とかそういうことじゃない気が……まあいいか」


 そう言いつつ、あたしは瓶を受け取る。

 そして蓋を開けて中身を飲み干す。

 採れたて新鮮な血じゃなくても、相変わらず美味しかった。

 この味を味わえるのも、すべては渚のおかげでもあるんだよな。


「どうだった?」

「うん、いつも通り美味しいよ」

「それはよかった。これで少しは元気になってくれたかな?」

「もちろん! ありがとね、渚!」


 こうしてあたしたちの日常は、どこか普通とは違うながらも平和に進んでいくのだろう。

 この先も、ずっと。


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