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真っ赤な吸血少女は好きな人を傷つけたくてたまらない  作者: M・A・J・O
第二章 吸血少女は愛されたい

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第53話 もう迷わない

 渚を傷つけるやつは許さない。

 渚を泣かせるやつは許さない。

 だけどこれらは、あたしにも当てはまることで。

 特大のブーメランになっていることに、気づかないフリをしてきた。


「……ごめんね、渚」


 ぽつりと呟いた言葉は、誰にも聞かれることなく消えていった。

 だけど、あたしはやっぱり渚が好き。

 百木先輩が「自分に素直になった方がいい」と言ってくれたから、今ならちゃんと言える気がする。

 渚に自分の気持ちを伝えようと思う。


 制服を着て髪をツーサイドアップにする。

 そして鏡の前で最終チェックを……


「うん、いい感じかな」


 今日も真っ赤な髪を携えて、いつも通り登校した。

 渚への想いは日々溢れかえっている。

 でもその想いを口にしたらもう戻れない気がして、ずっと言えなかった。

 だけど今は違う。

 あたしは自分の意思でこの想いを伝えるんだ。


 ……そう決めたはずなのに。

 いざ渚を前にすると怖くなる自分がいる。

 もしも拒絶されたら?

 今までの関係すら崩れてしまったら?

 そんな不安ばかりが頭に浮かぶ。

 でも、渚には幸せになって欲しいからこそ言わなくちゃいけない。


「渚……っ!」

「え、花恋ちゃん?」


 前を歩く渚に声をかけ、腕を掴む。

 突然の出来事に驚いたのか目を丸くしている渚の顔を見て、少しだけ緊張が和らいだような気がした。


「あのさ……」

「う、うん。どうしたの?」

「……ちょっと時間ある?」

「うん、大丈夫だよ」

「じゃあ着いてきて」

「ん? うん、わかった」


 きょとんとした表情をしているけど、なにも聞かずについてきてくれる渚に感謝しつつ腕を引く。

 階段を上がり、屋上へと続く扉の前に来た時にあたしは振り返って深呼吸をした。


「あれ、屋上の扉って開いてたっけ?」

「わからない。でも、だれも来なさそうだしいいかなって」


 鍵穴があるはずの場所に手をかざすけれど、手応えがない。

 ガチャリと音を立てて扉を開けると、眩しく差し込む日差しに目がくらみそうになった。

 空を見上げると雲一つない青空が広がっている。

 今日という日には最適かもしれない。


「うわ、でもさむっ!」

「そりゃそうだよ。二月だもん……」


 吹き付ける風が冷たくて思わず身震いをする。

 コートを持ってくればよかったと思いつつ、とりあえず話をするために手近にあったベンチに腰掛けた。


「それで、どうしたの花恋ちゃん」

「……渚、聞いてほしいことがあるんだ」

「うん聞くよ」


 あたしの隣に座って首を傾げる渚は、いつも通りの優しい笑顔を浮かべている。

 そんな顔を見ると余計に心臓が激しく動く。

 バクバクと大きな音を奏でる心音がうるさくて、口から飛び出そうな勢いだった。


「あのね……渚ってさ、傷つけられたり吸血されるのはあまりやってほしくないんだよね?」

「……まあ、できればね。でも、まったくやられないのもそれはそれで……だって、そういうのは花恋ちゃんにとっては愛情表現なわけじゃん」

「うん。だからね――渚がやってほしい時にやる、っていうのはどうかな?」


 我ながら名案だと思う。

 それならばあたしの気持ちを汲んでくれるはずだ。

 あたしの言葉を聞いた渚は何度か瞬きをして、そしてくすりと笑った。

 あたしの意図が伝わったらしい。


「なるほど。つまりお互いがやりたい時にやるってわけね。それならお互いにとっていいかも」

「でしょ!? あたしたち恋人なんだから遠慮はいらないと思うんだ!」


 恋人同士だからこそできること。

 それがこれだとあたしは思う。

 お互いにしたいことをする、これが一番幸せなんじゃないかな。

 渚が納得してくれたことにホッとして肩の力が抜ける。

 やっぱり、最初からこうして話し合えばよかったんだ。


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