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真っ赤な吸血少女は好きな人を傷つけたくてたまらない  作者: M・A・J・O
第二章 吸血少女は愛されたい

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第49話 二人が羨ましい

 嫩先輩の名字は渡島というらしい。

 あたしは渚以外名前で呼ぶ気もないし、渡島先輩と呼ばせてもらおう。

 呼ぶ機会があるかわからないけど。


「あなたが黒衣花恋ちゃんね。沙織ちゃんと仲良くしてくれてありがとう」

「え、いえ……こちらがお世話になってばかりなのでお礼なんて……」


 渡島先輩は高宮先輩の保護者みたいだ。

 渡島先輩が年上だということもあるけど、それ以上に気品というか大人っぽい雰囲気がある。

 だからなのか、とても高校三年生には見えない。

 この人が生徒会長だったら、学校もよりよくなる気がする。

 ただの勘だけど。


「沙織ちゃんから聞いてるわ。最近一緒にいることが多いんだって?」

「まあ……はい」


 確かに最近一緒にいることは多いと思う。

 あの衝撃的な出会いから、なぜか忘れられずにこうして度々牧場に来てしまう。

 でもそれは、高宮先輩と一緒にいたいとかじゃなくて、ただ単に動物が好きっていうだけだ。

 決して変な意味はない。

 あたしは渚一筋だし。


「それはよかったわ。だって沙織ちゃん人見知りであまり友だちいないから。心配だったのよ」

「ちょ、ちょっと嫩先輩!?」


 ……本当に、渡島先輩は高宮先輩の保護者みたいだ。

 いや、恋人だから、相手のことが心配なだけなのだろうけど。

 それにしても、二人とも仲よさそうに見える。

 なんだか羨ましい。


「嫩先輩がいじわるなこと言うのでそろそろ馬に乗りますね」

「あら、残念。もっとおしゃべりしたかったんだけど」


 渡島先輩は心底残念そうな顔をして言った。

 これにはさすがに……というか、高宮先輩は渡島先輩に勝てないのか、とても気まずそうに目を逸らしながら「……じゃあもっと喋りましょう」と呟いた。

 ……あたしはなにを見せられているのだろうか。

 夫婦漫才か。夫婦漫才を見せられてるんだな。

 あたしはそんなことを考えながら、二人が馬を駆っていく姿を眺めていた。


「うーん、楽しかったぁ!」


 乗馬を終えた高宮先輩はとても満足げな表情を浮かべている。

 あれから二人は馬に乗って、いろんなところを回ったらしい。

 あたしも行きたかったけど、まだ一人で馬に乗れないから断念した。


 そして今は休憩中だ。

 少し離れたところにある木陰に座っている。

 本当はここで読書をしようと思っていたのだが、今日はいつも以上に気温が低くて寒すぎるため諦めた。

 年明けに読みたいと思っていた真っ黒の本。

 だけど、中々時間が取れずにじっくりと読むことができない。


「ところで、もうすぐバレンタインよね。花恋ちゃんはあげたい相手とかいるの?」

「いますよ。小学生の頃からずっと付き合ってる子がいるので」

「小学生の頃から!? すごいわねぇ……」

「別にすごくないですよ。その子とは幼馴染みですし」


 あたしは淡々と答える。

 昔から好きな相手は変わってないし、きっとこれから先も変わることはないと思う。

 ずっとずっと、渚のことを好きでい続ける。


「へぇ、そうなのね。どんな子なの? 可愛い?」

「はい、すごく」

「ふふっ、即答なのね。花恋ちゃんってば顔が緩んでるわよ?」

「えっ……」


 慌てて口元に手を当てる。

 あたしの顔は今どうなっているのだろう。

 もしかしたら、気持ち悪いくらいニヤけてしまっているかもしれない。


 恥ずかしくなって俯いていると、突然目の前に影ができた。

 見上げると、そこには高宮先輩がいた。

 あたしのほっぺたを両手で包み込むように触っている。

 その手は冷たくて氷みたいだった。


「ひゃっ!? つめたっ!」

「ごめんなさい。驚かせちゃいました?」

「大丈夫……じゃないです。手が冷たい人は心があったかいって聞いたことありますけど、嘘なんですね」

「え……」


 あたしがわざと意地悪く言うと、高宮先輩は目に見えてしょんぼりうなだれた。


「え、冗談なんですけど……」


 あたしは慌ててフォローを入れる。

 すると高宮先輩はくすっと笑って、あたしの頭を撫でてくれた。

 冷えの取れた高宮先輩の手はあったかくて優しい。

 まるで渚みたいだった。


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