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真っ赤な吸血少女は好きな人を傷つけたくてたまらない  作者: M・A・J・O
第二章 吸血少女は愛されたい

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第41話 惚気けたい

「それでさ、渚ったら大胆にもプロポーズしてくれてさぁ」

「……あの、なんでお姉ちゃんへの想いを忘れようとしてる私にそんな惚気話してるんですか……」


 渚にプロポーズされた翌日、放課後に桜花寮を訪れて渚の妹に惚気話をしていた。

 この寮には渚もいるけど、惚気話は違う子にしないと意味ないもんね。


「あははっ、ごめんごめん。でも、昨日は渚もすごかったんだよ? 無理やりあたしの唇奪ってきて〜」

「そ、そうですか……えっと、その、私はもう帰りますのでどうぞごゆっくり」

「え、どこに帰るの?」


 どうやら、妹はだいぶ動揺しているみたいだ。

 主にあたしの惚気のせいだと思うけど。

 それにしても、どうしてこの子は顔を真っ赤にして帰ろうとしているんだろう。

 いや、帰るといっても、この寮がこの子の家みたいなものなのだけど。

 どこに行こうとしているのか。


「はー……ほんとなんでこの先輩と仲良くなろうなんて思ったんだろう……こんなデリカシーないのに」

「え、今ディスられた?」


 確かに少しだけ悪ノリした自覚はあるけれど、そこまで言われるほどではないと思うんだけどなぁ……

 まあ、過去の因縁もあるし仕方ないことだとは思うけども。

 それでもやっぱり寂しいものはあるよね。

 もう少しくらい優しくしてくれたっていいのに。


「で、もういいですか?」

「え、よくないよ。全然惚気足りない」

「えぇ……」


 なんだかすごく嫌そうな顔された。

 まあ、嫌ならしょうがないから諦めるか。

 別の話を考えよう。

 うーん、渚の妹だからあんまりそういう話をするのは良くないかなとも思うけど、なんかこの子面白い反応するしちょっといじめたくなってきちゃったかも。


「じゃあさ、あたしたちが初めて出会った時のこと聞かせてあげるよ!」

「結構です! というか、そもそも花恋さんとお姉ちゃんの出会いとか聞きたくないし!」

「えー、聞きたくないの?」

「めちゃくちゃうざったいですね」


 すごいストレートに言われた。

 でもまあ、うん、わかる。

 自分にとって都合の悪いことは聞きたくないっていう気持ち。


 でも、それは逃げてるだけだ。

 だってそれは、結局自分が傷つくことから目を背けているだけなんだから。

 そして、きっとこの子もわかっているはずだ。

 自分の姉の過去を、知らないままでいることが正しいことだとは思っていないはず。

 まあ要するに、この子も渚の過去のことを知りたがっているだろうということが言いたいのだ。


「ねぇ、聞いてみない? あたしたちの出会いの話」

「……別に知りたいわけじゃないですけど」

「じゃあ教えてあげない。渚に聞けばあの子も教えてくれると思うけど、あの子の口から惚気話聞きたい?」

「……」


 沈黙。

 多分、葛藤しているんだろう。

 知りたいという好奇心と、知ってしまったら後悔してしまうかもしれないという恐怖心の間で揺れ動いているに違いない。

 まあ、普通そうだよね。


 ……それと、目の前の渚の妹からは「はやくこいつ出ていってくれないかな」という負のオーラも感じられる。

 負のオーラはあたしにとっては大好物なのだが、なぜだか嫌な予感しかしない。

 反撃をくらうのではないかという恐れがあった。


「はぁ……この切り札は使いたくなかったんですが……」


 そう言うと、渚の妹はどこからか納豆のパックを取り出す。

 それは……あたしが……この世で一番苦手な……


「ふふん、どうですか? 私は花恋さんの弱みを知ってるんですよ。しつこいのでいい加減出ていってください」

「ひぇっ」


 まさか納豆で脅されるとは思ってもいなかった。

 こんなにも恐ろしい武器を持っているなんて…… あたしは思わず後退りしてしまった。

 そしてそのまま納豆の匂いから逃げるように、桜花寮をあとにしたのだった。


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