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真っ赤な吸血少女は好きな人を傷つけたくてたまらない  作者: M・A・J・O
第一章 吸血少女は傷つけたい
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第10話 勝ち負けなんてない

 渚の妹は敵意を向けながら威嚇してくる。

 困ったなぁ……まさかこんなにバカな子だなんて思っていなかった。

 妹の敵意に負けじと食いつき、あたしは一歩踏み出す。


「へぇ、バラすってどういうことかわかってる?」

「黒衣先輩のヤバさをみんなが知る。それ以外になにがあります?」


 こいつ、本当にバカだ。

 そんな脅しでビビるあたしではない。

 前にも渚のことが好きな女の子たちに呼び出されたりしたけど、その時についたあたしのあだ名はこうだ。

 ――〝悪魔の花恋〟。


「別にいいけどね。その程度でどうにかなるとほんとに思ってる?」

「ひっ!」


 渚の妹の顔色がみるみる青ざめていく。

 あたしの怒った顔は閻魔様のように怖いらしい。

 威圧感がすごくて、もはや逃げることもできないほど腰が抜けるとか。

 前に呼び出してきた女の子が去り際にそう言っていたのを覚えている。


「まあ、渚の妹だからなにかしたりとかしないし、どうでもいいから見逃すけど。あなたのその行動、ほんとに渚のためだと思ってる?」

「え……な、なにを言って……」

「だってあたしとの関係がみんなにバレたくないって思ってるのは渚だよ? あたしの性癖をバラすなら渚とあたしの関係も言わなきゃならない――つまりそういうことだよ」

「……っ!」


 渚の妹が言葉を失った。

 そして、少しして彼女はゆっくりと俯いたままこの場を去っていった。


 この子はきっと自分の行動を正当化するために、渚のことを言い訳にしたんだろう。

 でもそれはダメなんだよね。

 あの子のやったことはただの自己満足に過ぎない。


 渚と自分が結ばれることはないとわかっているから、邪魔なあたしをできる限り排除したいのだろう。

 あたしたちはラブラブなのに。

 渚が「花恋ちゃんとの関係をやめたい」と妹に話したならともかく、妹の態度的にそういうことは言っていないと思われる。

 それなのにあたしに文句を言いに来たということは、おそらく嫉妬したということに違いない。

 あたしたちの仲の良さを見せつけられて、焦ってしまったのかもしれない。


「……黒衣先輩。今日は私が負けたんじゃありません」

「え?」


 突然くるりと向きを変えて戻ってきた渚の妹が、声を震わせながらつぶやく。


「わ、私はあなたのことが大嫌いです! でもお姉ちゃんがあなたのこと好きなので、さっきはわざと負けてあげただけです! 勘違いしないでくださいね!」


 威勢だけはいいが、涙目になっているのがなんとも可哀想に思える。

 彼女の発言に対して、あたしは笑みを浮かべた。


「そっか、会話に勝ち負けがあるなんて知らなかったよ。じゃあね」


 今度はあたしがその場を去った。

 後ろから「悪魔ぁー!」という叫び声が聞こえてきたが、無視する。

 まったく、あたしに敵わないくせに気が強くて威勢だけはいいんだから。


 まるで大型犬に吠える小型犬みたいだ。

 小型犬がよく吠えるのは、不安や恐怖から来ているものも多いという。

 つまり、渚の妹もあたしに対する恐怖から叫んでいるのだろう。


 昔からのが積もり積もって怖がらせちゃったかな?

 だけど、あたしには渚がいるからね。

 渚の妹には悪いけど、今日もメッセージアプリでイチャイチャさせてもらおう。


 今日は委員会活動があるって渚が言ってたし、リアルで会うことはできないだろう。

 まあ、リアルで会ったら渚の妹とのやり取りを話してしまいそうだし、ちょうどいいか。

 あたしが渚の妹をいじめたと思われたら嫌だもんね。


 渚の妹があたしのことをチクることはないと思う。

 向こうからふっかけてきた喧嘩だし、あたしの報復におびえてなにもできないだろう。

 昔からそういうことはしなかったし、そこに関しては信頼している。

 だから今日もあたしは優等生でいられるのだ。


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