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第53話 つながった未来

こんにちは。

頭の中の物語を文字にしてみます。

ラストにたどり着けるように、不定期ですが更新したいと思っています。


よろしくお願いします。

「あの……落とし物ですよ」


 千紘は海斗に声をかけた。

目には今にも(こぼ)れ落ちそうなほどに涙が溜まっていた。

それでも、きっと海斗は自分の事を知らない。

不審に思われてはいけないと、千紘は平静を装って声を出した。



 でも海斗の反応は千紘の予想に反するものだった。

振り返って千紘を見た海斗の目は、一旦大きく見開かれた後、みるみる内に涙でいっぱいになっていった。

そして次の瞬間、千紘の顔は海斗の温かい胸にうずくまり、身体は長い腕に優しく包み込まれていた。


「海斗さん……海斗さん……」

千紘はもう泣く事を我慢するのを諦め、ぼろぼろと涙をこぼしながら海斗の名前を何度も呼んだ。

「千紘……ずっと、ずっと探してたんだ……」

海斗はかすれた声で途切れ途切れに言葉をつなぐ。


「千紘は過去から戻って来なかった……何度も、もう忘れなきゃいけないって……でも、忘れられなかったんだ」

千紘は海斗の背中にしがみついた。

「私の事は知らないと思ってました……ループの記憶はもう消えているって……」

「確かに、忘れてたんだ。こっちに戻ってしばらくは。でもきっかけがあって……」

海斗ははっと千紘の顔を見て言った。


「正樹は?! 正樹は助かったのか?!」

千紘は海斗の顔を見上げてそっとほほ笑んだ。





 その日の夜、千紘は久しぶりに海斗の顔を正面から見ながら座っていた。

今までの事を話したいと、静かな喫茶店に入った。

店内には柔らかなコーヒーの香りとピアノのクラシック曲が静かに流れている。


 千紘はゆっくりと思い出すように口を開いた。

「あの日、海斗さんとループに入ってはぐれてしまった日。私は2007年のマサくんの最初の後悔にたどり着きました。そしてマサくんから真実を聞いたんです。

マサくんは2013年5月20日に事故に合い死んでしまったと。

そしてその事実はどうしても変えられないと。


マサくんはこの世に別れを告げて空に昇るために、私が過去にたどり着くのを待っていたと言いました。

お互いに、ここで『さよなら』を言おうって。あの時に言えなかった言葉を。

それでこの過去に戻るループは完全に終わる。

ちーちゃんは未来に戻って、今までの自分の人生の続きを始めるんだって言って……」

「そんな事を正樹が……」

海斗は言葉に詰まる。


千紘は顔を上げて海斗を見つめていた。

「私は、未来に戻らない決断をしました。マサくんと人生をやり直す決断を。

そして必ずマサくんを2013年5月20日から守ると決めて。……でも」

「でも……?」

「でも2013年が始まった日、マサくんは高熱で入院し、余命半年と診断されました」

海斗は思わず自分の拳を握りしめていた。


「マサくんの残りの時間を大切に過ごすため、マサくんの家族と私の家族は共に自然の多い別荘地に引っ越しをしたんです。それでもマサくんの容体は日増しに悪くなっていきました。

あの日……」



――2013年5月20日


 熱で意識が朦朧(もうろう)とするマサくんが急に目を覚ました。

千紘に今までのお礼を言うマサくんの言葉が、最後の言葉のように聞こえた。

まだ諦めたくないのに、マサくんを失ってしまうという恐怖が千紘の全身を覆っていた。


 きっとマサくんの身体は限界だったんだと思う。

それでも必死に自分の想いを千紘に伝えてくれた。

そして、マサくんの顔がほころんだその瞬間、ふっとマサくんの手から力が抜ける。

ベッドに落ちるマサくんの手を必死で受け止めた千紘は、あの横断歩道のあるバス通りに立っていた。



「私は必死にマサくんを呼び止めようとしました。でも身体が全く動かなかった。

その時……海斗さんが叫んだんです。私の隣で必死にマサくんを呼び止めてくれた」

海斗は「あ……」とつぶやく。

「同じような夢を見たんだ……その時は、千紘の事も正樹の事も覚えていなくて。でも必死に呼び止めていた夢……」

「海斗さんの声が聞こえた途端、私の身体は動くようになりました。そして夢の中で、初めてマサくんが足を止めたんです……」





 ――ボーンボーン……

マサくんの家の一階の柱に掛かっている時計の音が聞こえた。

千紘ははっと目を見開き、うずめていたベッドから顔を上げる。

いつの間にか眠ってしまっていたのだろうか?

「今の夢は……?」ぼーっとする頭でそう思いながら、千紘は慌ててマサくんを見た。


 そして「マサくん!!」と耳元で呼びかける。

反応がない。

千紘は「マサくん! マサくん!」と何度も身体を揺すった。

千紘の声にマサくんの両親と千紘の両親が慌てて二階に駆け上がって来る。


「マサくん!」

「マサ!!」


 そしてみんなが見つめる中、マサくんの目は薄く開いた。

「……ちーちゃん? お父さん、お母さん……」

マサくんの小さいけどはっきりした声が聞こえた。


「なんだか、身体がとっても軽いんだ……」

千紘はマサくんの額に手を当てる。

「熱が……下がってる!」

その場にいた全員が顔を見合わせ手を取り合った。


 そして千紘は慌てて時計の針に目をやった。時刻は午前0時を過ぎていた。

千紘はぼろぼろと泣きながらマサくんの手を握る。

「マサくん……やっと、やっと……あの日の未来を……変えられたよ」

マサくんは千紘の手をぎゅっと強く握り返した。



「そして、次の日病院に行って、マサくんの病気が消えた事がわかったんです。

お医者様もみんな驚いていて……」

「よかった……」

海斗は噛みしめる様にそう言いながら、「もしかして……」と、はっとして顔を上げる。

「石が……あの石が倒れたからかもしれない!!」

「え……?」

「俺の記憶が戻ったのは、あの石があった場所にたまたま行ったからだったんだ。

その時に、土地開発の途中でどうしても抜けなかったあの石が、ある日急に倒れてたって話を聞いた……」

「え……じゃあ。あの石はもうないんですか?!」

海斗は静かにうなずく。


「そうだったんですね……知らなかった……」

千紘と海斗は今までの長い道のりを振り返る様に、そっとお互いを見つめていた。

お読み頂きありがとうございました!!! →つづく


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