第50話 海斗の記憶
こんにちは。
頭の中の物語を文字にしてみます。
ラストにたどり着けるように、不定期ですが更新したいと思っています。
よろしくお願いします。
~2021年12月13日~
海斗は通勤の電車に揺られながら昨夜の夢を思い出していた。
横断歩道を渡ろうとする高校生を、自分が必死に呼び止める夢。
「まさき」と呼びかけていたが、その子の顔も名前も記憶にない知らない人物だった。
そして隣には一緒に呼びかける女子高生……
「一体、誰だったんだろう……」
海斗は妙にリアルだった夢に違和感を感じながら、オフィスのフロアを歩いていた。
すると「佐々木! ちょっといいか?」と部長の声がする。
「はい」
海斗は小走りで部長のデスクに向かった。
「明日、取引先へ年末の挨拶回りに行く予定なんだが、佐々木も一緒に来てもらおうと思うんだ。スケジュール調整しておいてくれるか?」
「はい。わかりました」
海斗は朝一の仕事に取りかかり、いつの間にか夢の事は頭の片隅から消えていた。
◆
~2021年12月14日~
年末の挨拶回りを済ませ会社に戻る途中「おっそうだ」と部長が何か思いついたような様子で海斗を見る。
「ウグイスシティの事は佐々木も知ってるだろう? ここから近いから少し寄ってみるか」
ウグイスシティは海斗の入社前から始まったプロジェクトで、敷地内に大型のショッピングモール、高層マンション、戸建て住宅を擁する大規模開発案件で、一昨年、開業を迎えていた。
ひとつの街を創り上げようとするこの計画は、会社の一大プロジェクトであり様々な部門が総力を挙げて取り組んできた。
ショッピングモール内には、医療機関や役所の出張所、銀行も併設されており、さらなる土地取得が進めば学校の誘致も検討しているという、まさに街をつくるものだった。
部長と共にウグイスシティに向かうバス通りを歩く。
「……あれ?」
海斗は歩きながら何か大きな違和感を拭えずにいた。
「前に、この道を歩いた気がする……いや、昨日の夢の中……?」
部長はシティ名の入った看板の前で立ち止まった。
「ここの開発の話をはじめて聞いた時は本当に驚いたよ。戸建てを造って売ってた俺たちにとって、まさか街をつくるなんて夢みたいな話だった。本当にやりがいのある仕事だったよ」
部長は海斗を振り返る。
「佐々木。お前はこれからだ。がんばれよ!」
笑顔の部長に海斗は「はい」と力強く答える。
しばらく周りを見渡していると、看板の辺りの花壇が気になった。
そういえばメインの入り口はショッピングモールの方だ。
こちらは一般の住宅への入り口でいわば裏口、こんなに大きな花壇は必要だったのだろうか?と。
海斗の様子に気がついて部長が口を開いた。
「土地を扱ってるとこういう事に出会う時があるんだが……」
部長が花壇の辺りを指さす。
「この辺りは開発のかなり早い段階で取得した土地だったんだが、ここに古い石柱が立ってて……文字も何も書かれてなくて、今までどんな使い道をされてきたかもわからない石柱だったから、住宅を解体するときに一緒に撤去しようとしたんだが、どうやっても抜けなくてね。あまりにも抜けないから、だんだんみんな恐ろしくなってきて『壊したら祟りがあるんじゃないか』とか『土地の神様が祀られてたんじゃないか』とか噂する奴らも出て来て、ほとほと困ってたんだよ」
「それで……どうしたんですか?!」
「誰も手をつけずにしばらく放置していたんだ。そうしたら……ある日倒れてたんだ」
「え……」
「不思議だろう? それから開発は何事もなく進んだ。みんな不思議がってたよ。でもきっと何か意味のある石柱だったんだろうという話になって、ここに花壇を造ったんだ」
「そんな事あるんですね……」
海斗はそう言いながら花壇に近づく。
そして何の気なしに伸ばした手が、ぐっと花壇に引き寄せられるのを感じた。
「……?!」
思わず手を戻そうと思ったが身体が動かない。
力に手を引かれるまま花壇に触れたその瞬間、海斗の身体は電流が走ったような衝撃を感じる。
一瞬目の前が真っ白になり、次第に視界がはっきりとしてきた時、海斗はつぶやいた。
「あ……そうだ……」
海斗の頭の中は、突然靄が晴れたようにすっきりと澄み渡っていた。
「思い出した……
今まで忘れていたものを、全て思い出した……」
そして花壇の周りを見渡した。
「ここは、千紘と正樹の家が建っていた場所だ……!」
お読み頂きありがとうございました!!! →つづく
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