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第47話 突然の提案

こんにちは。

頭の中の物語を文字にしてみます。

ラストにたどり着けるように、不定期ですが更新したいと思っています。


よろしくお願いします。

~2013年1月18日~


 千紘は今日も学校の帰りにそのまま、マサくんの病院に行っていた。

病院に行っても特に話をするわけではない。

千紘はマサくんのベッドの横で参考書を広げ、マサくんは調子がいい日は体を起こし、自分の好きな本を読んでいた。

ここ数日はずっとそんな調子だ。



 マサくんの母親がお花の水を替えながら言った。

「ちーちゃん。毎日で疲れるでしょ。無理しなくていいんだからね。受験生なんだし」

「いいんです! 私はここで勉強できるし。マサくんに教えてもらえるから」

マサくんは静かに二人の会話を聞いていた。

「そう……本当にありがとうね……じゃあ、一旦戻って家の片付けしてくるわね。また後で」

おばさんはそう言うと、にこりと笑って病室を後にした。


「おばさん、大丈夫?」千紘は気になってマサくんに聞いた。

「大丈夫……ではないよね。いつも泣き顔でここに来るから。でも、最初の頃よりは落ち着いてきてると思うよ」

「そっか……」

マサくんが千紘を見つめて言う。

「もう少ししたら退院すると思うんだ。担当の先生には治療もないし、家に帰りたいって伝えてるから。だからちーちゃんも、一旦僕の所へ来るのは終わりにしよう」

「え……? なんで?!」

千紘はマサくんの前に身を乗り出す。


「だって、ちーちゃんには、この先も長い人生が待ってるんだよ。だからこそ、ちゃんと進んで行かなきゃ。もうすぐ高校入試の出願も始まるでしょ? 今は受験の事だけに集中して欲しいんだよ」

「そんな……嫌だよ。ここでだって勉強できるもん……」

うつむく千紘の頭に手をやって、マサくんが優しく言った。

「5月まではまだ時間があるよ。大丈夫。それまでは、僕も必ず生きているから」

「そんな事言わないで……」

睨みつける千紘の顔を見て、マサくんは微笑む。

「次に会う時は、合格の報告にしてよね!」





 千紘はその日から追い込みで、寝る時間も惜しんで必死に勉強した。

――マサくんと同じ学校に合格する。そして一緒に通うんだ……5月が過ぎてもずっと一緒に。


 マサくんはそれから一週間ほどして退院した。

千紘の両親は時々マサくんの家に行っているようだった。

千紘はその事を知っていたが、合格するまでは……と気にしないようにしていた。


 そして千紘は無事に第一志望の高校へ合格した。





~2013年2月22日~


 千紘は明日、マサくんの家に合格の報告に行く予定にしていた。

夜、自分の部屋にいると、コンコンと扉をノックする音が聞こえた。

珍しく顔をのぞかせたのは父だった。


「どうしたの?!」

千紘は驚きながら聞く。

「千紘。少し大事な話があるんだ。下に来られるかな?」

「うん……」

千紘は戸惑いつつ、父の後について下に降りていく。


 リビングに入り目に飛び込んできたのはマサくんの父親の顔だった。

「おじさん?!」

千紘はさらに戸惑いながらソファに腰かける。


「ちーちゃんごめんね。夜遅くに。急におじさんが来てびっくりしたよね」

「まさか……マサくんに何かあったんですか?!」

不安になる千紘に、おじさんは大丈夫だよ、と手を振りながらゆっくりと話し出した。



「実はね。マサを連れて、家族で自然の多い所に引っ越そうと思ってるんだ。別荘地って言ったらわかるかな? 少しでもマサと一緒の時間を大切に過ごしたいと思ってね」

千紘は「え……」と言葉が漏れた。


「ただ、おじさんもおばさんも気にしているのは、ちーちゃんの事なんだよ。マサとちーちゃんの間には、私達にはわからない強い絆がある。だからどうしたものかと、ちーちゃんのご両親に相談したんだ」

千紘は両親を振り返った。

父が言葉をつなぐ。


「千紘。実はね、今住んでいるこの地域一帯で大規模開発の話が出てるそうなんだ。ショッピングモールと高層マンション、その周りに戸建てが並ぶシティを作ろうって話みたいでね。うちの南側に工場跡地があるよね。あの辺りから、ここら辺も含まれている。うちにも何度が不動産屋が来ていて、話だけは聞いていたんだ。それでね。お母さんと話し合って……この家を売ろうと思ってる」

唐突な二つの話に千紘は頭が混乱していた。


 母が千紘の手をそっと握って言った。

「今、千紘とマサくんは離れない方が良いって私たちは思っているの。だから、この家を売って、マサくんのご家族と一緒に引っ越そうと思うんだけど、どうかしら。住み慣れた街を離れて、お友達とも離れてしまうけど、高校へ入学するタイミングだしちょうどいいとも思うの。ただ、通学はこの家から行くよりもだいぶ時間がかかるわ。それだけが気がかりで……」


 千紘は首を強く振り、立ち上がって言った。

「大丈夫! そんなの何の苦労でもない! 私はマサくんの側に一緒にいたい。お願いします。一緒に行かせてください!!」


 千紘の言葉に、おじさんも、千紘の両親も涙ぐんで頷いた。



 ――少しでもいい。何か、マサくんの『あの日』を変えるきっかけになって欲しい。

私は、諦めない。最後の最後のその瞬間まで……



 2013年3月下旬。

千紘の中学校卒業と同時に、二家族は自然が豊かな土地のログハウスに引っ越しをした。

お読み頂きありがとうございました!!!→つづく


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