第46話 突きつけられる現実
こんにちは。
頭の中の物語を文字にしてみます。
ラストにたどり着けるように、不定期ですが更新したいと思っています。
よろしくお願いします。
~2013年1月1日~
2013年が始まった。
千紘は自分の部屋で問題集を解きながら、ふと手帳を開き明日の待ち合わせ時間を確認する。
今年はマサくんの地元の神社に初詣へ行く約束をしている。
有名な学問の神様を祀った神社があるようで、一年前はマサくんの合格祈願に二人で行った場所だった。
コンコン……
ノックの音がして、母が扉から顔を出す。
「千紘。マサくんのお母さんから電話よ」
「え?! おばさんから?」
千紘は一瞬で血の気が引くのを感じていた。
「マサくん! 何かあったの……?!」
そう言いながら立ち上がる千紘の切羽詰まった顔つきに、母は驚いた様子だったが
「マサくん風邪ひいちゃったんだって」と言った。
「あっ……そうなんだぁ……」
母のその言葉に、千紘はほっと息をつき、少し安堵しながら電話を受け取る。
電話口のおばさんは、いつもの落ち着いた声で言った。
「ちーちゃん。ごめんね。マサが急に熱出しちゃって。お正月で近くの病院がお休みだったから救急外来に行ってきたの。それで、お医者様がちょっと心配だから入院して検査してみましょうって言っててね」
「マサくん。大丈夫なんですか……」
「大丈夫よ。今は熱でつらそうだけど、それ以外は症状もないし。ちーちゃんに電話して欲しいって言ってたから、とりあえず今日は私がかけたけど。また様子がわかったら、ちゃんと本人から連絡するように言っておくわね」
「はい……マサくんにお大事にって伝えてください……」
千紘は電話を切りながら、何とも言えない不安に襲われていた。
◆
~2013年1月7日~
この一週間、千紘は毎日マサくんからの電話を待っていた。
一向に鳴らない電話を睨みつけ、一週間が一カ月ほどの長さに感じていた。
そして夕方、待ち望んだマサくんからの電話がかかって来た。
「もしもし! マサくん?!」
千紘が勢いよく電話に出ると、マサくんは「え?!」と驚いてから、ふふっと笑った。
その笑い声に千紘はほっとしながら「もー! 何で笑うのー」と言う。
「だって、ちーちゃん。いきなり『もしもし、マサくん』って言うんだもん。誰からかかって来たか、先に確認しなよ」
「あ! そうか。必死すぎて、忘れてた……」
千紘は電話口に向かって少し照れ笑いをする。
「まだ、病院?」
「うん……」
「どうしたの……なんか、不安になる……」
「そうだね。あっ初詣行けなくて、ごめんね。合格祈願だったのに……」
「そんな事いいの! どうしたの? 何かあったの?!」
「うん……」
マサくんはしばらく黙ったまま口を閉ざしてしまった。
千紘は「悪い知らせだ……」そう直観的に感じていた。
息を吸う音が微かに聞こえた、千紘がそう思うのと同時にマサくんが言った。
「余命宣告された……」
唐突に放たれたその言葉は、千紘の頭を殴りつけるような衝撃を残し、目の前を真っ暗にした。
◆
~2013年1月8日~
千紘は病院へ向かうバスに揺られながら、昨日のマサくんとの電話での会話を思い出していた。
「余命宣告された」と言ったマサくんの声はとても落ち着いていて、言葉を失った千紘に優しく語りかけた。
「今回の熱は病気の影響みたい。何の病気なのかとか、治療法はないのかとか、僕は聞いていないんだ……だって、その必要はないって思ったから。余命半年って医者に言われたけど、僕たちはもうその日を知ってる。こんな形で来るとは思わなかったけど、ついにこの日が来たって。それだけの事なんだよ」
「そんなっっ……」
千紘は涙が溢れて声にならない声で叫んだ。
しばらく千紘の泣き声だけが電話口に響いていた。
マサくんは静かにその声を聞いている。
「会いに行っていい……?」
千紘はやっとのことで言葉を絞り出し、マサくんは「うん。待ってる」と優しく言った。
病室の扉をノックし中に入ると、マサくんは窓際のベッドで体を起こし、窓から外を見ていた。
「マサくん……」
千紘が呼びかけると、マサくんは笑顔で振り返る。
マサくんの顔色は、本当に病気なのだろうか……と思ってしまうほど、悪くはなかった。
「顔色は良さそうだね」
千紘はベッドの横に腰かけながらマサくんの顔を覗き込んだ。
「熱は落ち着いたからね。今日はだいぶ調子がいいよ」
千紘はマサくんの落ち着いた声に安心する。
「おばさんは? おじさんとおばさんは大丈夫……?」
「うーん……」マサくんは困ったような笑顔になって言った。
「僕の前では平静を装ってるけどね。突然だもんね。悲しませちゃったよ……医者に突っかかってる声が遠くで聞こえた……」
「そっか……」
「でも今日はちーちゃんが来るって伝えたら、着替えとか取りに一旦帰るねって笑顔で言ってたから」
「うん」
マサくんはまた窓の外に目を向けた。
千紘はそっとマサくんの手を握る。
「やっぱり……」
マサくんが顔を窓の方に向けたまま言った。
「うん……?」
「やっぱり、変えられないんだよ。僕のあの日は変えられないんだ……ちーちゃん、ごめんね……」
千紘は握ったマサくんの手を強く揺すりながら言った。
「それでも! それでも私は、最後まで諦めない!! そのために過去からやり直してきたの!」
マサくんがゆっくりと千紘を振り返る。
その時、千紘は思い出していた。
三回目のループの後、染田が、マサくんが、千紘に言った言葉を。
『あなたに……見つけて欲しいんです……僕の最初の後悔を
そうしたら、きっと……』
――今度は私がマサくんに伝える番だ。
「一緒にいよう。あの日の最後の最後の、その瞬間まで……
そうしたら、きっと……
何かが変わるはずだから」
お読み頂きありがとうございました!!!→つづく
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