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第45話 あれからの三人

こんにちは。

頭の中の物語を文字にしてみます。

ラストにたどり着けるように、不定期ですが更新したいと思っています。


よろしくお願いします。

~2012年12月31日~


「千紘。マサくんから電話よ」

階段の下から母の声が聞こえる。

千紘は「はーい。部屋で出るー」と声をかけ、電話の子機を受け取りに下に降りた。

母から電話機を受け取ると、千紘は駆け足で階段を上って行った。



 そんな千紘の姿を見送りながら、父が言う。

「本当に千紘はマサくんと仲が良いなぁ」

「そうねぇ。マサくんが引っ越ししてからの方が絆が深まった気がするのよね」

「俺が週末に一緒に出かけようって言っても『マサくんと会うから』って断られるもんな……」

シュンとしながら話す父に、母は笑いながら冗談交じりに言った。


「私はね、千紘はマサくんと結婚すればいいと思うんだけどね」

「え?! おいおい! 千紘にそんな話はまだ早いよ……」

「もう、お父さんったら動揺しちゃって!」

リビングでは両親の笑い声が響いていた。



 あの日以降、千紘とマサくんはお互いの存在を(いつく)しむように過ごしてきた。

周りからは、それは兄妹のようでもあり、将来を誓い合った恋人同士のようにも見えていただろう。

それでも、二人自身はお互いの存在について、言葉で何かを確認することはなかった。

ただ静かに、いつか来るその日までの時間を大切に過ごしていただけだった。



「もしもし、マサくん?」

千紘はベッドに座りながら声を出す。

「ごめん。勉強してた?」

「ううん。ちょうど休憩してたとこ。あっ! 後ろから紅白の音が聞こえる」

千紘はそう言いながら笑った。


「マサくんは、何してたの?」

「一旦自分の部屋に戻ったとこ。でも夕飯食べたのに、またこれから年越しそば食べるって、お母さんが張り切ってる……」

あははと千紘とマサくんは笑い合った。



 千紘は今、中学三年生。年が明ければ高校受験が控えている。

志望校は以前とは違う私立高校で、マサくんの通う高校だった。

マサくんは「大学で理学部に行きたい」と言い、希望の学部のある大学の付属高校を選んでいた。



「ちーちゃん、二日はこっちに来るんでしょ?」

「うん。ちゃんと初詣して合格祈願しなきゃ! マサくんも一緒にお願いしてね」

「もちろん! ……」

マサくんが急に口ごもる。

「どうしたの?」

「うん……いや、ついに来たなと思って……2013年が……」

千紘はその言葉に、心が締め付けられるような息苦しさを感じていた。


 今までずっと心の中にしまい込み、考えないようにしてきた年。

2013年が訪れなければ良いと、ずっと願っていた。

でも、もうすぐ年は明け2013年がやって来る。


「でも……何も起こらないかも知れないじゃない!」

千紘は自分に言い聞かせるように強く言った。

「そうだね……」

マサくんは小さくつぶやいてから

「勉強の邪魔してごめん。二日は駅に迎えに行くね。おやすみ」と電話を切った。

「おやすみ……」

千紘は電話機のボタンを押しながら、不安に押しつぶされそうになってベッドに顔をうずめた。



「怖い……」

不安になる時、千紘の目に浮かぶのはいつも海斗の笑顔だった。

「海斗さんだったら、こんな時、何て言うかな……」


 過去で生活するようになってから、千紘もマサくんも言葉にはしないけれど、なんとなくあの公園の前を通ることがあった。

その度に千紘はマサくんに気がつかれないように、そっと海斗の姿を探していた。

でも、今まで一度も海斗に出会えたことはなかった。



「どんな人生を歩いているんだろう……」

千紘はぽつりとつぶやいた。





~2021年8月27日~


「あれ? まだ残ってたの? 飲み会始まってるよ」

同僚に声をかけられ、海斗は亜理紗と同僚と共に会社を後にした。



 店の中からはすでに楽しそうな声が聞こえている。

海斗がぼうっとする頭のまま席に着くと、すぐ隣に亜理紗が座った。


 目の前の同僚がにやにやしながら言った。

「二人はまだ付き合ってないの? いっつも一緒にいるじゃない」

「えっ?」と海斗は声を出し、隣の亜理紗の顔を見る。

亜理紗は「もう~」と言って頬を赤らめて笑っていた。



 その瞬間、海斗は違和感を感じていた。

この状況は一度経験したことがある……どこかで同じことを言われた……でも、どこで?


「ごめん。やっぱり今日調子悪いから、帰るね」

海斗は同僚に声をかけ店を後にした。

「海斗!!」という亜理紗の声が聞こえた気がしたが、振り向けなかった。



 夏の生ぬるい夜風の中、ぼうっとする頭を抱えながら海斗は歩いていた。

「まるで頭に(もや)がかかっているみたいだ。俺は、大切な何かを忘れている気がする……何を、忘れているんだ……」そうつぶやいた。

お読み頂きありがとうございました!!!→つづく


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