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第43話 マサくんの決心

こんにちは。

頭の中の物語を文字にしてみます。

ラストにたどり着けるように、不定期ですが更新したいと思っています。


よろしくお願いします。

 千紘は両手で顔を覆い、必死に言った。

「でも……でも……マサくんはあの石の前に立っていたじゃない。第一、マサくんの身体はどこに行ったの?! 消えたって、みんな言ってるんだよ」


「そうだね」マサくんは優しく言った。

「僕も(いま)だにわからないんだ。なんで僕が100日間の間、家族とも友達とも生きているように接して過ごせていたのか。そして僕の肉体はどこに行ったのか……」


 マサくんは寂しそうに言った。

「でも、僕は2013年5月20日に死んだ。これだけは事実なんだ」





 辺りはいつの間にか夕方の景色に包まれていた。

昼間の暑さはいくらか(やわ)らぎ、秋を感じさせる風が千紘とマサくんの間を吹きぬけた。


 マサくんは新しい家へと続く道をゆっくりと歩きながら話を続ける。


「それとね。不思議な事に僕の魂は空には昇らなかった。

昇れなかったという表現の方が正しいのかな。

100日間が経った後、僕はあの石の前に立ち尽くす存在になっていた。


 ずっと石の前に立っていたよ。

ちーちゃんは毎日僕の後ろを通り過ぎた。

もうずっとこのままなんだろうと思っていた。


 でもあの日。僕があの石の前に立ち尽くしてから8年目の2021年8月27日。

ちーちゃんが僕の存在に気がついたんだ」


「あの日……」千紘は声を出す。


「そう、あの日。ちーちゃんが僕の姿を見た。

そうしたら急に金縛りが解ける様に僕の身体が動きだしたんだ。

そして、その日から僕はまた過去に戻れるようになった。


 僕は舞い上がるような気持ちだった。

過去に戻れる。ちーちゃんもループに入った。

これで僕の死の事実も変えられるんじゃないかと思った。


 でも……

ちーちゃんにも言ったよね。

やっぱり最終的な結果は変えられなかったって」


 千紘は思い出していた。

あの日の染田の、マサくんの透き通るように白く、今にも消えてしまいそうに(はかな)い表情を。



 マサくんは静かに、それでもはっきりとした声で言った。


「僕の死の事実はもう決して変える事は出来ない。

だったら、あとは選ぶだけ。

石の前に居続ける存在になるのか、この世に別れを告げて空に昇るのか……」



 マサくんは千紘をまっすぐに見つめていた。


「僕はこの世に別れを告げる事を決めた。

その時わかったんだ。

僕の魂が空に昇るためには、僕を縛り付けている『人生で最初の後悔』を解消する事が必要だって。


 だから……

ちーちゃんがここにたどり着いてくれるのを待ってた」



「待って!」千紘は叫んだ。

「じゃあ、マサくんは……マサくんの魂を天国に連れて行くために、ここで私を待ってたってこと?!」


 マサくんは穏やかな顔をしている。


「そうだね。それが僕が空に昇るためには必要な事だったから……

だから、ちーちゃんを海斗に託したんだよ。2012年の5月に戻った時、僕は海斗に紙を渡した。ちーちゃんの名前と住所を書いた紙を。

この子を見守ってあげて欲しいって言って……」



「そんな!!」千紘はマサくんの腕を掴んだ。

「マサくんは勝手だよ! そんな簡単に空に昇るなんて言わないでよ!

あきらめないでよ! 受け入れないでよ!

私は……私は……まだ、絶対にあきらめたくない……!!」


 うつむいてそう叫ぶ千紘の手を、マサくんはゆっくりと握った。

千紘はマサくんの顔を見上げてはっとする。


「もう……もう、十分あがいたんだよ……

それでもダメだった……どうしようもないんだよ……

受け入れるしか……ないんだ……」


 マサくんは静かに泣いていた。

千紘はマサくんの手を強く握り返し、空に向かってわぁ……と声をだして泣き続けた。


 二人のその声は静かな住宅街に溶け込むように消えていった。





 目を真っ赤にして戻って来た二人の顔を見て、マサくんの両親は「喧嘩でもしたの?」と笑っていた。

えへへと笑いながら、千紘はそっとマサくんの横顔を見る。

マサくんは笑顔の両親の顔を愛おしそうに見上げていた。



 その日の夜はマサくんの家族と近くのレストランに行った。

きっと普段だったら気にもとめない他愛もない会話だったのだろう。

それでも、千紘とマサくんにとってはとても大切な時間だった。





 千紘は真新しい布団に横になり、新築の家の木の匂いに包まれながら天井を見つめていた。


 コンコン……

静かに扉をノックする音が聞こえ、千紘は慌てて飛び起きる。


 扉を開けるとマサくんが立っていた。

「月が綺麗に見えるよ。おいで」


 マサくんに連れられて2階のベランダに出る。

夜空には金色の月と星がチカチカとまたたいていた。


「三日月? 綺麗」と千紘は声を出す。

「そうだね。今年の十五夜は25日なんだって。これから日ごとに月が丸くなっていく……」


 マサくんは一旦言葉を止めて、少し迷っているような様子を見せていた。

「どうしたの……」千紘は不安になって聞いた。


 マサくんは意を決したような表情で「ちーちゃん」と呼びかけた。

千紘は不安でたまらなくなり、両手を握りしめた。

お読み頂きありがとうございました!!!→つづく


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