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第42話 幼い三人

こんにちは。

頭の中の物語を文字にしてみます。

ラストにたどり着けるように、不定期ですが更新したいと思っています。


よろしくお願いします。

~2007年6月16日~


 千紘はマサくんの父親が運転する車に乗り、マサくんの新しい家に向かっていた。

マサくんの母親が助手席から振り返り、笑顔で千紘に言った。

「家は少し遠くなるけど、これからも遊びに来てね」


 千紘は「はい」と答えながら、おばさんの顔をそっと見る。

おばさんは、未来で見たやつれた印象とは対照的に、明るく生き生きとして見えた。

「もう二度とおばさんにあんな顔をさせたくない……」

千紘はそう思いながら隣のマサくんを見る。

マサくんは何かを考えるようにじっと窓の外を見て動かなかった。



 しばらくして車は新居の前に到着した。

千紘は車を降りて門から綺麗な家を見上げる。

白い壁、きらきらと光を反射する窓ガラス。

新築の家は希望に満ち溢れた印象をしていた。


「お父さんたちはここで業者の人と話があるから、二人は近所を見てまわって来てもいいぞ」

おじさんの言葉にマサくんは頷き「公園に行ってくる」と言い、歩き出した。

千紘は慌てて「行ってきます」と言い、マサくんの後を追って走った。



 5分くらい歩いただろうか。

二人は小さな公園についた。

広場の横にブランコと滑り台、砂場、あとはベンチがあるだけの小さな公園だった。


「ここがその公園?」千紘が聞く。

「うん」マサくんが小さく答える。


 公園にはボール遊びをしている小学生くらいのグループと、砂場で遊んでいる小さな子やその親の楽しそうな声がいくつも重なって響いていた。

千紘は急いで周りに目をやる。

それでも海斗らしき姿は見当たらなかった。





 千紘はマサくんと一緒に静かにベンチに座っていた。

ふと見るとボール遊びをしている輪の中に、新しく数人の男の子たちが加わっていた。

何気なくその中の背の高い男の子を見て、千紘ははっとする。

慌ててマサくんを見ると、マサくんも何か気がついた様子で目を開いて見ていた。


 ちょうどその時、ボールが千紘たちの前にころころと転がって来た。

背の高い男の子が颯爽とこちらに走って来る。

マサくんが足元のボールを拾いあげた。


 マサくんと千紘は静かに走って来る男の子を見つめていた。

男の子は「ごめん。ありがとう!」と片手を上げて笑っていた。


 マサくんはぽんとボールを投げ返してから、「ちーちゃん、行こう……」と千紘に声をかけた。

千紘は溢れる涙を必死に堪こらえながら、下を向きマサくんの後を追って走りだした。



「海斗~」と輪の中から呼びかける声が聞こえる。

海斗と呼ばれた男の子は、公園を出て行く二人を不思議そうな顔で見送った。





 必死に涙を堪える千紘を見てマサくんが優しく言った。

「大丈夫だよ。ちーちゃん。未来に戻れば、また海斗に会える」

千紘は顔を上げてマサくんを見た。

「私は……」

千紘が言いかけた時、マサくんが話し出した。



「僕はね。2013年の5月20日に死んだんだ。残念だけど、この事実はどうしても変えられないみたい……」

マサくんは寂しそうに微笑んだ。

「そんな! こうやって過去に戻れるようになったんだよ。きっと変えられる方法があるはずだよ!」

千紘はマサくんの腕を何度も引っ張った。


 マサくんは小さく「そうだね……」と言い、空を見上げながら続けた。

「僕はずっと後悔していたんだ。この引っ越しが決まってからの日々の事を。だから『過去に戻る』という事にこだわって、その事を考えることで結局は後悔した事から逃げていたのかも知れない……」

千紘はマサくんの言葉を一つも聞き漏らしてはいけないと思いながら、じっと耳を傾けた。





「あの日、5月20日。僕は石を見に行こうとしていたんだ。でもたどり着く前に事故に合ってしまったらしい。そこは記憶が曖昧なんだ。気がついた時にはあの石の前にいたから。


 本当はね、人は死んだら100日間かけて現世で自分が関わった人や関わった場所を巡り、この世にお別れをするんだって。誰に言われたわけでもないけど、僕も無意識にそうしようとしていた。もしかしたらそうしていたら、僕の魂は空に昇り、抜け殻になった肉体はこの世に残ったのかも知れない。


 でも、僕はそうしなかった。後悔を捨てられなかった。

だから今までと同じように生活して、過去に戻る方法を探した。


 そしてある日、あの石に急に触れてみたくなった。

そしてついに見つけたんだ。過去に戻る方法を……」


 その瞬間、マサくんは頬を紅潮させていた。

そしてすぐにふっとため息をつく。


「それからは、何度も過去に戻ってみた。石を見に行かないようにしたりもした。

でも、僕の持っている100日間のカウントダウンが止まる事はなかった。


 そしてある日気がついたんだ。結局は同じだって。

100日間かけて別れの旅に出ようが、過去に戻ろうが、結果は同じ。

100日経てば僕の魂は空へと昇って行くんだと……


 だから最後に、ちーちゃんと海斗をつなごうとした。

たとえ僕の存在がなくなったとしても、ちーちゃんを見守ってくれる人がいてくれるようにと願って。


 でも、それすらも叶わなかった。

二人に会えないまま、2013年の8月27日、僕が死んでから100日間が経ち、みんなの前から僕の存在は消えてしまった」


 千紘は両手で顔を覆った。

そして必死に伝えた。

お読み頂きありがとうございました!!!→つづく


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