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第41話 二人の帰り道

こんにちは。

頭の中の物語を文字にしてみます。

ラストにたどり着けるように、不定期ですが更新したいと思っています。


よろしくお願いします。


※ずいぶんと更新の間が空いてしまいました…。本年もよろしくお願いいたします!

~2007年6月15日~


 千紘はマサくんと共に家に帰る道を歩いていた。

二人ともただ前を向き、何も言葉にはしなかった。


 きっと周りからは小学生が仲良く下校しているように見えるんだろうな、と千紘は思っていた。

まさか自分たちが大人と高校生の記憶を持ったまま過去に戻って来た存在だなんて想像もしないだろう。

ましてや千紘がこれから立ち向かわなければいけないものが「マサくんの死」だなんて……


 千紘はそっとマサくんの横顔を見た。

風に揺れる黒髪と黒目がちな瞳。

「高校生のマサくんの面影があるな……」

そう思いながらも、千紘はふっと頭にはてなマークがよぎり、つい笑ってしまう。


「どうしたの?」マサくんが不思議そうに千紘の顔を見た。

「ううん。なんかね。小学生のマサくんの顔に、高校生の時のマサくんの面影があるなって思ったんだけど。未来の姿が面影に見えるって、なんか変だなと思って。そしたら頭が混乱して笑っちゃった」


 あははと笑う千紘の姿を見ながら、マサくんが下を向いてぽつりと言う。

「ちーちゃんは、やっぱり変わったね……」

「え……? そうかな……」

千紘はしばらく考えていた。


 そして「そうだとしたら、それは……」と千紘が言いかけた時、あの近所の床屋のおじさんが、今日もドアの奥から声をかけてきた。

「千紘ちゃん、正樹くん。いつも仲が良いね。気をつけて帰るんだよ。」

千紘がふとマサくんを振り返ると、マサくんは微笑んでいた。

千紘も反射的に笑顔になり「さようなら!」とおじさんに挨拶し、ぺこりと頭を下げた。





 二人は一旦家に帰り、あの石の前で待ち合わせをした。

千紘の母は「マサくんと遊んでくるね」と声をかけると、「はいはい」と笑顔で送り出した。


 そっと門を出て隣を見る。

マサくんはもう石の前に立っていて、千紘が近づくと石を見つめたまま話し出した。

「ちーちゃんは、この石の事、覚えてた?」

千紘は少し戸惑ってから答える。

「正直……毎日、前を通り過ぎてたけど、忘れてたんだ……」

「そうだよね……」

そう言いながら、マサくんは石の前にしゃがみ込んだ。

「でもね。僕はずっと忘れられなかった……だからかな。この石が全てのきっかけになったのは」



 しばらくしてからマサくんは「そういえば……」と、千紘を見上げて言った。

「さっき言いかけた事って何?」

「え……? さっき?」千紘は首をかしげる。

「僕が『ちーちゃんは変わったね』って言った時に言いかけてたこと……」


「あぁ……」

千紘は一瞬逡巡(しゅんじゅん)し、マサくんの顔をそっと見た。

そして「言っていいものだろうか」と躊躇(ためらい)つつもゆっくりと話した。

「あのね……私が『変わりたい』『もっと強くなりたい』って思うきっかけをくれた人がいたから……」


 千紘の言葉を聞きながら、マサくんは遠くを見つめるような目をしていた。

そして「それって……海斗……?」と、ぽつりと言った。

「え……」

千紘はぱっとマサくんを見つめる。



「あのね」マサくんは静かにそう言いながら続ける。

「この前、家族で新しい家を見に行った時、海斗と出会った公園に行ってみたんだ。でも、海斗には会えなかった……会えないのは、当然なのかもしれないけど。海斗が陸上を始めたのは中学生になってからだし」

千紘はマサくんの言葉に「そうなんだ……」とつぶやいていた。


「でも、海斗が過去に戻ってるんだったら、きっとあの公園に来ると思うんだ……海斗はちーちゃんと一緒に過去に来たの……?」

千紘は下を向いて頷く。

「でもね。過去に戻る途中ではぐれちゃったの……どうなったのか、わからなくて……海斗さんは、必ず三人で会おうって、どうしたらマサくんを救えるか一緒に考えるんだって言ってたの。だから待ってるけど、まだここには来ていない……」

「そっか……」


 千紘はじわじわと自分の瞳が潤んでくるのを感じながら続けた。

「海斗さんがね、今回のループの前に言ってたの。もしかしたら自分はもう戻れないかもしれないって。このループの条件は『過去の後悔』だけど、自分は中学三年生より前には『後悔』って言葉すら考えた事がなかったって……」



 マサくんはしばらく考え込んでいる様子で口をつぐんでいた。

そしてゆっくりと立ち上がり、千紘の目を見て言った。

「ちーちゃん。一度、確かめに行こうよ。海斗がこっちにいるのかどうか。僕の話をするのは、それからでも遅くはないし……」


 そしてマサくんは、ゆっくりと流れる雲を見上げて小さな声でつぶやいた。

「それに……最後の時間をもう少しだけ一緒に過ごしたいんだ……」


「え……?」

千紘はマサくんの言葉が聞き取れずに聞き返した。

マサくんは振り返り、笑顔になって首を振る。

「明日また家族で新しい家に行くんだ。ちーちゃんも一緒に行こう。そう親にも伝えておくから」

千紘は戸惑いつつも「うん……」と返事をした。





 その日の夜、マサくんの母親から自宅に電話が入り、千紘は明日マサくんの新居に一緒について行くことになった。

千紘は複雑な気持ちを抱えたまま、ベッドに横になる。


 ここがマサくんの最初の後悔である事は確かだ。

でも、ここでどんな選択をしたらマサくんを救い出す事になるんだろうか。

それに、マサくんが言っていた「人生で一番最初の後悔のことを千紘に伝える」という話もまだ聞けていない。

そもそも、海斗がこの過去に戻っていなかった場合、自分はどうするんだろうか。



 心の中がもやもやとして、頭の中では色んな事がぐるぐると回る。

千紘は寝付けないまま何度も寝返りをうって、だんだんと夜は更けていった。

お読み頂きありがとうございました!!!→つづく


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