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第39話 8回目のループ

こんにちは。

頭の中の物語を文字にしてみます。

ラストにたどり着けるように、不定期ですが更新したいと思っています。


よろしくお願いします。

~2021年8月27日~


 今日もあの子が帰って来た。

もう何度も見た光景だ。

あの子はいつの間にか立派な大人になっていた。

それでもやっぱりどこか自分に自信がなく、泣き虫だったあの頃と同じだった。


 さっと正樹の後ろを通り過ぎ、門に手を伸ばし家の中に消えていく……

今日もその様子を見送るのか……

「本当は、こんな形ではなく見守ってあげたかったのに……」



 100日間の期限が終わった(のち)、正樹はずっとこの石の前に立っている。

正樹の魂は、空に導かれることも、地に落ちることもなく、ただこの石の前に立ち尽くす存在となっていた。



 誰にも振り向かれず、声をかけられることもない。

みんな通り過ぎて行き、自分だけが取り残され、ずっと立っている。


 あの日、僕は何をしていたんだっけ。

どこに行こうとしていたんだっけ。

なぜ、ここに立っているんだっけ。



 そんな事を考えるでもなく感じるでもなくしていた時、正樹ははっとする。

今日だけは違う光景を目にしたのだった。



 その子は門に伸ばした手を止め、そっとこちらを見ていた。


 正樹は初めての出来事に一瞬動揺し、そして後から高揚感が湧いてきていた。

そして表情を緩めつい言葉がでる。


「あなたも、ループに入ったんですね」と。





~2021年8月29日~


 千紘と海斗は朝早く、石の前に立っていた。

千紘は少し緊張した様子の海斗の横顔を見つめる。

「ん……?」と海斗が横を向き、千紘は慌てて取り繕い、その後二人で笑いあった。

「よし。行こうか!」と海斗が言う。

千紘も「はい!」といつもよりもはっきりした声で答える。


「次に戻るのが正樹の最初の後悔の日だったとしたら、きっと向こうで待ってるのは高校生の正樹だ。そうしたら、必ず三人で会おう。そして、どうしたら正樹を救えるか一緒に考えるんだ」

海斗は千紘の手を握って言った。

千紘は握られた手にぎゅっと力を込めてから頷いた。

「はい」


 二人は石に向き直った。

大きく息を吸い、そして深く息をはく。

「よし!」


 伸ばした手は、今までにないくらいの強さで石に引きつけられていた。





 千紘はぼうっとした頭で思い出していた。


 海斗と一緒に石に触れようとした時、今までで一番強く手が石に引き寄せられたのを感じていた。

そしてのみ込まれた突風は、大きな渦を描くようにぐるぐると周り、千紘の身体を連れ去った。

千紘は必死で海斗に手を伸ばし、海斗は千紘を手繰(たぐ)り寄せようとしていた気がする……


 でも……その記憶すらも曖昧になっていた。

ただ耳元で「千紘……」と自分の名前を呼ぶ声が聞こえたのは確かだった。





~2007年6月12日~


 千紘は、はっと目を開ける。

そして咄嗟(とっさ)に感じたのは、「身体が軽い……」という事だった。


 どうも千紘は歩道に立っているようだった。

未来ではもうなくなっている近所の床屋のサインポールがくるくると回っていた。

その赤と白と青のくるくると回る動きを見ながらガラスに映った自分の姿を見て「あ!」と声を出す。


 赤いランドセルを背負った女の子。

「小学生に戻った……」千紘はつぶやいていた。



「千紘ちゃん今帰り? 気をつけて帰るんだよ。」

床屋のおじさんがドアの奥から声をかけてきた。

「さようなら……」

千紘はおじさんにぺこりと頭を下げ挨拶をすると、速足で歩きだした。



「今日はいつなんだろう。小学校何年生に戻ったんだろう……」

自分の背格好や服装からは、今が何年生なのかわからなかった。

「子供の頃ってそんな事、気にしてなかったもんな……」


 そんな事を思いつつ、ふと海斗の事が気になった。

あの突風の中、はぐれてしまったのは確かだ。

それでも以前は、突風で離ればなれになっても同じ過去に戻れていた。

「きっと、会いに来てくれるはず……」

千紘は自分に言い聞かせるようにそうつぶやいた。





 懐かしい通学路を通り、家に向かった。

角を曲がったところで、最初にマサくんの家が目に入った。

千紘は小走りでマサくんの家の前まで行き、表札を確認する。


 表札には「染田」の文字が入っていた。

確かマサくんの家族が引っ越しした後、すぐに他の家族がこの家に入っている。

表札が変わっていないという事は「まだマサくんはこの家に住んでるってことだ!」

千紘は期待に胸を膨らませながら、そっと中を覗きこむ。


 今日はみんな出かけていて誰もいないのだろうか?

マサくんの家はやけに静かな気配が漂っていた。

千紘は首をかしげながら門の前を通り過ぎ、自分の家に入った。



「ただいま」玄関で声を出すと、ぱたぱたと千紘の母親のスリッパの音が聞こえてきた。

「千紘! お帰り!」キッチンから走って出てきた母に「どうしたの?」と声をかける。


「ついさっき聞いたんだけどね。染田さん……マサくんの家、夏に引っ越しするんだって! 千紘にすぐに教えなきゃと思って、待ってたのよ!」

「え……」

母の言葉に千紘の心臓はどきどきと激しく動き出す。


「少し遠くにね、新築でここよりも広くて良い物件が見つかったんだって。いずれはマサくんのおじいちゃんおばあちゃんも呼ぼうかって話もあるみたいで……寂しくなるわね……」

そう話す母の声を聞きながら千紘はつぶやいていた。



「ついに……この日に戻って来た……」と。

お読み頂きありがとうございました!!!→つづく


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