第38話 あの日の真実
こんにちは。
頭の中の物語を文字にしてみます。
ラストにたどり着けるように、不定期ですが更新したいと思っています。
よろしくお願いします。
※2日に1回程度の更新を目標にします。年末年始は可能な限り、書き続けられたらな…と思っています!
~2021年8月27日~
正樹は8度目のこの日を迎えていた。
石の前に立ち、静かに待ち続ける。
いつか気がついてもらえる日を待ちながら……
◆
~2013年6月~
2013年8月27日、本来であればこの日に正樹は100日間の人生最後の旅を終え、空へと導かれる日だった。
そうすれば心穏やかに人生を終えることができたのかも知れない。
それでも、正樹は「人生最後の旅に出る」という選択をしなかった。
100日間、いつものように毎日を過ごし、この石の前に来て過去に戻る方法を考え、自分の記憶のことを考えた。
そしてそんなある日、正樹はふと石に触れてみたくなり手を伸ばしたのだった。
今まで、この石に触れた事はなかった。
なぜならこの石は、神聖な、神様の宿る石だと思っていたから。
いつもいつもこの石の前で遊んで、この石に話しかけていた。
でも決して触れることはなかった。
正樹は恐る恐る手を伸ばす。
震える手が石の真上に来た時、引き込まれるような力を感じ、正樹の手は石に触れていた。
その瞬間、ものすごく大きな突風が吹き、正樹の魂はどこかへ飛ばされていた。
目を覚ました時、正樹は確信した。
「ついにわかった。過去に戻る方法が!!」
◆
正樹は興奮していた。
過去に戻る方法がついにわかった。
「なんでこの石に触れると過去に戻るのか?」その仕組みなんてどうでもいい。
とにかく過去に戻ることができる、その事実だけで今の正樹には十分だった。
いや、待て。
という事は、2013年5月20日の出来事も変える事ができるかも知れない……
しかし、正樹の期待はすぐに絶望へと変わった。
何度、過去へ戻っても2013年5月20日の出来事は変えられず、100日間の期限も1日1日と短くなる一方だった。
その上、いつまで経っても人生最初の後悔にはたどり着けなかった。
「これでは何も変わらないまま100日間が経ってしまう。100日目を迎えた時、僕はどうなってしまうのだろう? 人生最後の旅に出なかったとしても、空へと導かれてしまうのか……?いやむしろ、地の底へと落ちていくのか……」
正樹は石の前で立ち尽くしたまま、17年という自分の短い人生を振り返っていた。
そしてやはり、同じところで思考は停止するのだ。
「僕は人生で最初の後悔に戻りたい。あの後悔から人生をやり直したかった……」
正樹はじっと考えを巡らせていた。
「それでも……もし100日間が経って僕の存在が消えてしまうのなら、その前にやっておきたい事がある……」
正樹は、自分がなぜ人生最初の後悔からやり直したいと、こんなにも強く願っていたかを改めて思い出していた。
「僕は、心から大切に思っていた人を、ずっと守りたいと思っていた人を、自分で傷つけて逃げてしまったんだ……」
◆
~2013年8月27日~
正樹の100日間の期限が終わる日。
正樹は家から携帯メールを送っていた。
「海斗に一緒についてきて欲しい所があるんだけど……」
今日が終わってしまえば、自分の存在はどうなるかわからない。
「その前に、ちーちゃんと海斗をつなぎたい……」
本当は自分が千紘を守りたかった。
たとえ隣に立つ存在になれなかったとしても、見守りたかった。
でも、今の自分にはそれは叶わないだろう。
だから「自分のこの想いを全て、海斗に託したい」その一心で行動したのだ。
海斗からは「いいよ!」という返事が返ってきていた。
正樹は待ち合わせの場所と時間を伝え、落ち着かない様子で待っていた。
それでも、待っても待っても海斗は現れなかった。
「もう、時間がない!」
正樹は一人で千紘の家に向かった。
「急がなければ! 期限が来てしまう前に何か1つでもつながなければ……」
気持ちは焦り、足がもつれそうになりながら走り出す。
千紘の家までの角に差しかかった。
正樹は歩調を緩め、そっと覗き込むように角を曲がる。
辺りには誰の姿も見当たらない。
ゆっくりと歩いて一旦石の前で立ち止まった。
すると隣で「もしかして、マサくん?」と問いかける声が聞こえた。
反射的に振り返り、正樹は少しがっかりする。
声をかけてきたのは千紘の母親だった。
「お久しぶりです……」正樹は小さな声で言った。
「本当に久しぶりね。どうしたの?」
「ちょっと……昔の家が見たくなって……」
正樹は戸惑いつつ適当な理由を答えた。
「ちーちゃんは?」と正樹が聞こうとしたのと同時に、おばさんが言った。
「そうなんだぁ。千紘もいればよかったわねぇ。今、部活に行ってるのよ」
千紘の母親に挨拶をし、正樹は肩を落として大通りに向かって歩いていた。
「また、何もできなかった……」
もう周りの音は何も聞こえない。
そして正樹がそのまま、あの横断歩道に入った瞬間……
無残にも、正樹の100日間の期限が終わったのだった。
お読み頂きありがとうございました!!!→つづく
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