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第37話 正樹の記憶

こんにちは。

頭の中の物語を文字にしてみます。

ラストにたどり着けるように、不定期ですが更新したいと思っています。


よろしくお願いします。


※更新が遅れてしまいました。

 もう随分とここでこうして立っている。

誰にも振り向かれず、声をかけられることもない。

みんな通り過ぎて行き、自分だけが取り残され、ずっと立っている。


 あの日、僕は何をしていたんだっけ。

どこに行こうとしていたんだっけ。

なぜ、ここに立っているんだっけ。





~2013年5月20日~


 正樹は昨日読んだ本の内容を思い出しながら歩いていた。

今まで正樹は物理学の本を漁るように読んでいた。

「過去に戻りたい」という漠然とした自分の中の想いをどうしたら形に出来るのだろう……そればかりを考えていた時に出会ったのが相対性理論を書いた本だった。

それでも、調べても調べても「未来へのタイムトラベルは理論上可能」という話は出て来ても、「過去へ戻るのは不可能」という内容のものばかり目にしていた。


 そして昨日、たまたま出かけた本屋で出会った本は「記憶のメカニズム」について書いた脳科学の本だった。

今まで「過去に戻る」という一点だけを追ってきた正樹にとって、「記憶」という別の観点から考えることは新しい発見だった。

「僕のあの日の後悔の記憶を、書き換えたり上書きしたりすることができれば、状況が変わるのかも知れない。こんなにも後悔に(とら)われなくてすむのかもしれない……」



 久々に興奮した気持ちのまま、正樹は歩いていた。

「あの石を見に行こう」

石に触れた時に感じた不思議な感覚……

あの日以来、正樹は何度かあの石を見に行っていたが、この記憶のメカニズムの本を読んだ今「もう一度確かめてみたい。何かきっかけがつかめるかもしれない」という思いが膨らんでいた。

焦る気持ちをそのままに、走り出しそうに道を進む。


 ひたすら前を見て進むその時の正樹には、周りのものは何も目に入らなかった。

点滅する信号の色も、隣から迫る大きな音の正体も……


 そしてその瞬間、正樹は耳元で大きな衝撃音を聞いた気がした。





 気がついた時には正樹はもう石の前に立っていた。

「なんだ。ちゃんとここに来てたんだ……」

そう思いながらも、自分の身体が今までとは違うような感覚だけは感じていた。


 そして突如として頭に浮かんだのは、これから自分がやらなければいけない事だった。

「そうだ。僕はこれから100日間かけて、今まで自分が関わった人や関わった場所を巡る旅に出なければいけないんだった。そして過去の後悔を捨て、導かれるがまま空に昇っていく。それが僕がやらなければいけない事……」


 そこまで思ったところで誰かが頭の中で叫んだ。

「待て! このまま後悔を捨てて良いのか?!」


 正樹は、はっと顔をあげた。

「僕は……今、何を考えていたんだ?!」

そして目の前の石を見つめた。


 そして、しばらくしてからつぶやいた。

「違う……僕がやらなければいけない事は、後悔を捨てることじゃない……」


「僕はこの100日間で人生最後の旅には出ない。過去の後悔は捨てられないんだ! まだやらなければいけない事は他にある」

正樹はそのまま(きびす)を返し、家に帰る道を戻って歩き出した。





~2021年8月28日~


 千紘と海斗はファミレスを出て駅の改札を目指し黙ったまま歩いていた。

二人とも今の気持ちをどう言葉に表したら良いかわからず静かに足を進める。


 それでも、明日にはまた過去に戻ると決めている。

「一度ループに入ったら、最初の後悔にたどり着くまで(のが)れられない」

その事は二人が一番よくわかっていた。

結局は今ここでやめることはできない。

最初の後悔で待っているマサくんに出会い、救い出すためにも……



「じゃあ。また明日、あの場所で……」海斗が静かに言う。

「はい。また明日」千紘も小さな声で答えた。


 千紘はゆっくりと改札を抜け、一旦止まってから振り返った。

海斗は改札の向こうで千紘の事を見つめながら、小さく手をあげた。

千紘もそっと手を振り、階段を降りた。



 ホームのベンチに座り、千紘はさっきの海斗の言葉を思い出していた。

「たとえ一緒に行けなかったとしても……必ず戻ってきて欲しいって思ってる……」

もしかしたら海斗は、千紘の心の中で沸いた気持ちを感じ取ったのかも知れない、と思っていた。


 今回のループから戻り、マサくんの母親に話を聞いたことでわかった事がある。

それは、たとえ過去を変えたとしても「現代の自分が未来に戻ってしまえば、また同じ過去を繰り返すかもしれない」ということだった。

過去の自分に状況を説明する事は出来ない。


「マサくんを本当に救い出したいのなら、私は過去に居続けるべきなのかも知れない……」

そんな考えが千紘の中にふつふつと湧いてきているのだった。


「でも……」と千紘は顔をあげ、ホームの隙間から見える空を見上げた。

脳裏に海斗の真剣な表情が浮かぶ。

「今の自分にそれを決める勇気はない……」


 明日になれば、また海斗ともに過去に戻る。

それがもし、マサくんの待つ「最初の後悔」だったとしたら……

「その時に結論を出そう」千紘はそうつぶやき、駅に入って来た電車に乗った。

お読み頂きありがとうございました!!!→つづく


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