第36話 ひとつだけわかった事
こんにちは。
頭の中の物語を文字にしてみます。
ラストにたどり着けるように、不定期ですが更新したいと思っています。
よろしくお願いします。
※なんとか後編に入りました。
千紘はずっと心に引っかかっているものがあるような気がしていた。
「私たち、何か重要な事を見落としている気がするんです……」
「何かって?」
「うまく説明できないんですけど……何かが引っかかる……」
バスは駅に到着していた。
千紘と海斗は運転手に促されて、慌ててバスを降りる。
強い日差しが真上からぎらぎらと差していた。
海斗が時計を見ながら「ちょうど昼時だな……」と言い、二人は以前も入ったファミレスに向かった。
店内はやはり混んでいて、人々の話声が騒々しく聞こえていた。
千紘と海斗は無言のまま、案内された席につく。
ソファに深く腰をかけながら、千紘はもう一度マサくんの日記のページをめくっていた。
そしてふと思い出す。
前回、マサくんの家に行った日、おばさんが話していた事を。
「5月20日にね、マサはどこかへ行っているの。そして戻って来たんだけど……その日以降、なんだか様子が変わったのよね。言葉ではうまく説明できないんだけど、何かが違った。そして、8月27日にいなくなったの……」
今回の日記は2013年5月19日で終わっている。
「明日、あの石を見に行く」という言葉を残して。
千紘は顔をあげて独り言のように話す。
「前回、マサくんの家に行ったとき、おばさんはマサくんが5月20日にどこかへ行っていたと話していましたよね。たぶん、今回と同じで石を見に行っていた……」
海斗は不思議そうに千紘の言葉に耳を傾けていた。
千紘は記憶をたどり、今回のループの時に出会ったマサくんの姿を思い出す。
9月も後半だったがまだ暑い日だった。
中学生のマサくんは半袖シャツにデニム姿だった。
そしてふと石の前で出会った染田の姿を思い出す。
あの石の前にたたずむ姿、千紘に話しかけた姿、そして横断歩道を渡って来た時の染田の……マサくんの姿……
「あれ?!」
千紘ははっとして息をのむ。
そして確認するようにゆっくりと言葉をつなぐ。
「私が以前、染田くんがどこの高校か調べようとしていた時……海斗さんに説明した制服は冬服でしたよね……」
「え? そうだね。深緑色のブレザーって言ってたよね……」
「でも……染田くんに石の前で出会った日も、マサくんがあの横断歩道で消えた日も、8月27日……真夏です……本来なら、夏服のはずじゃないでしょうか……」
海斗は「えっ……」とつぶやく。
「前回マサくんの家に行った時、おばさんはマサくんが5月20日にどこかへ出かけ、その日以降、様子が変わったと話していました……もしかして……事故に合ったのは8月27日ではなく、5月20日だったんじゃ……」
「え……それじゃあ、5月20日から8月27日までの間の正樹は、幽霊が何かだったってこと?! そんな事ある?!」
確かに、そんな事あるはずがない。
でも……実際に過去に戻るなんてありえない事が起きている以上「何があってもおかしくはない」と、千紘は思っていた。
「そんな事あり得ないと思うんですが……そう考えると納得できる事もあるんです。染田くんに触れようとした時に手の感触がなかったこととか、石に触れるでもなく目の前から消えたこととか……」
海斗は額に手をあて、考え込むような様子で言った。
「つまり……俺たちが正樹を救うために防がなきゃいけなかった日は、8月27日じゃなく5月20日だったってこと……?」
千紘は大きく頷いた。
「そうです」
そして続けて言った。
「私たちが変えなければいけない過去。助けなければいけないのは『8月27日に私に会いに来るマサくんではなく、5月20日に石を見に来るマサくん』だったってことです」
海斗は大きくため息をつき、ソファの背にもたれかかって言った。
「だから、助けられなかったってことか……ポイントがズレてたんだ……」
「そうですね……」
千紘もため息をつく。
◆
二人はしばらく無言のまま、運ばれてきた料理を口にした。
海斗はさっきから下を向いて何かを考えている様子をしている。
千紘は気になって海斗の顔を覗き込んだ。
それに気がついて、海斗は一旦微笑んでから真剣な表情になり、千紘を見つめた。
「ねえ。千紘……」
「はい」
「今回のループで俺が戻ったのは中学三年生だった。ちょうど正樹に出会った年だよね。初めて正樹に会った時、正樹に『ものすごく後悔した事ってある?』って聞かれたんだ。その時俺は、人生15年程で後悔なんて言葉を考えた事もないって思った」
千紘は海斗が何を言おうとしているのかがわからなかった。
「このループは『後悔』がポイントになってる。つまり……石に触れても、俺はもう過去に戻れないかも知れない……」
「え……」千紘は目を見開いて静止していた。
「最後に決めるのは千紘自身だよ……そういう状況になるかも予想はつかない。それでも、俺の気持ちだけ言っておいて良いかな?」
海斗は千紘の手をぎゅっと握りしめた。
「たとえ一緒に行けなかったとしても……必ず戻ってきて欲しいって思ってる……」
千紘は突然の海斗の言葉に戸惑っていた。
どういう事だろう、海斗は何を言わんとしているのだろうか、と。
「でも、そうなるかはわからないですよね……?」
千紘にはそれしか言えなかった。
「そうだね……」
海斗はつぶやくように言った。
お読み頂きありがとうございました!!!→つづく
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