第35話 変わらない未来
こんにちは。
頭の中の物語を文字にしてみます。
ラストにたどり着けるように、不定期ですが更新したいと思っています。
よろしくお願いします。
~2021年8月28日~
千紘と海斗はマサくんの家の前に立っていた。
「この家を訪ねるのも、3回目ですね……」千紘が小さく言った。
「もう、こんな重苦しい気持ちで来るのは、最後にしたいけどな……」と海斗が答える。
千紘は海斗と目を合わせ頷いてから、意を決してインターホンを押した。
今までと同じやりとりを繰り返し、二人はマサくんの家に入った。
◆
二人は並んで応接間のソファに腰を下ろす。
千紘は今回もいてもたってもいられず、すぐに話し出した。
「あの……突然伺って申し訳ありません。マサくんは……マサくんは今どこにいますか?」
おばさんは少し驚いた顔をしていたが、首を振って前回と同じ言葉を繰り返した。
「もう8年になるかしら。マサは家に帰ってないの。どこにいるのかもわからない」
千紘と海斗は絶望の顔を浮かべる。
「やっぱり……変えられなかった……」
過去に戻っても、何も変わらなかった結果に打ちのめされた気分になっていた。
「あの……変な事を聞くようなんですけど。私、2010年に一度マサくんに会っているんです。それ以降、マサくんが私に会っているかどうかってわかりませんか? 私がこちらの家を訪ねたり……? ちょっと、覚えていなくて……」
おばさんは不思議そうに千紘を見てから、ゆっくりと首を振る。
「私の知る限りでは会っていないと思うけど……外で会っていたら別だけど、ちーちゃんがこの家に来たのは今日が初めてだわ」
「そうですか……」
千紘は下を向く。
たとえ過去に戻ってマサくんと再会しても、現代の24歳の自分が未来に戻ってしまえば、その後どう行動するかはその時代の中学生の千紘の考えで決まる。
マサくんと友達でい続ける事の重要性を、中学生の千紘は知らない。
連絡を取らなくなるのは当然の事だったのかも知れない。
しばらく沈黙が続いてから「あの……」と千紘が話し出す。
「いなくなる前のマサくんがどう過ごしていたかとか、何を考えていたかとか、わかるようなものってありませんか?」
おばさんはしばらく考える様子を見せてから、「ちょっと待っててね」と言って二階の部屋へ上がっていった。
そして、あのマサくんの日記を手に戻って来た。
「これね。マサの日記なの。読んではいけないと思いつつも、何か手掛かりがないかと思って何度も読んだわ……」
千紘は日に焼けて色の変わった日記を受け取った。そして書いてある内容を想像して表情をこわばらせる。
「前回のように、マサくんの絶望を感じる内容だったら……」
自分が過去に戻って再会したことで、さらにマサくんを追い詰めていたとしたら、と想像し怖くなっていた。
「大丈夫。見てみよう」
千紘の様子を感じ、海斗が手を握って言った。千紘は一旦息をはいて、そっと2010年のページを開く。
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2010年9月24日
海斗と話をした。
前を向いて進まなきゃいけないって、真剣に言われた。
そんな風に言ってくれる友達がいることが嬉しかった。
本当は、すごく迷ってる。
でも明日、海斗と一緒に会いに行ってみようと思う。
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千紘と海斗は少しほっとして、次の日のページに目を落とす。
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2010年9月25日
ちーちゃんに会った。
すごく大人に見えた。
また友達に戻れた。
でも、はっきりわかった。
僕はあの日の後悔に戻りたいんだってことに。
あの石をもう一度、見に行ってみたい。
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「えっ……」と千紘はつぶやく。
この日記を読む限り、千紘と再会したことで過去に戻る重要性を再認識したように受け取れてしまう。
そして千紘に再会することよりも、過去の後悔に戻ることの方がマサくんの中で比重が大きいように感じた。
海斗が声を出す。
「すみません。しばらくこの日記を貸していただけないでしょうか? 正樹を見つけ出す手がかりになるかも知れないので」
おばさんはゆっくりと頷いた。
◆
千紘と海斗はマサくんの家を後にした。
ちょうど駅行きのバスが来て二人は乗り込んだ。
座席につき、海斗が日記を開きながら言う。
「結局、正樹は千紘と再会した後も過去に戻ることにこだわったってことだよな……」
千紘も日記を覗き込みながら頷いた。
「これを読む限り、あの後も石を見に行ってるみたいですね……」
日記にはマサくんの字で「今日も石を見てきた。」と書かれている日が何度かあった。
ページをめくっていた海斗が「あれ?」と声を出す。
「どうしたんですか?」
「この日記……2013年の5月19日で終わってる」
「え??」
千紘は海斗から日記を渡され、ページをめくってみる。
「本当ですね…。」
2013年5月19日の日記には、近所の本屋に出かけた出来事と本のタイトルが書いてあった。
その最後に一文、唐突にその言葉は書いてある。
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明日、あの石を見に行く。
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そして日記はその日以降、何も書かれることはなくなっていた。
千紘はずっと心に引っかかっているものがあるような気がしていた。
「私たち、何か重要な事を見落としている気がするんです……」
お読み頂きありがとうございました!!!→つづく
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