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第34話 違和感のある未来

こんにちは。

頭の中の物語を文字にしてみます。

ラストにたどり着けるように、不定期ですが更新したいと思っています。


よろしくお願いします。

~2021年8月27日~


「俺ら先に店行ってるから! 二人は後から来いよ」

耳元で誰かの声がしている。



 千紘は、はっと顔を上げて周りを見渡した。

目の前にはパソコンの画面があり、いつものハウスメーカーの会社のフロアだとすぐにわかる。

……が、ここは座り慣れた千紘の席ではない。

慌てて隣を見ると、海斗がやはり驚いた顔をして座っていた。


「海斗さん……私たち、戻って来たんでしょうか……?」

海斗は「そうみたいだね……」と言いながら、パソコンを操作してスケジュールを確認する。

そして「……2021年8月27日だ……」と小さく言った。



 千紘も急いで社内システムを開く。どうも千紘は亜理紗の立場に置き換わっているようだった。

「山中さんの代わりに私が営業事務の社員になってるみたいです……なんででしょう……?」

首をかしげる千紘を見ながら、海斗は「あっ……」と声を漏らす。


「もしかして……亜理紗に告白されたのを、断ったからかも知れない……」

「えっ?! どういう事ですか……中学生ですよね?!」

全く訳が分からないという顔で千紘が聞き、海斗は今回のループの内容を話した。



 今までの過去では、海斗は亜理紗の告白を無視していた。

むしろ、亜理紗が中学の後輩という事も全く知らない事実だった。

亜理紗は海斗を追って、高校、大学、会社まで同じ所に入っていたらしいが、今回の過去ではっきりと振られたため、海斗の事に見切りをつけたのだろうと、説明した。


「ふーん……」

なにやら不穏な空気になり、少し慌てながら海斗が言う。

「いや。俺の事じゃなくて、千紘はどうなった? 正樹には会えたんだよね?! 俺も近くまでは一緒に行ったんだけど……あれ? その後のことが……覚えてないな……」



 千紘はマサくんと再会した様子を海斗に話した。

「もう一度、友達になろうって話して、今度はマサくんの家に遊びに行くねって約束して別れたんです。マサくんも笑顔で、すごく安心しました」

千紘の話を聞き、海斗もほっとして「そっかぁ。良かった……」と背もたれに寄りかかって答えた。


「俺も、過去に戻る事を考えずに前を向いて欲しいって言ったんだ。それに正樹自身も『過去に戻るなんて実際には無理だよ』って言ってたんだよな」

「そうだったんですね。でも、私ともう一度友達になれた事で、2013年の8月27日に私に会いに来る理由はなくなったはずです。大丈夫……ですよね……?」


 千紘は不安そうな顔で海斗を見つめた。この時、千紘も海斗も「大丈夫と思いたい」と願っていた。

でも、心のどこかで引っかかりがある事にも気がついていた。



「あれ? まだ残ってたの? 飲み会始まってるよ」

同僚に声をかけられ、千紘と海斗は同僚と共に会社を後にした。





 店の中からはすでに楽しそうな声が聞こえている。

「派遣社員の時に、初めて海斗さんに誘われてついて来たお店だ……」と千紘は思い出していた。

あの時は亜理紗に「海斗に近づくな」と言われ、悲しみを抱えながら「自分は変わりたい」と強く思ったのだった。

今ではこんなにも海斗の近くにいる自分が不思議でならなかった。



 席に着くと目の前の同僚がにやにやしながら言った。

「二人はまだ付き合ってないの? いっつも一緒にいるじゃない」

「えっ?」と千紘と海斗は顔を見合わせる。

他の同僚が横から声を出した。

「だって、ずっと前から野村さんのこと見てたって、海斗言ってたよな。一途だな~」


 同僚たちの笑い声の中、海斗は何か違和感を感じていた。そして、はっとして自分の手帳を広げる。

そこには、何事もなかったかのように古い紙きれが入っていた。

「まさか!」

その紙きれには、住所と共に千紘の名前が書かれていた。



 海斗の様子に気がつき、千紘は「どうしたんですか?!」と小さな声で聞く。

海斗の顔色は青くなっていた。

「千紘、一旦外に出よう」海斗は小さく言い、荷物をまとめた。


「ごめん。俺ら先に帰るわ」

海斗はそう言い残すと、千紘の手をつかみ外に出る。

「おっ! ついに」と同僚たちの冷やかす声が後ろから聞こえていた。





 夏の生ぬるい夜風の中、店の外に出て速足で歩く海斗に千紘が戸惑って声をかけた。

「海斗さん……どうしたんですか?」


 海斗は急に立ち止まり、千紘を見つめる。

「何か違和感を感じていたんだ。あの日、過去で俺と千紘は知り合っていない。それなのに、今こうして一緒にいるのって変じゃないか?」

海斗は千紘に手帳に挟まれていた紙を見せた。

「これって……」

「やっぱり正樹は過去に戻ってる。過去に戻ってこの紙を俺に渡してるんだ……」

「そんな! じゃあ、状況は何も変わっていないって……ことですか……?」

「そうかもしれない……」


 二人はしばらく言葉を失っていた。

そして千紘が思い出したように声を出す。

「そういえば……今回も未来に戻る前に夢を見たんです。あの横断歩道の夢……あと、石の前にマサくんが立ってた……」

「え……? 俺も同じ夢を見た気がする……」

「それじゃあ。やっぱり……」

「明日、朝一で正樹の家に行ってみよう……結局、それしか確かめる方法はない……」


 夜の闇と共に、重苦しい空気が二人を包みこんでいた。

お読み頂きありがとうございました!!!→つづく


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