第30話 海斗のループ:中学3年生
こんにちは。
頭の中の物語を文字にしてみます。
ラストにたどり着けるように、不定期ですが更新したいと思っています。
よろしくお願いします。
~2010年9月24日~
「あの……佐々木先輩!! 好きです! 付き合ってください!」
海斗は突然目の前の女の子の言葉を聞き、どきっとする。
「えっ?!」
これは一体どういう状況?!
海斗は頭の中で記憶を手繰り寄せる。
そういえば……中学生の時に何回か告白されたことがあったな、と思い出す。
その当時の海斗はスポーツ推薦で高校へ行くことが決まっていて、恋愛はご法度という暗黙の了解の中で過ごしていた。
女の子に興味がなかったわけではない。
恋愛をしてみたいという思いもあったが、まだ中学生で陸上ばかりやって来た海斗は、特定の誰かを好きになる事はなかった。
「そうだ。正樹にそんな話をしたことがあったな……」
海斗は思い出していた。
◆
「今日、帰り道に告白されたんだよね」
海斗の言葉に正樹は目を丸くして聞いてきた。
「本当?! どんな子だったの?」
「え?! わかんないな……突然で驚いたし……顔もよく見てない。なんだか恥ずかしくて、そのまま無視して帰ってきちゃった……」
「え?! なにそれ?! その子、傷ついてると思うよー。海斗って恋愛とか奥手なタイプだったんだね」
笑いながら正樹に言われ、海斗は「そうか……悪いことしたな……」と思っていた。
「でも、そういう正樹はどうなんだよ」
海斗に反撃され、正樹は少し寂しそうに微笑みながら言った。
「僕は大切な子がいるよ。ずっと心の中にいる。でも、もう会えないけどね……」
その正樹の言葉を、当時の海斗は「ふーん」と聞いていた。
でも、今ならわかる。
正樹の大切な子は、「千紘」だ。
◆
「あの……先輩??」
声をかけられて、海斗は我に返る。
そして、告白してきた子の顔を見て「あれ?」と思った。
どこかで見た事のある顔……
「前に、会ったことあるっけ……?」
海斗が聞くと、その子は顔をぱっと明るくして言った。
「佐々木先輩が練習してるとこ、いつも見てたんです。私、山中亜理紗って言います!」
海斗は「え?! 亜理紗?!」と動揺が隠しきれずにつぶやいた。
どういう事だ? 亜理紗って中学の後輩だったのか?!
そういえば、大学も後輩だって言ってた気がするけど……
公園へ向かう道を歩きながら、海斗は「縁がある人とは、必ずどこかでつながるものなのかな……」と思っていた。
たとえ過去で出会えなかったとしても、自分はどこかの未来でまた、千紘とつながる事ができるだろうか、と空を見上げていた。
◆
「亜理紗ー。どうだった?!」
友達が亜理紗の姿を見つけて、駆け寄ってくる。
「撃沈……」
「やっぱりー。佐々木先輩って、告白してもろくに顔も見ずに無視するって噂だったじゃんー」
亜理紗は大きく首を振った。
「それだったらさ、高校も大学も仕事も、ずっと追いかけようと思ってたけど。全然違うの……」
「どういう事?」
「大切な子がいるんだってさ。まだ出会えてないけど……自分はその子の事以外は考えられないから、もっと他の人を見た方が良いよって言われた」
「は?! なにそれ?! しかも、出会えてないってどういう事?!」
「ほんと、どういう事?! って感じ。なーんか馬鹿らしくなってきた」
亜理紗はそう笑いながら、溢れる涙を懸命に堪えていた。
◆
海斗はいつもの公園に行った。
緊張しながらそっと覗き込むと、いつものベンチに正樹が座っているのが見え、安心する。
「正樹!」
海斗は明るく声をかける。
振り返った正樹の笑顔を見て、海斗は心底ほっとしていた。
この前のような傷ついた顔を正樹にさせてはいけない、そう思いながら話しかける。
「何してたの?」
「うーん。考え事」
「この前言ってた過去に戻る方法の事?」
海斗の質問に正樹はあははと笑い、そのまま黙っていた。
海斗と正樹はこの年の夏休み前に、この公園で出会った。
それからは、夏休みの間もなんとなくこの公園で会っては話をしていた。
特に約束をしたことはなかったが、いつも正樹はこのベンチで海斗を待っているように感じていた。
「今日、帰り道に告白されたんだよね」
海斗は先ほどの出来事を正樹に話した。正樹は目を丸くして聞いてきた。
「本当?! どんな子だったの?」
「後輩……かな? 明るくていい子だよ。でも……」
「でも?」
「俺、好きな子いるから……それ、伝えた……」海斗は下を向く。
「へぇ。海斗、好きな子いたんだ! どんな子?」
「素直で、頑張り屋で……でも、自分に自信がなくて。本当はすごく強い子なんだよ。そんな子……」
「そっか」正樹は静かに答えた。
「ねえ。正樹。前に『過去にものすごく後悔した事がある』って言ってた話なんだけど。聞いてもいいかな」
海斗の真剣な表情に、正樹は少し戸惑いの色を見せつつ、しばらく黙っていた。
お読み頂きありがとうございました!!!→つづく
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