第28話 海斗の告白
こんにちは。
頭の中の物語を文字にしてみます。
ラストにたどり着けるように、不定期ですが更新したいと思っています。
よろしくお願いします。
千紘と海斗はマサくんの家を後にした。
二人は何となく無言のまま、バス停を通り越して歩き続けた。
太陽は傾きオレンジ色の光が差し込んでいる。
ちょうど目に入る位置に光が当たり、千紘は顔をそむけた。
そしてふと海斗を見上げる。
海斗は何か思いつめたような表情をしていた。
「海斗さん……」千紘が呼びかけると、海斗ははっとして千紘を見た。
「ごめん……考え事してた。」
「私は……」と千紘が話し出す。
「私は2013年8月27日よりも前にマサくんに会えれば、全てが解決できると思っていました。その日にマサくんが私に会いに来る理由がなくなるから。でも……そんな簡単なものじゃなかったんですね……」
海斗がふと立ち止まり、千紘は海斗を振り返る。
「俺が……俺が全て間違えたんだ。今の俺が千紘と出会えたのは、正樹がつないだものだったのに、それを無駄にしたんだ……」
「どういう事ですか……?」
「正樹は、俺に『いつか自分がいなくなったら、千紘を見守って欲しい』って言ったんだよ。『本当は僕が見守りたかったけど』って。その意味、わかる?」
千紘は「え……?」と戸惑う。
「正樹は自分がいなくなることは避けられないって知ってたのかも知れない。その上で、俺に千紘を託したんじゃないかな。
本当は誰にも千紘を渡したくなかったはずなんだ……渡したくないけど、千紘の幸せを願ったんだと思う。それ程、深い愛情だったんだと思うよ……」
「そんな……!」千紘が大きな声を出した。
「私はマサくんと小学生の時に別れて以来、連絡すら取っていなかったんですよ。それなのに、ずっと私のことを想っていたって事ですか?!」
海斗がうなずく。
「そんなの……そんなの酷いじゃないですか?! 私なんてマサくんが引っ越し前に暴力を振るった事を怒って『早く引っ越せばいいのに』って思ってたんですよ……私、最低じゃないですか……マサくんの気持ち、全く考えてなかったなんて……」
千紘は震える声で言い、下を向いた。
ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
海斗は千紘に近づき、そっと肩を抱いた。
「ごめん。千紘。俺だって正樹の気持ちを全く考えてなかったんだよ。だから中学生の正樹に、強引に千紘に会わせるような事をしてしまった。でもきっと、正樹は気がついたんだ……俺の気持ちに……それで正樹を深く傷つけてしまった……」
「え?」と千紘は顔をあげる。
海斗は千紘をまっすぐに見つめ、両手を握った。
「最初は正樹に頼まれたから見てたんだ。千紘の事を……でも、千紘と知り合いになって、同じ時間を、困難を共有する内に、苦しみ悩みながらも前を向く千紘の姿を目の当たりにして、どんどん惹かれていった。俺にとっても千紘は、かけがえのない大切な人になってるんだ……」
夕日のせいだろうか。海斗の瞳が潤んでいるように見えた。
千紘はゆっくりと紡がれる海斗の言葉を聞き、自分の心の中にある想いに気がついた。
「海斗さん……私は……」
千紘が言いかけたのを海斗が首を振って制止する。
「今すぐ何かを言う必要はないよ。あと何回で正樹の所にたどり着くかはわからないけど、また過去には戻らなきゃいけない。正樹の最初の後悔にたどり着いて、全てがはっきりしたら、その時に千紘の気持ちを俺に聞かせてくれないかな」
千紘は海斗を見つめていた。
本当は今すぐにでも、海斗の胸に飛び込みたい、そんな気持ちもあった。
でも……マサくんの事を放っておくことはできない。
後悔のループにいるマサくんを助け出さなきゃいけない。
マサくんもまた、千紘にとっては大切な人だと気がついたから。
千紘は海斗に向かって「はい」と返事をした。
◆
千紘は家に向かう道を歩いていた。
さっきまでの海斗との会話を思い出しながら、これからどうすべきか悩んでいた。
別れ際に海斗は「次にいつ過去に戻るかは、お互い一度ゆっくり考えよう」と言った。
過去での千紘たちの行動で未来が変わってしまう。
マサくんを助けたい一心だけでは済まされない気がしていた。
商店街の中を通り過ぎようとした時、誰かがこちらを見ている気がした。
千紘は「え?」と顔を向けると、一人の女性が「もしかして!」と声を出した。
「もしかして、野村さんじゃない?」
千紘はその人の顔をよく見る。
「ん? あれ? 伊藤さん?!」
ついこの前、教室で話をした伊藤が立っていた。
「久しぶり! 中学以来だよね。」
ずいぶんと印象の変わった伊藤が走り寄って来た。
千紘は(最近話したばかりなんだよね……)と戸惑いつつも「うん」と返事をする。
「今何してるの? 会社員?」
「うん。会社の受付。伊藤さんは?」
「私はね、フリースクールの先生してるんだよ」
「フリースクール?」
「色んな理由で学校に行けない子供たちが通ってる場所なの。勉強したり、一緒に運動したり、色々な事を体験して過ごすんだ。その内に学校に戻れるようになる子もいれば、社会に出て行く子もいる。一時の避難場所みたいな? ところ。私自身がそうだったから」
千紘は伊藤の顔を見て「そうだったんだ……」とつぶやいた。
やっぱり伊藤はあの後、学校に行かなくなっていたんだろうか、と思いを巡らせる。
「私ね、野村さんにずっとお礼が言いたかったんだ! あの日、教室で話したこと、私にとってすごく大切な時間だったから。私が前向きになれたのは野村さんのおかげだよ」
「え?! そんな!」千紘は驚いて顔の前で手を振る。
「私たちの未来は明るいね!! 野村さんが教えてくれた言葉だよ」伊藤が明るい声で言った。
千紘はその伊藤の笑顔を、素直に素敵だと思って見ていた。
伊藤と別れた後、千紘はもう一度その言葉を思い出していた。
「未来は明るい」
そうだ、自分はずっと変わりたいって思っていた。
もっと、自分に自信をもって強くなりたい、と。
「私にできる事をしよう。マサくんのために。そして、海斗さんと一緒に歩いていくために」
お読み頂きありがとうございました!!!→つづく
「面白い」「続きが読みたい」と思って頂けた方は、ぜひブックマーク、下の評価をお願いします!
最終話まで書き続けるモチベーションアップにつながります!
応援よろしくお願いします!




