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第27話 マサくんの日記

こんにちは。

頭の中の物語を文字にしてみます。

ラストにたどり着けるように、不定期ですが更新したいと思っています。


よろしくお願いします。

「あれ? 千紘早いねぇ。今日は海斗くんとデートじゃなかったの?」


 家に入った途端、母から声をかけられた。

千紘は「え?!」と小さく答える。


 海斗の事を母が知っている……

「どういう事?!」

千紘は慌てて自分の部屋に入ってスマホを開き、そのまま海斗に電話をかけていた。


「もしもし……」と聞きなれた声がスピーカーから伝わり、千紘は少しほっとする。

「海斗さん。千紘です。私達、急に未来に戻って来たみたいですね。なんだか状況が変わりすぎてて、どういう事なのか全くわからなくって……」

千紘は部屋に座り込み、海斗の言葉を待っていた。





 戸惑った千紘の声を聞きながら、海斗は自分の部屋で天井を見上げていた。

「ねえ、千紘……この未来で俺たちは恋人同士だって知ってた?」

「えっっ?!」千紘の驚いた声が聞こえる。


 その声を聞きながら海斗は思っていた。

もしかしたら、自分は間違えたのかも知れない、と。



 沈黙が続いた後、千紘が言った。

「今日、あの石の所にマサくんがいなかったんです。8月27日には必ず立っているはずなのに……それと、夢を見たんです。未来に戻る前の夜に……」

「夢?」

「マサくんが、あの横断歩道で消えてしまう夢です。今日、石の前にマサくんが立っていないって事は、助かったのかとも考えたんですが……なんだか私、とても不安で不安で……」


 千紘の声を聞きながら、海斗はすぐにでも千紘の所に行きたいと思っていた。

でも、もしかしたら自分のこの感情が、未来を違う方向へ進めてしまったのかも知れない、とも考える。


「明日、正樹の家に行ってみよう。そうすれば状況がわかるはずだから……」

海斗の言葉に千紘は「はい……」と答える。

「今日はゆっくり休んで。おやすみ」

「はい。おやすみなさい」


 電話を切り、海斗はまた天井を見上げて思い出していた。

高校生の時に突然海斗の前に現れて、「千紘を見守って欲しい」と言った正樹は、現代から過去に戻った正樹のはずだ。

「俺と千紘をつないで、何がしたかったのだろう」


 そして中学生の正樹の傷ついた顔を思い出していた。





~2021年8月28日~


 千紘と海斗はマサくんの家の前に立っていた。

以前来た時と全く同じ印象の住宅街とマサくんの家。


 その静かすぎて寂しさを感じさせる家の前で千紘は一旦海斗を振り返り、頷いてからインターホンを押した。

しばらくしてから「はい……」という女性の声が聞こえる。


 千紘は前回と同じようにゆっくりと話す。

「私、昔、染田さんの隣に住んでいた野村千紘と申します。突然伺って申し訳ありません。マサくんにお会いしたいのですか、今いらっしゃいますか?」

「……?!」

インターホンの向こうではっとする息づかいが聞こえ「ちょっと待っててね」という声が聞こえる。


 ゆっくりと玄関が開き、マサくんの母親が顔を出した。

「ちーちゃん? 久しぶりね。どうぞ入って」

おばさんはそう言いながら海斗を見て不思議そうな顔をする。


 千紘はその様子に気がつき、海斗の事を紹介した。

「あの、こちらは佐々木海斗さんです。マサくんが中学生の時に友達だった」

おばさんはしばらく考える様子を見せてから「あぁ!」と言った。





 千紘と海斗は並んで応接間のソファに腰を下ろす。

千紘はいてもたってもいられず、すぐに話し出した。


「あの……突然伺って申し訳ありません。マサくんは……マサくんは今どこにいますか?」

おばさんは少し驚いた顔をしていたが、首を振って話し出した。

「もう8年になるかしら。マサは家に帰ってないの。どこにいるのかもわからない」

「どういう事ですか?!」

千紘はつい身を乗り出して声を出す。


「ある日を境に急に帰って来なくなったの。失踪届も出した。色んな所を探して回ったわ。でも、全く消息がつかめなかった……」

おばさんは下を向いていた。



 海斗が声を出した。

「唐突な事を聞くようで申し訳ないのですが……2011年の9月以降の正樹の事を、教えてもらえませんか?」

おばさんは「ちょっと待っててね」と言って二階に何かを取りに行った。


 ぱたぱたと足音がして、おばさんは手にノートを持って戻って来た。

「これね。マサの日記なの。読んではいけないと思いつつも、何か手掛かりがないかと思って何度も読んだわ……」


 千紘と海斗はおばさんの開いたページを覗き込む。



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2011年9月3日

お父さんとお母さんに初めて高校受験の話をした。

海斗と同じ高校に行きたいと言ったら、喜んで応援すると言ってくれた。

明日、海斗に会って伝えよう。

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 海斗は額に手をあてる。

「あの日、正樹は俺に高校の事を話そうとしてたんだ……それなのに……」

千紘はそっと海斗の腕を支える。


 そしてページをめくりはっとする。


-----------------------------------

2011年9月4日

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 ここには何かが書かれていたはずだ。

でもその文字はボールペンで真っ黒に塗りつぶされていた。



 おばさんが静かに言った。

「マサはね、高校受験しなかったの。あんなに嬉しそうに、海斗くんと同じ高校に行くって言ってたのに。その後はずっと家に引きこもって、自分の部屋からほとんど出てこなかった。当時は何をしているのか全然わからなかったんだけどね、日記に時々出てくるのよ。『過去に戻る方法を考えてる』って。ここ」

おばさんが指さしたページを見る。


-----------------------------------

2013年5月19日

僕は二回も逃げた。もう後悔はしたくない。

最初の後悔に戻るんだ。

過去に戻るんだ。

-----------------------------------


 千紘と海斗は顔を見合わせる。

「過去に……戻る……」千紘はつぶやいた。

やっぱりここでもこの言葉が出てくるのか、そう思っていた。



 おばさんが言った。

「この次の日、5月20日にね、マサはどこかへ行っているの。そして戻って来たんだけど……その日以降、なんだか様子が変わったのよね。言葉ではうまく説明できないんだけど、何かが違った。そして、8月27日にいなくなったの……」


 千紘ははっと息をのみ両手で口元を押さえた。

海斗は頭を抱えて下を向いてつぶやく。

「やっぱり……何も変えられなかった……いやむしろ、正樹の心を傷つけた分、最悪だ……」


 海斗の言葉が、千紘の頭の中で何度も何度も繰り返されていた。

お読み頂きありがとうございました!!!→つづく


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