第26話 マサくんの想い
こんにちは。
頭の中の物語を文字にしてみます。
ラストにたどり着けるように、不定期ですが更新したいと思っています。
よろしくお願いします。
~2011年9月4日~
正樹は訳がわからず走っていた。
今の自分の感情がどういったものなのか、自分でも全く説明ができなかった。
ずっと千紘には会いたかったはずだ。
それなのに……
実際目の前に千紘の姿を見たら、複雑な感情が入り乱れ、その場にいてもたってもいられなくなっていた。
「ちーちゃん……」と小さく声に出す。
正樹のこの感情は、なぜ千紘と海斗が知り合いだったのか気になったからか?
いや、違う。
そんな事よりも、直観的に千紘と海斗の間には深い想いがある事を感じ取ってしまったのだ。
その瞬間、まだ中学生の正樹には逃げ出すことしかできなかった。
本当は、過去の後悔を克服するチャンスだったかも知れないのに。
前に進む一歩になったかも知れないのに……
やっぱり自分は、ここでも逃げてしまうのか……
走りながら正樹の脳裏に先ほどの光景が浮かんでいた。
道の角を曲がろうとして、少しだけ後ろを振り返りはっと息をのんだ事を。
目線の先の千紘は、海斗を見つめていた。
海斗はそんな千紘の手を握っていた。
正樹は溢れる涙をそのままに「わぁぁぁ……」と叫びながら走った。
◆
~2021年8月27日~
「ねえ。今日の合コンって大手のハウスメーカーなんでしょ?」
「イケメンが来るって話だよ」
どこかできゃっきゃと女性達の声が聞こえる。
千紘は「え?!」と顔をあげた。
全く見た事のない景色。
自分が座っているのはカウンターだろうか?
そして目の前に広がるのは大きなエントランス。
カウンターの机にはパソコンがあり、画面にはスケジュール表が表示されていた。
ふと隣の女性達を見て、はっとする。
「この制服、見たことがある……」
そして千紘自身もその制服に身を包んでいた。
慌てて周りを確認する。
これからラックに挟む準備中であろう、会社のパンレットが置いてあった。
そっと会社名を確認する。
書かれていたのは、以前、就活の二次面接で落ちた建築資材の商社の名前だった。
「きっと未来に戻ってる……そして、状況が変わってる……」千紘は愕然とする。
海斗の未来はどうなっているのだろう。
そして、マサくんは……
千紘が思いを巡らしていると「ねえねえ。野村さん」と急に話しかけられてびくっとする。
「野村さんは合コン行かないの?」
もう一人の女性が後ろから声を出す。
「ダメだよ~。野村さんは彼氏に一途なんだから。だって中学生の頃から付き合ってるんでしょ? すごくない?」
「本当に?! じゃあもうすぐ結婚??」
全く話の内容がわからず、千紘はあははと愛想笑いを返した。
(どういうこと??)
千紘の頭は混乱していた。
◆
「……」
誰かの話声が聞こえる。
聞き覚えのある、男性の声……
「海斗! 海斗!」
突然声をかけられて海斗ははっとする。
顔を見ると声をかけてきたのは高校時代の部活の監督だった。
海斗は慌てて周りを見回す。
目の前には大きなトラックが広がり、海斗は監督と共にベンチに座っていた。
「どういう事だ?! さっきまで千紘と一緒に石の前に立っていたはず……急に次の日になった? それとも……まさか、未来に戻ってる……??」
海斗は目を動かして、今日がいつなのか、どこかに書いていないか探した。
そんな海斗の様子には気もとめず、監督は静かに話を続ける。
「それにしてもあの時、海斗が中村に声をかけてくれてなかったら、今の中村はなかったと思ってる。あの時俺は確信したんだ。海斗は選手でいるよりも指導者になった方が良いってな。これからもよろしく頼むよ! コーチ!」
監督は海斗の肩をぽんっと叩き、立ち上がって選手たちに声をかける。
「えっっ?! コーチ?!」
海斗は驚いて声を出していた。
そしてやっと理解する。
「これは未来だ。なぜか未来に戻ってきている……千紘は……? 正樹は?」
海斗は慌てて自分のポケットを探るとスマホが入っている事に気がついた。
そっと画面を開き連絡先を表示する。
「あった! 千紘の連絡先は入ってる。正樹の連絡先は……ない……」
そしてそのままメッセージ画面を開くと、千紘とのやり取りの記録が出てきた。
「これは……どういうことだ?!」
海斗は内容をたどって戸惑いを隠せなかった。
その会話は明らかに恋人同士のものだった。
◆
千紘は走って自宅に向かっていた。
仕事は何とか周りに合わせて乗り切った。
帰りの電車の中で、スマホに海斗の連絡先が入っていることは確認できた。
千紘はまずマサくんの状況を知ってから、海斗に連絡をしようと思っていた。
「今日は8月27日。マサくんが今までのままだとすれば、あの石の前に立っているはず」
昨夜見た夢が脳裏をかすめ、不安な気持ちが押し寄せてくる。
それを振り払うように千紘は必死に走った。
息を切らせながら走り、あの角を曲がる。
……と、千紘はぱたっと立ち止まった。
「マサくんがいない……」
あの石の前には誰の姿も見当たらなかった。
「もしかして、マサくんは助かった?!」
千紘は慌てて家の門を開け、家の中に入って行った。
お読み頂きありがとうございました!!!→つづく
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