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第24話 千紘のループ:中学2年生

こんにちは。

頭の中の物語を文字にしてみます。

ラストにたどり着けるように、不定期ですが更新したいと思っています。


よろしくお願いします。


※千紘も成長しています。

~2011年9月2日~


「……夏休みあっという間だった~」

「一緒に帰ろう……」


 ざわざわとした騒々しさが薄れて、だんだんと周りの声が遠くなっていく。

ここは……教室?

千紘は目を開けて自分を見る。

半袖のワイシャツに紺色のプリーツスカート。

中学生だ……!



 すると突然、「ちーちゃん! 帰ろう!」と声をかけられて、千紘ははっとして顔を上げた。

「あ……覚えてる……」

声をかけて来たのは、中学二年生の時のクラスメイトで、仲の良かったさっちゃんだった。


「う、うん……」

千紘は小さく答えて鞄を持った。

立ち上がり、横を見て「あれ?」と声が出る。

もう教室には他に誰もいないのに、前の方の席でうつむいて本を読んでいる子がいた。


「伊藤さん、今日もなんか言われてたみたいだよ……二学期始まったばっかで、ちょっと可哀そうだよね」

さっちゃんが小さな声で言う。

「伊藤さん」という名前には聞き覚えがあった。

「そうなんだ……」と千紘も小さな声で答えた。



 同じクラスの伊藤さんが一部の女子グループから色々言われていることは知っていた。

伊藤さんは大人しく、運動も苦手でいつも一人で本を読んでいる子だった。

常にうつむいている伊藤さんの顔は、長い前髪とおかっぱの髪で隠れてほとんど見たことがない。

めったに発言もせず、言われっぱなし。



「でも……」と千紘は思う。

自分だって同じだ。人と関わるのが苦手で自分の意見が言えず、いつも誰かに合わせてばかり。

人の目を気にして、自分自身を表現するなんてできなかった。



 そして、千紘は思い出す。

一部の女子グループから目をつけられている伊藤さんに声をかける人は減っていった。

当然、千紘も見て見ぬふりをしていた。

伊藤さんはどんどん孤立していき、学校に来なくなったんだった、と。





「さっちゃん、ごめん。今日は先に帰っててもらってもいいかな?」

千紘の言葉にさっちゃんは「え??」と不思議そうな顔をする。

「ちょっとだけ、伊藤さんに話したいことがあって」

えへへと笑いながら言う千紘に、さっちゃんは言った。

「うん……わかった。なんか今日のちーちゃん、お姉さんみたいだね。また明日ね」

バイバイと手を振ってさっちゃんは教室を出て行く。


 さっちゃんの後ろ姿を見送って、千紘は伊藤に声をかけた。

「伊藤さん。ちょっと話していいかな?」


 伊藤さんはびっくりした様子で本から目をあげる。

「なんの本読んでるの?」千紘が聞いた。

「小説……」

「へぇ。どんな話?」

「ファンタジー。魔法使いの国のお話……」

「面白い?」

「うん……本を読んでいる時はその事だけに没頭できるから……」


 千紘はふーんと言って、伊藤さんの隣の席に座った。

「ねえ。伊藤さん。学校楽しい?」

千紘の質問に伊藤さんは「は?!」と小さく言って千紘を睨みつける。

千紘は少し苦笑いをして「ごめんごめん」と言い、続けた。


「私はさ、中学校楽しくなかったよ。いつも人の目ばっか気にして、びくびくしてた気がする。今思い返すと中学生って人間関係が一番きつかったかなぁ」

伸びをしながら話す千紘に「何言ってるの?!」と伊藤さんは怒った様子で言った。


 千紘は笑いながら続ける。

「でもね。長い人生でみたら、中学生の三年間なんてほんの一瞬なんだよ。大人になってから思い出すこともないくらい。あ、恋愛の苦い思い出は思い出すかもだけど……」

「それでもさ、その時は必死なんだよね。この時間が自分の人生の全てのような気がして、みんな悩んで苦しんで過ごしてるんだよね。でも、そうやって過ごしたその時間は、絶対に無駄じゃないと思うよ」


 伊藤さんは「ねえ、野村さんも中学生じゃないの? 何が言いたいの?」と笑って聞いた。

「うーん。何が言いたいんだろうね」千紘も一緒になって笑う。


「生きてさえいれば、あなたの未来は明るいよって言いたいのかな。人はいつからでも変われるんだよ。私だって昨日と今日で全く違う自分になれたんだもん。伊藤さん。あなたはこれからの未来で何にでもなれるよって事を、知っていて欲しいのかも知れない。って、説教くさかった? ごめん」

千紘はあははと笑った。

伊藤さんもつられて笑っていた。

千紘はその顔を見て、こんな笑い方する子だったんだな、と思っていた。



 しばらくしてから千紘は「またね」と言い教室を出た。

廊下を歩いていると、ぱたぱたと走る音が聞こえ、伊藤さんが廊下に飛び出てきた。

「またね!」

その大きな声にびっくりして千紘は振り返り、めいっぱいの笑顔を返して手を振った。





「生きてさえいれば何にでもなれる……生きてさえいれば……」

千紘は歩きながら何度もつぶやいていた。


 千紘はマサくんが消えたあの日からずっと心に引っかかっている不安が、少しずつ形を現してきているような気がして、慌ててその不安をかき消すように頭を振った。

お読み頂きありがとうございました!!!→つづく


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