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第19話 待ち合わせ

こんにちは。

頭の中の物語を文字にしてみます。

ラストにたどり着けるように、不定期ですが更新したいと思っています。


よろしくお願いします。


※予定よりも文字数が増えて長くなりました。

 しばらくして海斗はまじまじと千紘を見つめて言った。

「それにしても……びっくりするくらいの変わりようだね……この未来は」

千紘は「ん?」と聞き返す。


「俺さぁ。実業団に入るっていう選択をする時、千紘が許してくれるかなぁとか、すげー迷ったんだけど……そのこと……ちょっと後悔する……」

そう言いつつ、あははと笑う海斗に、千紘は顔を真っ赤にして言った。

「ちょ、ちょっと! もう!海斗さん! 私だって、あの選択からどう転んだらこの未来になるのか理解できないんですから! 私自身はファーストキスだってまだだっていうのに、結婚・妊娠・出産まで終えちゃったなんて……酷すぎないですか?!」


 その後、二人で大笑いした。

千紘は心の底から海斗とこうして話せるようになった事が嬉しかった。





 亜理紗はモデルホームの二階の窓からふと外を見て、目をみはった。

海斗が普段と全く違うくだけた様子で、楽しそうに話をしている。

「あの子……誰?」



「それで、具体的な日程だけど……」と海斗が話を戻す。

「実は次の土曜日には別の街にある家に帰るって話になってるみたいなんです。実家にいる今じゃないと厳しいと思います」

千紘の答えに海斗は「そうかぁ……」とつぶやき、スケジュールを確認する。


「じゃあ、金曜日にしよう。夜、抜け出せる? 7時くらい」

千紘は頷いた。

「大丈夫だと思います。石は家の隣なので、二階の窓からも見えるし。海斗さんが到着したら、出る感じでも大丈夫ですか?」

「オッケーだよ。まぁ、それまでは……子供との生活を楽しんでよ」

そう言いながら、海斗は赤ちゃんの顔を覗き込む。


「千紘似なの?」

千紘はうーんと考え込む。

「そうなのかなぁ……でも、かと言って、先輩似ではないような気がしてて。この子の顔を見て、いつも海斗さんを思い出してたんですよ。ほら! この笑った顔とか!」

すやすやと眠りながら微笑む赤ちゃんの顔を見て、千紘は無邪気に言い、はっとして顔が真っ赤になる。


 上目づかいで海斗を見ると、海斗も少し顔が赤い気がした。

「す、すみません! 変な意味はないです……から」

千紘はなんて大胆な発言をしてしまったんだろう、と慌てる。

海斗は「いや……」と言ってから小さく続けた。

「正樹を救って、その先に……そんな幸せな未来があったらいいね……」

千紘はよく聞こえず「え?」と聞き返したが、なんだか恥ずかしくなり下を向いた。



「海斗……佐々木さん!」

急に声がして顔を上げると、目の前に亜理紗が立っていた。

「お客様が詳しい話を聞きたいとおっしゃてて、お願いできますか? あっ、奥様も皆さんお待ちですので中へどうぞ」と亜理紗は千紘に促した。


「あ、はい!」と千紘は慌てて答え、中に入ろうとする。

と、海斗が急いで千紘に名刺を渡した。

「また後日、ご相談があればこちらまでご連絡ください」

千紘は「ありがとうございます」と名刺を受け取り、頭を下げてからモデルホームの中に入って行った。



 続いて中に入ろうとした海斗を亜理紗が呼び止める。

「海斗、あの人とどういう知り合いなの? あんな風に話す海斗、初めて見た……」

海斗は「え??」と戸惑う。


「ちょっと昔の知り合いだったんだよ。それだけ。じゃあ、中入るから……」

海斗は手短に答え歩き出す。

そしてふと、千紘といる時だけ自分は素直になれている気がする、と思っていた。





~2021年9月10日~


 千紘は部屋の窓から隣の家との間の石を見下ろした。

まだ海斗は来ていない。


「いよいよ、今日だ」

そうつぶやきながら赤ちゃんの頭をなでる。

赤ちゃんは今日は特に寝つきが良く、ぐずる事もなくすっと眠ってくれた。

「きっとまた、会えるよね……」


 約束の午後7時を過ぎても海斗は現れなかった。

千紘は不安になり、海斗からもらった名刺を取り出す。

「かけても良いかな? 待った方がいい?」しばらく自問自答した後、スマホの番号をタップする。


 5回ほど呼び出し音が鳴ったのち「はい」と会社名を名乗って電話に出たのは女性の声だった。

千紘は予想外の出来事に取り乱しつつも

「先日、住宅展示場でお話を伺った加藤と申しますが……佐々木さんはいらっしゃいますか?」

と何とか言葉を繋いだ。

電話口の女性は丁寧な言葉づかいで

「あいにく佐々木はお客様対応中でして、来週以降に再度ご連絡頂戴できませんでしょうか」と答えた。


 電話を切り、千紘はどうしよう……と座り込んだ。



 海斗は焦って資料のホッチキス止めをしながら亜理紗に聞いた。

「本当にこれって今日中なの?! 俺、ちょっと早めに出なきゃいけないんだけど……」

「海斗ごめ~ん。どうしても明日の展示場のイベントで使うんだって! 手伝ってくれてありがとうね」

亜理紗は海斗に甘ったるい声で言った。


 海斗は必死で作業を進める。

もうすでに千紘との約束の時間は過ぎていた。

「今日ループできなきゃ千紘があの石まで出てくるのが難しくなる……」気持ちばかりが焦っていた。


 約束の時間から1時間が過ぎた頃、何とか作業を終わらせて海斗は急いで帰る準備をした。

「海斗! 本当にありがとう。今日はお礼に一緒に飲んで帰ろうよ!」

亜理紗が言った。

「ごめん。今日はどうしてもすぐ行かなきゃいけない所があるんだ」

亜理紗の顔も見ずに答える海斗に向かって、亜理紗が言った。

「それって……この前の住宅展示場で会った子の所?」

「え??」と海斗が振り返る。

「さっき会社携帯に電話あったけど、今日は佐々木は行けませんって言っといたよ」


 その言葉を聞いた途端、海斗は思わず亜理紗に詰め寄った。

「何ですぐに教えてくれないんだ!!」

珍しく荒々しい大きな声を出した海斗に、フロアに残っていた他のスタッフも驚いて振り返る。


 亜理紗はつぶやくように小さな声で言った。

「そんなに大事な人なの? 人妻でしょ?!」

海斗は一旦、亜理紗を椅子に座らせて自分も席につく。

「大きな声出してごめん」

そしてゆっくりと言った。

「昔から見守ってた子なんだ。親友の大切な子なんだ。でも……」


 海斗は千紘の顔を思い浮かべながら確信していた。

「あぁ、そうだ。もう正樹の事は抜きにして、千紘は自分にとって大切な人になってるんだ」と。


「ごめん、亜理紗。君の気持ちは何となく気がついていたけど……あの子は、俺にとってかけがえのない大切な人なんだよ。だから、行かなきゃ」

そう言うと、海斗は駆けだしていた。

お読み頂きありがとうございました!!!→つづく


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