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第1話 プロローグ

こんにちは。

頭の中の物語を文字にしてみます。

ラストにたどり着けるように、不定期ですが更新したいと思っています。


よろしくお願いします。


※1作目と全く違うジャンルで挑戦です。無事に書ききれますように!

「この石にはきっと神様が宿ってるんだよ」


「このことは二人だけの秘密にしよう」



「大人になっても忘れないで。絶対だよ」


「うん。約束」





 千紘(ちひろ)は声にならない声を叫び続けた。


「だめ! 行かないで! そっちに行っちゃだめ!!」


 必死に走って駆け寄ろうとする。

それでもいくら走っても走っても身体は動いてくれなかった。

もがいてもがいて、進めない道をかき分けるように両手を動かそうとした。

まるで水の中を走っているかのごとく、身体は重く思い通りにならなかった。



「やめて……!!」



 千紘の声にならない悲鳴と同時に大きな衝突音が聞こえ、目の前が真っ白になった。

千紘はうわごとのように繰り返した。


「必ず助けるから……次は必ず助けるから……」





~2021年8月26日~


 うだるような暑い日。ガンガンにきいた冷房の風にさらされながら野村 千紘(のむら ちひろ)はパソコンに向かっていた。毎日、あまりに凍えそうになるため冬物のカーディガンを羽織り、ひざ掛けまで用意している。

冷房の設定温度をいつも限界まで下げる張本人が千紘に言った。


「あ~君。お茶!」


 いつものだみ声が聞こえ、千紘は心の中ではぁ……とため息をつく。

またいつもの「お茶」だ。なぜ「お茶ください」までが言えないんだ……

心の中、悪態をつきつつも、振り返る顔はいつも笑顔だ。


「は~い」


 どすどすと足を踏み鳴らしながら給湯室に向かった。

「ったく。毎日毎日、ほんっと頭にくる。そうでしょ? 千紘ちゃん」

先に給湯室にいた先輩の田中 明美(たなか あけみ)が言った。

「あはは~。さすがにそろそろ名前を呼んで欲しいですよね」と千紘は愛想笑いをした。


 千紘は手早く部長のお茶を注ぐ。

ここで明美と話し込んでいるのがバレると、また何を言われるかわかったもんじゃない。

「失礼しま~す」と給湯室を後にした。



 部長のデスクにお茶を置く。

部長は顔も上げずに「あ、そうそう。この見積もり作っといて」と、千紘に手書きの紙を渡した。

「は~い」千紘は愛想よく答え席に戻る。


 と、後ろで部長の独り言が聞こえてくる。

「最近の若いのは返事もなっとらん。『はい!』と、すぐに言えんのか!」


 千紘は心の中で「聞こえてるっつーの!!!」と言った。

そして「自分の態度を棚に上げて、よく言えるよ」と、鼻をふんとならした。





 野村 千紘 24歳。大学生の時、就活に失敗し、今は派遣社員として働いている。派遣先の会社は大手のハウスメーカーで、仕事内容は営業事務。「営業事務といっても正直、雑用係だな」と常日頃、千紘は思っていた。

直属の部長はあの通りの横暴なおじさん。「自分でやれ!」と何度叫びだしたくなったかわからない。


 会社は大手なだけあって、千紘の他にも派遣社員は多く働いていた。ただ、千紘のように新卒派遣は珍しく、大体が年上の女性だった。

千紘は年齢も一番年下であり、性格も人にあまりはっきりものが言えず、周りに合わせる事が多いタイプのため、社内では常に波風立てないようにやり過ごしていた。

他の人は千紘の事を「大人しく感情を見せない、付き合いづらいコ」と思っているようだった。



 学生時代の友達は希望の企業に就職し、生き生きと仕事をしてるように見えた。

「きっと今が一番やる気に満ちてて、楽しい時期なんだろうな」と思う。


「でも自分は?」


 周りに気を使って、言われた仕事をひたすらこなすだけの毎日。挙句の果てに、名前さえ呼んでもらえない。若い社員達も、社員と派遣は別、と境界線を引いているように見えて悲しかった。

自分も正社員で就職していたら、あんな風に仲間と一緒に喜んだり苦しんだりして仕事していたのだろうか。



「自分の人生は後悔の連続だ……」と千紘は思う。



 世の中の他人はあんなにも描いた夢の通りに過ごしているのに、自分は何か重大な選択の時にいつも失敗しているのではないかと思っていた。

この選択を間違えなければ、全く違う人生を歩んでいたのではないか、と。


「過去に戻れるなら、もう一度選びなおしたいよ……」

千紘はそうつぶやいた。

お読み頂きありがとうございました!!!→つづく


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