第18話 変わりすぎた未来
こんにちは。
頭の中の物語を文字にしてみます。
ラストにたどり着けるように、不定期ですが更新したいと思っています。
よろしくお願いします。
※激変した未来の続きです。
〜2021年9月4日〜
千紘は寝不足でぼーっとした頭を無理矢理持ち上げて起き上がる。
そしてふと隣ですやすやと眠る小さな人を見つめた。
千紘は今日も夜中に何度か起きていた。
夜泣きだけじゃない。
この小さな人の命が自分一人の手にかかっていると思うと、急に不安感に襲われ飛び起きる事もある。
突然息をしなくなるんじゃないかと、何度も目を覚ましては様子を確認する日が続いていた。
こんな時、誰かが隣で寝ていてくれたら不安も少しは和らぐのかな、と千紘は思ったりしていた。
自分の子供だという実感はない。
何も経験していないのだからそうなのかも知れない。
それでもお世話のひと通りは、なぜか身体が覚えていて自然にできていた。
あれから少し調べて、夫はサークルの先輩の加藤 健太、この子は涼太という名だとわかった。
どこでどうなったかわからないが、あの遊園地の一件以降に先輩と付き合うようになり、千紘の大学卒業と同時に結婚。
今は別の街に住んでいて、時々子供を連れて実家に帰っているようだった。
未来に戻って来てからもう一週間以上経っているが、この生活では海斗がどこにいるのか、探しに行くことも出来ない。
自由に歩き回る事もできず、いたずらに時間ばかりが過ぎ、千紘は困り果てていた。
「はぁ~。どうしたらいいんだろう……」
スマホの連絡先を見ても、海斗の情報は入っていなかった。
ふと下の階が騒がしくなり、誰か来客があったような声がする。
千紘は特に気にもせず、着替えて赤ちゃんのオムツを確認していると、ノックの音と同時にガチャッと扉が開いた。
千紘は驚いて思わず飛び跳ねてしまった。
「驚かせちゃった? ごめんね」と入って来たのは先輩だった。
そして赤ちゃんを見て「涼太~会いたかったよ~」と顔を近づけている。
千紘はその様子を見て「あぁ……本当に先輩が父親なんだ……」とがっくりする。
そしてそんな自分の気持ちに気がつき、少し驚いていた。
「千紘は変わりない? 体調はどう? 今日は住宅展示場に行くから準備できたら出発しよう。俺、オムツの準備とかしとくね」
そう言って先輩は部屋を出て行った。
◆
住宅展示場に向かう車内では父も母も上機嫌で、先輩と楽しそうに話をしていた。
「この状況を歓迎していないのは、私だけだ……」と千紘は罪悪感に押しつぶされそうだった。
会場に着き地図を確認する。
「二世帯の物件は5番と8番ね!」母の言う番号の案内図をチラッと見て、千紘ははっとした。
5番の物件は千紘が働いていたハウスメーカーのものだった。
「もしかしたら……」
そう思いながら家族と一緒に5番の場所に近づく。
「こんにちは。ご案内しましょうか?」と声をかけて来たのは亜理紗だった。
千紘は亜理紗の姿を見て「きっと海斗さんがいる!」と、慌てて周りを見渡す。
……と、少し離れた所から、なんとも言えない面持ちで近づいて来たのは海斗だった。
「海斗さん……!」
千紘の声に気が付いたのか気が付いていないのか、海斗は千紘の隣に静かに立った。
家族は亜理紗に連れられて中に入っていく。
その様子を見送った後、千紘はゆっくりと海斗を見上げてぎょっとした。
海斗は明らかに不機嫌な顔つきになっている。
そして静かに海斗が口を開いた。
「ちょっと……何なの?! この状況……」
「わ、私だって、なんでこんな未来になっちゃったのか全然わからないんですってば!!」
千紘は慌てて弁解した。
「過去に戻ったら人生初めてのデートの日だったんです……それで前と同じように振られればいいと思って、でもちょっとムカっとしたから言い返しちゃって……そしたら逆に振っちゃったんです!」
「振っちゃったのに、未来では結婚?! しかも子供?!」
呆れながら言う海斗の声には棘がある。
千紘は「ほんと……過去を変えても未来がどうなるかなんて、予想つかないんですね……」とため息混じりに答えた。
そんな千紘の姿を見て、海斗はぷっと笑っている。
千紘はいくらかほっとして言った。
「そういえば海斗さんが住宅展示場にいるのって珍しいですね。普段は建材の商社回りの営業なのに……」
海斗は、まあねと言ってゆっくり話し出した。
「俺が戻った過去は、大学の監督から実業団入りを勧められてる場面だったんだ……前も散々悩んだはずなのに、今回もやっぱり迷ってさ……ここの会社の陸上部社員として入る選択をしたんだよ。やっぱり挑戦してみたくて」
千紘は「えっ!」と驚いて聞いた。
「じゃあ今は陸上をしつつ仕事ですか?」
「それがさ……」海斗はふっと笑いながら言った。
「今年いっぱいで廃部だって。経営が苦しくて続けられないんだと」
海斗の寂しそうな横顔に「そんな……」と千紘も泣きそうな顔になる。
海斗は千紘の方を向き、頭をぽんと触って言った。
「ほんと、未来がどうなるかなんて、予想がつかないね」
「でも……」海斗は千紘を見つめて言う。
「これでループの事はわかった。千紘……また戻るよ」
「はい!」千紘は勢いよく答えてから、「あ……」としばし下を向く。
「この子の存在は消えてしまうんでしょうか……」
抱っこ紐で眠っている赤ちゃんをぎゅっとして千紘は聞いた。
自分の中にも母性というものがあるのだろうか、と思いながら。
「うーん……正直言ってわからない。けど、過去も未来も見て俺が感じたのは、存在自体が消えてる人はいないってこと。俺の言葉は気休めかも知れないけど、きっとその子も、いつかは生まれる存在なんだと思うよ」
千紘は海斗の言葉を聞き、顔を上げもう一度「はい!」と力強く答えた。
お読み頂きありがとうございました!!!→つづく
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