第14話 マサくんの行方
こんにちは。
頭の中の物語を文字にしてみます。
ラストにたどり着けるように、不定期ですが更新したいと思っています。
よろしくお願いします。
※マサくんと染田くんがつながります。
「どうぞ……」
マサくんの母親がテーブルにお茶を出した。
千紘と海斗は並んで応接間のソファに腰を下ろす。
家の中はしんとして音がなく、とても静かだった。
壁には写真が飾られていた。マサくんが写ったものばかりだったが、どれも子供の頃の姿だった。
「懐かしいわね。何年ぶりかしら。ちーちゃんも素敵な大人になって……」
そう言っておばさんは微笑んだ。
千紘はえへへと照れ笑いする。
「そちらは?」とおばさんが海斗を見て聞いた。
「あの……佐々木海斗さんです。会社の先輩なんですけど、マサくんの友達だったって知って……」
千紘がそう答えると、おばさんはふと海斗を見て「もしかして……」と言った。
「マサが言ってた公園で知り合ったって人かしら? 一緒の高校に行きたいって言って!」
海斗も「そうです!」と嬉しそうに答える。
「そう! 会えて嬉しいわ。あなたにはずっとお礼を言いたかったの……マサが前を向くきっかけを作ってくれた人だから……」
おばさんはそう言いながらうつむいた。
千紘は「あの。それでマサくんは今……」と聞いた。
おばさんはふっと口元だけ微笑み首を振る。
「この家にはいないの……」
「実家を出たって事ですか……?」
「そうね。正確には、どこにいるのかわからないの……」
千紘と海斗はその言葉にはっとして目を合わせる。
おばさんはゆっくりとその日の事を話し出した。
◆
あの日……
マサは突然ふらっと「出かけてくる」と言ったの。
「どこへ?」と聞くと「前の家」と答えた。
私はびっくりして「急にどうしたの?!」と聞いたわ。
マサは笑いながら「ちーちゃんに会ってくるよ」って言ったの。
「ずっと後悔してるから、先に進むためには、ちゃんと伝えなきゃいけないんだ」って。
マサはこっちに引っ越してきてからずっとふさいでたわ。転校した小学校にも馴染めず、休みがちだった。中学生になって、学校には行くようになったけど、常に何かを考え込んでいる様子だった。それを私にもマサの父親にも一切教えてくれなかった。
そんなある日、マサが急に「友達ができた!」って明るく言ったの。
走るのが速くていつも公園で練習してる子だって。高校もスポーツ推薦で行くんだよ、僕も同じ高校に行きたいって言ってね。
私も主人もマサが久しぶりに笑ったその姿が嬉しくって嬉しくって……
「どこの高校でもいい。がんばりなさい。応援するから!」って泣きながら言ったわ。
それからはだんだん明るくなっていくマサを見守ってた。あの日まで……
「前の家に行く」って出て行ったあの日、マサが帰ってくる事はなかった。
夕方、警察から電話が入った。マサの鞄が道路に落ちてたって……
私は慌てて警察署に向かった。
そこで聞いた話は、にわかには信じられないものだった。
マサが……「消えた」って言われたの。
横断歩道に信号無視のトラックが突っ込んだって。
そしてマサにぶつかった……
見ていた人は大勢いた。もちろん運転手も。
でも……道にはマサの鞄だけが落ちていた。
そしてその日から、マサは帰って来ないの……
◆
千紘と海斗は息を呑んでその話を聞いていた。
「マサくんが、私に会いに来てた?そして消えた……」
「それって、日にちはいつですか?」千紘が聞いた。
「2013年8月27日よ。そこから私たち夫婦の時間も止まってしまったわ……」
おばさんの目から涙がこぼれた。
「8月27日……?!」
千紘はつぶやく。
ループした過去から戻る日にちも必ず「8月27日」
(マサくんが消えた日と同じ日だったんだ……)
千紘は染田の姿を思い出しながら聞いた。
「あの、マサくんの高校生の頃の写真ってありますか?」
「入学式の時の写真がこれ……緊張してる顔ね」
おばさんが愛おしそうに見つめるその写真を覗き込み、千紘は目をみはった。
そこに写っていたのは背の高い華奢な男の子だった。深緑色のブレザー、チャコールグレーのズボン、緑色のチェックのネクタイ姿。黒髪と黒目がちな瞳。
緊張した様子ではにかんでいるその肌は、染田の透き通るように白い肌とは違い、色白だが健康的だった。
「あぁ……染田くんだ……」
千紘の声に「えっ??」と、おばさんは聞き返す。
千紘はしばらく下を向いて黙り、考えていた。
――無理かも知れない。無謀かも知れない。
それでも……可能性がある限り、私はマサくんを救いたい。マサくんはきっと私に助けを求めてる。
その想いが溢れた時、千紘は声に出していた。
「おばさん。もしかしたらマサくんに会えるかも知れません。一つだけ方法があるんです。たぶん……」
千紘の言葉に、おばさんと海斗の二人が「え?!」と声を出す。
「ただ、救い出せるかは……私にもわかりません。少し時間をもらえませんか?」
千紘の真剣な顔に、おばさんは何度もうんうんと頷いて、千紘の手をぎゅっと握った。
「もう何年も、私たちの時間は止まっているの。ほんの少しでも可能性があるのなら、ちーちゃんにお願いしてみたいわ」
◆
マサくんの家を後にして、海斗とバス停に向かう。
すでに時間は夕方になっていた。オレンジ色になった光を浴びながら、海斗が口を開いた。
「一つだけ方法があるって、どういう事?」
千紘は前を向いて答えた。
「自信はないんです。でも……今まで私が染田くんから聞いたことや、体験した事、佐々木さんから聞いた話を合わせると……」
千紘は海斗に向き直って言った。
「マサくんは過去に戻る方法を、見つけたんだと思います」
お読み頂きありがとうございました!!!→つづく
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