第11話 海斗の回想
こんにちは。
頭の中の物語を文字にしてみます。
ラストにたどり着けるように、不定期ですが更新したいと思っています。
よろしくお願いします。
※海斗くんの思い出話の回です。
休憩から上がる直前、千紘はだめもとで海斗に教えてもらった高校に電話を入れてみた。
「知り合いがそちらの高校に通っているのですが、会いたい場合呼び出していただくことは可能ですか?」
「申し訳ございませんが、部外者の方にそういった対応はできかねます」
千紘はふうとため息をつき電話を切る。
「まぁ、当然の対応だよね」
どうしたものかと、千紘は空を見つめていた。
◆
海斗はミーティングの席でぼんやりと思い出していた。
(確か、初めて出会ったのは中学3年生の時……)
◆
海斗は中学で始めた陸上で芽が出て、大きな大会で結果を出していた。
本格的にマラソンをするために、陸上の強豪校から呼ばれ高校はスポーツ推薦で入学を決めていた。
かなり早い段階で入学が決まっていたため、周りが受験勉強しているのを横目に、放課後は一人でトレーニングする事も多かった。
夏休み前のある日、海斗がいつものように公園で柔軟体操をしていると、一人の中学生らしき男子がベンチに座るのが見えた。
その日から、何度も海斗はその子を見かけるようになった。
その子は何をするでもなく、いつもベンチに座りぼーっと空を見上げていた。
(家に帰りたくないのかな……?)
海斗はだんだんその子の事が気になるようになり、その日ついに声をかけた。
「いつも放課後ここにいるけど、何してるの?」
その子はぼんやりと海斗を見て、ゆっくりと言った。
「過去に戻る方法を考えてるんです」
「は? え? なにそれ?」
突拍子もないその子の答えに、海斗は(変な子だな……)と思い、すぐにその場を離れていた。
でも、その日以降、その子は海斗に話かけてくるようになり、だんだんと二人は打ち解けていった。
「名前は? 中学生?」
「名前は正樹。中二。でも、学校はあんまり行ってないんだ。あなたは?」
「俺は海斗。中三。どうして学校に行かないの?」
正樹はうーんとしばらく考えて言った。
「いろいろ考える事が多くて。忙しいから……かな」
海斗はそういえば、と
「前に過去に戻る方法を考えてるって言ってたけど、もしかしてタイムマシンとか発明してるの?!」
映画で観たタイムマシンを思い出し、少し茶化すようにそう言った。
正樹は至ってまじめな顔で
「タイムマシンじゃないよ。精神を過去に飛ばすんだ」そう力強く言った。
「へ……へぇ……」海斗はよくわからずそう答えた。
「ねえ。海斗はものすごく後悔した事ってある?」
ある日、正樹に質問され、海斗は頭を悩ませる。まだ中学生、人生15年程で「後悔」なんて言葉を考えた事すらなかった。
正樹はつづけた。
「僕はね。ものすごく後悔した事があるんだ……。その後悔が僕の中に重い塊になってずっと心の中にある。その日からずっと時が止まったまま。だから過去に戻りたいんだ」
そう空を見上げながら話す正樹の顔を見て、海斗はたまらずに叫んでいた。
「そんな後ろ向きじゃもったいないよ! どれだけの後悔かわからないけど、時間は前にしか進まないんだよ! もっと前を見ろよ!」
正樹はとても驚いた顔をしていたが、その日以来、正樹は様子が変わっていった。
よく笑うようになったし、高校は海斗と同じ学校に行くと受験勉強もするようになった。
同じ高校に通うようになり、高校生活を楽しそうに過ごしている正樹の様子を見て、海斗はこれで安心だと思っていた。
でも、海斗が高校三年生、正樹が高校二年生のあの日以来、海斗が正樹に会う事は二度と訪れなかった。
正樹から「海斗に一緒についてきて欲しい所があるんだけど……」と言われていたあの日。急遽、推薦で入学が決まっていた大学の練習に参加することになってしまい、待ち合わせに行けなかった。
その日以降、正樹は学校に来なかった。
正樹のクラスの同級生に聞いて回ったが「引っ越したらしい……」とか「いなくなったらしい……」とか、はっきりしない答えだけが返って来た。
(正樹……どこに行っちゃったんだよ……)
海斗は何とか正樹を探そうとしたが、手掛かりは何もつかめなかった。
◆
あの出来事依頼、海斗は社会人になってもずっとやるせない気持ちを抱え続けている。
そして海斗は、ある日の正樹の言葉を思い出していた。
その日正樹は突然、海斗に会いに来た。
海斗が高校二年生、正樹が高校一年生の時だったと思う。
その日だけ、正樹はなぜかとても大人びていた。
高校一年生とは思えない顔つきで、突拍子もなく話をしだした。
「海斗にお願いがあるんだ。どうしてもこのお願いだけは聞いて欲しい。いつか僕がいなくなる時が来たら、この子の事を見守ってあげて欲しい。時々様子を見に行くだけでいいから」
「とても優しいけど、弱い子なんだ。自分に自信がなくて、前に進めない。本当は僕がずっと見守ってあげたかった。でも、子供すぎる僕には何もできなかった。お願い。海斗にしか頼めないんだ」
そう言うと、名前と住所が書いている紙きれを海斗に渡した。
海斗がその紙を受け取ると、正樹は急に今までの正樹の顔つきになり、「どうしたの?」と聞いて来たのだ。
海斗は手帳にはさんである、もう何度も見てぼろぼろになった古いその紙きれをそっと広げる。
そこには鉛筆で「野村 千紘」と名前が書かれていた。
お読み頂きありがとうございました!!!→つづく
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