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妹でもヤンデレでも幽霊でも、別にいいよね? お兄ちゃん? ~暑い夏に、幽霊×ヤンデレで[ヒンヤリ]をお届けします!~(完結)  作者: 熊吉(モノカキグマ)
第五章「梅雨」

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5-5:「異種混合戦」

5-5:「異種混合戦」


 副部長の号令で、6人の薙刀なぎなた部員たちは一斉に気合の声をあげ、丈士に襲いかかって来た。


 手加減はしないという副部長の言葉通り、薙刀なぎなた部員たちは最初から全力だ。

 木製の薙刀なぎなたの切っ先が、丈士ののどを狙って突き入れられる。


 突きは様々な攻撃方法の中ではもっとも出が早く、対処が難しい技だったが、同時に、剣道や薙刀なぎなた道で突きが有効となる部位はのどだけで、正確な狙いを要求される、攻める側も受ける側も難しい技だ。

 だが、薙刀なぎなた部の部員たちの突きは正確で、6本の薙刀なぎなたの切っ先がほとんど同時に丈士の喉笛のどぶえを貫こうとする勢いだった。


 防具をつけるのはずいぶん久しぶりだったが、身体がまだ動き方を覚えていたらしく、丈士はかろうじてその攻撃をかわすことができていた。


 同時に、丈士は戦慄せんりつする。


(殺意がたけェッ!? )


 突きは、難しいだけでなく危険な技でもあるのだ。

 防具はきちんとのども保護できるようになっているが、くり出す者の体重ののった突きは重く、その衝撃は首筋にまでごく当たり前のように達する。

 6人もの突きが一斉に丈士ののどに入れば、ダメージは相当なものになるだろう。


 突きをどうにかかわした丈士は、周囲を素早く見渡し、この状況への対処をどうするかを考える。


 薙刀なぎなた部からの要求を飲めない以上、丈士は6人を相手に戦って勝たなければならないのだが、状況は最初から丈士に不利だった。

 人数で大きな差がある上に、丈士はすでに6人の薙刀なぎなた部員によって包囲されている状況にある。

 そして、背後は壁で、逃げ場がない。


 しかも、薙刀なぎなたは、打刀うちがたなを模した竹刀よりもずっとリーチが長く、丈士の攻撃が届かない距離から一方的に攻撃することができる。

 そもそも、薙刀なぎなたとはそういう目的で作られた武器なのだ。


 まずは、この、包囲された状況を脱しなければ。

 そう考えた丈士は、薙刀なぎなた部員たちが丈士を再度攻撃するべく薙刀なぎなたを引いてかまえなおした瞬間を狙って、左側に向かって突進していた。

 包囲の一画を切り崩してその裏側に出ようとしたのだ。


 普通に戦う分には、リーチの長い武器の方が有利になりやすいのだが、一度懐ふところに飛び込んでしまえば、長柄ながえの武器は反撃できないという欠点もある。

 本来であればその、薙刀なぎなたが使えず、竹刀が届く間合いに入るのが大変なのだが、今回の場合は最初からお互いの間合いが近かったために、相手のふところに飛び込むことは難しくなかった。


「わっ、こっち来た!? 」


 そして、運がいいことに、丈士が突っ込んだ側にいた薙刀なぎなた部員は、比較的経験の浅い新入生であるようだった。

 その部員はたじろぎ、悲鳴のような声をらしながら丈士の足を払おうと薙刀を振るったが、丈士はそれをジャンプしてかわし、降下する勢いも利用して竹刀をその部員の頭上へと振り下ろしていた。


「面! 」


 ズバン、と小気味の良い音が響き、竹刀で面を打たれた薙刀なぎなた部員はよろめく。

 ジャンプした勢いが加わっていたおかげで、丈士の攻撃を受け止めきれなかったのだろう。


 丈士はその部員のすぐ脇に着地すると、すり足で素早く駆け抜け、薙刀なぎなた部員たちから距離を取った。


(まずは、包囲を抜けた! )


 だが、丈士のピンチは終わりではない。

 十分距離を取った丈士が背後を振り返ってかまえを取り直すと、残りの5人の薙刀なぎなた部員たちが丈士を追って襲いかかって来たからだ。


 だが、さきほどまでの状況よりはずっと対処がしやすかった。

 何故なら、半円状に丈士を取り囲んでいた薙刀なぎなた部員たちは、その包囲の端を破った丈士を追いかけて、今、一直線に並んでいるからだ。


 つまり、一時的にだが、1対1で戦える状況が出来上がっていた。


「キエエェエエエッ! 」


 先頭を突っ込んできた薙刀なぎなた部員が奇声をあげながら丈士の面を狙うが、丈士はそれを竹刀の根元で受け、つばも使ってそれを弾きながら、まっしぐらに前進した。

 1か所で戦っていてはまた包囲されるのが目に見えているので、一撃打ち合ったらその相手を気にせずその後方に走り抜け、次の1人と戦い、そのまま最後尾まで駆け抜けるべきだと丈士は考えていた。


 2人目の部員はまた丈士に向かって突きをくり出して来たが、丈士を急いで追いかけてきたせいか狙いが甘く、丈士は逆に相手の籠手こてを狙い、丈士に竹刀で籠手こてを打たれたその部員は衝撃で手から薙刀なぎなたを取りこぼす。


 3人目は、丈士に啖呵たんかをきった副部長で、丈士の足元を狙って薙刀なぎなたを低く振って来た。

 剣道では脚を狙うことはなく、防具もつけていないので当たれば直接丈士の足にダメージを与えることになる、容赦ようしゃのない攻撃だった。


 だが、相手がそういうことを平気でしてくるのなら、と、丈士は自身の足の裏で副部長の薙刀なぎなたを踏みつけて攻撃を受け止めた。


「んなっ!? ひ、卑怯ひきょうな! 」

「うっさい! 6人がかりのクセに! メン! 」


 非難する口調の副部長の面をバシンとしないで叩くと、丈士は彼女の背後へと走り抜け、4人目の相手へと向かう。


 [音寺]という文字が丈士の目に入る。


(ゆかりちゃんかっ! )


 丈士は間合いを詰めながら、双眸そうぼうを鋭く細めていた。


 おそらく、今回のこの状況の首謀者は、ゆかりだ。

 元々、丈士に好意的ではなかったが、ゆかりがまさかこんなことを仕組んで来るとは思ってもみなかった。


(こらしめてやる! )


 丈士は、ゆかりに対して怒っていた。

 確かに丈士に満月に対する下心がないかと言えば、あるのだが、こんなことをされるほどのことではないと思うのだ。


 丈士はゆかりのどんな動きにも対応できるように意識を集中したが、しかし、ゆかりは薙刀なぎなたを使わなかった。


 ただ、彼女は薙刀なぎなたを持つ手の指を小さく動かし、ぼそぼそと、自分以外の誰かに聞こえないように何事かを呟く。


 その瞬間、丈士の足が、見えない何かの力によってすくわれた。


 武道場の床はきれいに掃除されていて、踏んづけて足をすべらせるようなものは何もなかったはずなのに、丈士はその場で滑って転んだ。


(くそっ! 何か、されたのかっ!? )


 とっさに受け身を取り転んだ衝撃を吸収し、素早く立ち上がろうとした丈士だったが、すでに戦いの決着はついていた。


「動かないでください! 」


 丈士の喉元に、勝ち誇ったような声とともに、ゆかりの薙刀なぎなたの切っ先が突きつけられていたからだ。


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