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妹でもヤンデレでも幽霊でも、別にいいよね? お兄ちゃん? ~暑い夏に、幽霊×ヤンデレで[ヒンヤリ]をお届けします!~(完結)  作者: 熊吉(モノカキグマ)
第四章「神事」

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4-3:「幽霊騒ぎ」

4-3:「幽霊騒ぎ」


「ごちそうさまでした! 」

「……ごちそう、さま」


 やがて食事を終え、丈士と星凪がそう言いながら合掌がっしょうすると、満月は嬉しそうに、少し誇らしそうに「おそまつさまでした」と言った。

 料理が好き、と言っていたが、自分ではない誰かに作って喜んでもらうのも嬉しいのだろう。


「それでは、後片づけをしちゃいますね! 」

「ま、まぁ、ちょい待ち、満月さん」


 テーブルの上の食器をまとめて立ちあがろうとする満月を、丈士が慌てて呼び止める。


「思ったんだけどさ、こんだけうまいものを作ってもらって、後片づけまでしてもらうのって、やっぱ申し訳ないよ。オレも、おかげさまで元気になったし、これから片づけとかは、オレにやらせてください」

「え? で、でも、別に、こんなのついでですから……」

「いえ、ぜひ、やらせてください。……ほら、この通り、オレ、だいぶ元気ですから! 」


 迷っているような様子の満月に、丈士が両手で元気をアピールするようなポーズをとると、満月は「それじゃぁ、お願いしますね」と言って食器をテーブルの上に戻した。


「実は、また幽霊関係の依頼が入ってきてしまっていまして。ちょっと忙しくなりそうなんです。これから調査に行こうかな、と」

「えっ? また、幽霊騒ぎが? 」


 高原稲荷神社の巫女として、霊的な事件に対処するだけの実力と知識を持つ満月のところには、霊に関係する依頼がよく舞い込む。

 そして、その多くは、満月が暮らしている高原町や、その近隣で起こっている事件だ。


 丈士にとっても、無関係とは思えないことだった。

 幽霊3人組に襲われた時も、霊たちが丈士と星凪を襲うために活動を活発化させたために満月に多くの相談がよせられていた。

 今度も自分たちが霊のターゲットにされているとまでは考えにくいことだったが、幽霊である星凪と一緒に暮らしている以上、何らかの形で巻き込まれる可能性はあった。


 それに、あまり満月の優しさに甘えるのも申し訳なかった。


「そ、それなら、今度からわざわざメシを作りに来てくれなくても大丈夫ですよ。この通り、オレもだいぶ回復しましたし、1人でも何とかやっていけると思います」

「いえ。これは、何と言われようとも続けるつもりです」


 しかし、満月は断固とした口調でそう言い、丈士はそれ以上、強く言い出せなかった。

 よく話すようになって分かったことだったが、満月には、一度決めたことは最後まで曲げないという、頑固なところがある。

 丈士と星凪のことも、関わると決めたことなのだから、最後まで関わり続けるつもりでいるのだろう。


「そ、それなら、せめて、何か手伝わせてもらう、とかは……? 」


 だが、やはり、一方的にお世話になりっぱなしではいけない気がする。

 そう思った丈士はそう言うと、ちらりと星凪の方へ視線を向けてから、満月に視線を向けなおして言う。


「その、こっちには星凪っていう本物の幽霊だっているわけですし。霊だから分かること、っていうのも、あるんじゃないかと思うんですけど」

「ちょ、ちょっと、お兄ちゃん!? あたしに、1人で手伝いに行けって言うの!? 」


 丈士の言葉でその意図を察した星凪が、慌てて丈士に詰めよった。


「そ、そんなっ、嫌だよ! お兄ちゃんと離れて行動するなんて! それに、あたしが何かしたら、またお兄ちゃんが……っ! 」

「星凪が何か霊的な力を使わなけりゃ、多分、大丈夫だって。オレも、しっかりメシを食って、健康的な生活をするようにするからさ。な? 満月さんに協力してやってくれよ? 」

「で、でもっ! ……ぅ~っ」


 星凪に向かって片目をつむりながら拝むようなしぐさをする丈士に、星凪はもどかしそうにうなり声をあげた。


 丈士のお願い、ということもあるし、星凪自身、満月に対する敵愾心てきがいしんや警戒心が消えたわけではなかったが、自分や兄を助けるために手をつくしてくれている満月に対して恩も感じているのだ。

 丈士と離れ離れになるのは星凪としては絶対に嫌だったが、断りづらそうな様子だった。


「ぅぁぁぁぁぁっ! や、やっぱり、ダメ! できないっ! 」


 やがて、星凪は頭を抱えながら叫んでいた。


「お兄ちゃんと離れるとか、絶対に無理! いやだいやだいやだいやだぁっ! 」


 葛藤の末に幼児退行し、床の上でジタバタと暴れ出す星凪のことを見おろしながら、丈士は「しかたないな」とでも言いたそうにため息をついた。


「分かった。星凪」

「……ふへっ!? お兄ちゃんっ!? 」


 丈士のその言葉に、星凪は驚き、嬉しそうな顔をするが、丈士の言葉には続きがあった。


「オレも行く」

「そ、そんなっ、無理しないでください! 」


 その丈士の言葉に、今度は満月が驚いていた。


「丈士さんは、少しでも体力を温存するようにしていただかないと! それに、もし霊たちと何かがあったら……! 」

「でも、満月さんにここまで面倒見てもらってるんだ。それなのにこっちは何もしないって言うんじゃ、あんまり申し訳なくて、居心地が悪くていられないよ」


 だが、丈士はゆずるつもりはなかった。

 満月はなおも丈士が幽霊騒ぎの調査に同行することに反対であるようだったが、断固とした決意の表情を浮かべている丈士に気圧され、強く反対できないようだった。


「大丈夫さ。散歩みたいなもんでしょう? オレは適当についていくだけで、あとは星凪が満月さんの調査に協力する。変に星凪が力を使わなければ何も起きない、でしょ? 」

「そ、それは……、そうかも、しれませんが……」


 重ねて強い口調で手伝いを申し出る丈士から視線をそらしながら、満月は困ったような表情を浮かべる。

 だが、丈士は躊躇ちゅうちょせず言葉をつづけた。


「ちなみに、場所は? 」


 その丈士の態度に、満月もこれ以上反対しても無駄だと思ったのか、小さくため息をつき、それからそらしていた視線を丈士へとまっすぐ向けなおした。


「それほど遠くではありません。……太夫川、です」


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