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妹でもヤンデレでも幽霊でも、別にいいよね? お兄ちゃん? ~暑い夏に、幽霊×ヤンデレで[ヒンヤリ]をお届けします!~(完結)  作者: 熊吉(モノカキグマ)
第二章「霊能アイドル」

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2-12:「時間をかけて」

2-12:「時間をかけて」


「じっ、時間をかけて、考えましょう! 」


 深刻そうな表情で黙り込んでいる丈士に、満月は両手を慌てたようにパタパタとさせながらそう言った。


「そのっ、幽霊が、本来は現世にとどまっているのは良くない、というのは本当ですが! 無理やり除霊したりすることはわたしとしてもやりたくないことですし! なっ、なるべく、悔いの残らないような形で、じっくり時間をかけて考えていけばいいと思うんです! 」


 時間をかけて解決していけばいい。

 その満月の言葉は、少しだけ、丈士の暗く沈んだ気持ちを和らげてくれた。


「そう……、そうですよ、ね。急ぐことなんて、ありませんよね」

「そうです! 慌てなくても、ゆっくり考えて、一番いい方法を考えていきましょう! 」


 ようやく反応を示した丈士に、満月は少しほっとしたような顔になる。

 それから、「オホン」と咳ばらいをし、満月自身も慌てふためいていたのを落ち着けてから、丈士に約束する。


「わたしも、どうなるのがいいのか、考えさせていただきますから。一緒に、考えていきましょう」

「……。ありがとうございます」


 その満月の真剣な申し出に、丈士は少しだけ微笑んでうなずいた。


────────────────────────────────────────


「お兄ちゃん!! 遅かったじゃないの! 」


 話を終えた丈士と満月が神社の境内から降りてくると、鳥居の外でずっと待っていた星凪が丈士に飛びついてきた。


 遅い、と言っても、15分も経っていないはずなのだが、待つ方にとってはずいぶん長い時間だったのかもしれない。


「……あ、ああ、星凪。待たせて、悪かったな」


 いつものように自分にひっついてきた星凪に丈士はそう答えたが、そのぎこちない言葉と笑顔に、星凪は怪訝けげんそうな顔をする。


「どうしたのよ? お兄ちゃん? 元気ないじゃない……、ハッ!!? 」


 そして、何かに思い至ったらしい星凪は、ギギギ、と、関節の錆びたロボットのような動きで、満月の方へと視線を向ける。


 星凪の瞳からハイライトが消え、口元が不気味に吊り上がっていく。


「やっぱり……、ヤッパリ! あなた、お兄ちゃんに何かシテ……!! 」

「どうどう。落ち着け星凪」


 そんな星凪の視線を遮るように、丈士は自分自身の手で星凪の顔の前を覆い隠す。


 直接触れることはできないが、なんだかんだこうやって意志を示す方法も分かってきている。


「別にオレは満月さんから何かされたわけじゃない。本当に、ただ話をしてきただけさ」

「……どんな話よ? 」

「まぁ、その……、大したことじゃないよ」


 ギロリと丈士のことを三白眼さんぱくがんで睨みつける星凪に、丈士は作ったような笑みを浮かべながら、適当に言ってごまかそうとした。


「ウソだ」


 当然、星凪はそれで納得したりはしない。

 満月の方へ疑うような視線を向け、「がるるるるるっ」と威嚇いかくするようなうなり声をあげる。


「えっと、それじゃぁ、わたしは学校に戻りますね。一応、これでも薙刀なぎなた部の部長なので様子を見に行かないと。荷物もありますし」


 星凪に睨みつけられて苦笑した満月は、そう言うと、ペコリ、とお辞儀をし、それから、星凪に近よって顔をよせる。


「なによ? 」


 警戒するような顔をする星凪に、満月は笑いかけると、星凪にだけ聞こえるような小さな声で言った。


「大丈夫です。お兄さんを、あなたから取り上げるようなことはしません。……あなたを、お兄さんから取り上げるようなことも。……約束、です」

「……」


 その言葉に、星凪は、無言のまま、いぶかしむような顔をした。


「では、失礼します! 」


 そんな星凪からサっと素早い身のこなしで距離をとった満月は、もう一度ペコリと頭を下げると、小走りで走り去っていった。


「なによ、アイツ。……どういう意味よ? 」


 小さくなっていく満月のことを見送りながら、星凪は、何だか納得できない、もやもやとしているような顔でそう呟く。


 それから丈士の方に振り向き直った星凪は、再び丈士に問いかける。


「それで、お兄ちゃん。結局、アイツとどんな話をした来たのよ? 」

「だから、大した話じゃないって」

「……ウソつき。ちゃんとあたしにも話すって、約束したのに! 」


 星凪は丈士のことを不満そうに睨みつけ、頬をふくらましたが、丈士は「ははは」とごまかすような笑みを浮かべるだけで、星凪の問いかけには答えようとはしなかった。


 星凪はそれで納得したわけではなかったが、こうなると兄は自分に何も教えてはくれないということは分かっていたので、「ふんっ」と言ってそっぽを向くことしかできない。


「さて、帰るぞ。……せっかくだ、何か、夕飯買って帰ろうぜ」


 やがて丈士がそう言うと、星凪は、不服そうな表情のまま要求する。


「コロッケが食べたい」


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