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妹でもヤンデレでも幽霊でも、別にいいよね? お兄ちゃん? ~暑い夏に、幽霊×ヤンデレで[ヒンヤリ]をお届けします!~(完結)  作者: 熊吉(モノカキグマ)
第1章「逃げられるとでも思ったの? お兄ちゃん」

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1-18:「霊障」

1-18:「霊障」


 丈士の不安は消えなかったが、その日はそれ以降、平穏な時間が流れていった。


 星凪は、丈士との約束を守り、大人しくしていてくれた。

 丈士の昼寝の邪魔をしなかったし、トイレものぞこうとはしなかったし、かまってくれとせがんだりするようなこともない。

 それどころか、ポルターガイストの応用で器用にホウキとチリトリを使って、部屋の掃除までしてくれた。


 それは確かに丈士にとってはありがたいことではあったが、これまでの星凪の行動を思い起こすと、余計に不気味さを感じずにはいられなかった。


 夜になり夕食をとったが、その時も、星凪は味見をしたいと丈士にせがんできたものの、[あーん]はせがんでこなかったし、自分で箸を動かしていた。


(本当に、何を企んでいるんだ、コイツは)


 丈士には星凪が[何か]を企んでいることは、はっきりと分かる。

 だが、それが何なのかは、まったく分からない。


 やがて、食事の後片づけも終わり、入浴することにした。

 平日は、男の1人暮らし(星凪は幽霊だからカウントしない)だし、面倒くさがってシャワーで済ませることが多いのだが、休日くらいはゆっくり湯船につかりたいと思った丈士は、浴槽にお湯をためて入浴の準備を済ませた。


 それから丈士は、警戒しながら入浴した。

 星凪がまた、丈士の入浴中に乱入してくるのではないかと思ったからだ。


 お札を使ってそれを防ごうとして失敗して以来、星凪は[それが当たり前]だとでも言うように、丈士の入浴中に毎日のように乱入してきていた。

 水着を着ているし、ただ一緒に入るだけだから大丈夫、というのが星凪の主張だったが、丈士としてはあまりリラックスができず、困っていたことだ。


 平日はシャワーでさっさと済ます、というのも、実際は星凪のこの行動のせいでもある。

 幽霊といえど、見た目は年相応に成長した妹と一緒に風呂に入るのは、間違っている。

 兄としては、そう思わざるを得ないのだ。


 だが、丈士の警戒をよそに、星凪は姿をあらわさなかった。


 部屋ではなるべく大人しくする。

 その約束を、今になって守る気にでもなったのだろうか?


(なんか、嫌な予感がする……! )


 心配でたまらなくなってきた丈士は、少し早めに風呂を出ることにした。


────────────────────────────────────────


 風呂を出て、脱衣所で身体をふき、着替えを済ませた丈士は、そこで、周囲の空気が異様に肌寒いということに気がついた。


 まだ、4月の半ばという時期だ。

 昼はもう暖かいが、夜になればそれなりに冷え込むから、少し肌寒いくらいはあり得ることではある。


 しかし、ここは室内だった。

 頑丈な鉄筋コンクリート製の建物は断熱性もきちんとあわせ持っており、たとえ外の気温が下がったのだとしても、簡単に室内の気温まで急降下することはないはずだった。


 そして、その肌寒さには、違和感があった。

 身体の表面だけではなく、しんまで冷たくなるような、そんな感覚がある。


 丈士は、その感覚に、身に覚えがあった。


 星凪に、幽霊に触れた時の感覚に、よく似ている。


(霊障ってやつか! )


 そう理解した丈士は、緊張して身構える。


 いつものように星凪が丈士にまとわりついているというわけでもないのに、霊的な寒さを感じる。

 これが異常事態だと気づいた丈士は、慌てて脱衣所を飛び出し、星凪の姿を探した。


「アイツっ! 」


 丈士の思った通り、部屋の中には星凪の姿がなかった。


 兄に、丈士にあれだけ強く執着する星凪が、自分から部屋を出ていくことは考えづらい。

 ということは、星凪が企んでいた[何か]を実行に移すために、自分から部屋を出ていった、ということだった。


(星凪のやつ、どこに行ったんだ!? )


 丈士は、必死に考えを巡らせる。


 高原稲荷神社の巫女、羽倉 満月のところへ向かったのだろうか?

 しかし、星凪は満月には干渉しないということを明確に丈士に約束しているし、頭ではその方が良いことは理解していた様子なので、それは考えにくい。


 それに、星凪は、丈士に[ばれないように]行動しようとしていたはずだ。

 幽霊である星凪は望めば丈士の近くに好きなだけ居座り続けることができるが、しかし、彼女の望みは丈士とただ一緒にいるということではない。


 丈士に嫌われないために、星凪は[何か]をこっそりと行うつもりだったのだろう。

 だからこそ、丈士が入浴しているわずかな時間を狙って、行動を起こしたのだ。


 そうだとすると、星凪は、この201号室から遠くに行っていないはずだった。


「隣か! 」


 そう悟った丈士は、急いで玄関へ向かうと、サンダルを履き、もどかしげにカギを開いて、扉を蹴り破る勢いで外に出た。


201号室の隣、202号室の扉が吹き飛んだのは、丈士が部屋を出た直後のことだった。

 何か、猛烈な力によって吹き飛ばされた金属製の扉は、通路の手すりにぶつかり、ガシャン、という破壊音を響かせながら折れ曲がる。


 割れたコンクリートの破片などが飛んでくると思ってとっさに手で顔をかばった丈士が恐る恐る前を確認すると、折れ曲がった扉の上には、星凪の姿があった。


「星凪!? 大丈夫か、お前!? 」


 丈士がそう叫ぶと、星凪は驚いたように丈士の方を振り返り、それから、泣きそうな顔で叫んだ。


「逃げて、お兄ちゃんッ! 」


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