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妹でもヤンデレでも幽霊でも、別にいいよね? お兄ちゃん? ~暑い夏に、幽霊×ヤンデレで[ヒンヤリ]をお届けします!~(完結)  作者: 熊吉(モノカキグマ)
第1章「逃げられるとでも思ったの? お兄ちゃん」

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1-10:「神社の方から来ました」

1-10:「神社の方から来ました」


 部屋を追い出されるかもしれないという切実な問題をうったえたおかげで、丈士はようやく、星凪から一定の譲歩じょうほを引き出すことができた。


 といっても、[部屋にいる時はなるべく静かにする]という、微々たる条件を認めさせたに過ぎない。

 それは進歩には間違いなかったが、相変わらず星凪は丈士にべったりなままだ。


 大家の高橋さんが様子を見に来てくれた翌日、日曜日。

 丈士は疲れから外出する気にもなれず、部屋でゴロゴロとしていた。


 丈士の疲労ひろうの原因は、もちろん、星凪だ。

 星凪はずっと丈士につきまとい、丈士には気の休まる時間がない。

 いわゆる気疲れというやつだった。


 外出して気晴らし、といきたいところだったが、星凪は丈士にくっついて来るに違いないので、余計に疲れるだけとなるだろう。

 そうであるのなら、わずかでも星凪が[遠慮する]と約束した自室で休んでいる方が、いくらか楽だった。


 星凪はというと、ベッドに仰向けに寝転びながら漫画のページをめくっている丈士の周囲を、退屈そうにふよふよと漂っている。

 約束をしたこと、そして、[お兄ちゃんと一緒に、2人きりで暮らせる部屋]を追い出されるわけにはいかないという事情から星凪は大人しくしていたが、丈士にかまって欲しそうな視線をチラチラと向けてきている。


 だが、丈士はそれを無視した。

 また星凪に機嫌を損ねられるのは困ったことではあったが、今の丈士にはそうするだけの気力が無いのだ。


 買い物に行くつもりにもなれず、朝食、昼食共に、残り物で軽く済ませている。

 星凪という余計なモノまでいて来てしまったが、実家から届けられた米と、炊飯器を新しく買ったことがとても役に立っている。


やがて、星凪は丈士がどうあっても自分をかまってくれないと理解したのか、丈士に向かって不服そうなふくれっ面を見せた後、ポルターガイストの応用でテレビとゲーム機のスイッチを入れ、コントローラーを操作して遊び始める。

 それでも、丈士との約束を守るつもりはあるのか、音量は下げ、丈士の邪魔にならないようにしていた。


 もう3回は読んでいる漫画の最後のページをめくり終わった丈士は、それを枕元に置き、ふー、と長く息を吐きながら両目を閉じた。

 昼寝でもしようかと思った。


 部屋の呼び鈴が鳴ったのは、その時だった。


「……なんだよ、今度は? 」


 丈士は居留守を使いたい気分だったが、また大家の高橋さんがたずねてきたとかだったら、無視するのは申し訳なかった。

 しかたなくベッドから起き上がった丈士は、「はいはーい、どちら様ですかー? 」と答えながらドアののぞき穴から外を確認し、それから、きょとんとした表情で何度もまばたきをくりかえした。


 何故なら、扉の外に立っていたのは、巫女装束に身を包んだ1人の少女だったからだ。


────────────────────────────────────────


 その少女は、どこからどう見ても巫女だった。

 白衣はくえに、緋袴ひばかま

 跳ねくせのある長い黒髪を後ろでまとめたポニーテールの髪型に、活発で優しそうな印象の黒い瞳。


「あっ、すみませーん! わたし、近所の稲荷神社いなりじんじゃから来たんですけど! 」


 丈士の声を聞いたその巫女は、そう言うと、のぞき穴の向こうでにっこりと微笑む。


「実は、こちらの大家さんの、高橋さんから、幽霊を除霊して欲しいというご依頼をいただきまして! それで、まずは住んでいる方たちにお話をおうかがいしたいなと! 」


 朗らかに、はっきりとした言葉でしゃべる巫女さんだった。

 第一印象でまず間違いなく人から好感を抱かれるような、そんな少女だ。


(まっ、まずいゾッ! )


 しかし、丈士は、背中に冷や汗が浮かぶのを覚えていた。


 ドアの向こうにいる少女が、本物の巫女なのかどうか、判断はつかなかった。

 だが、好き好んでコスプレを楽しんでいるわけではなさそうだったし、何より、このタウンコート高原には元々幽霊が住みついており、大家の高橋さんをはじめ、住民たちの悩みのタネになってきたという経緯けいいがある。


 近頃再燃した幽霊騒ぎ(もっとも、この原因は元々アパートに住んでいた幽霊ではなく、丈士と星凪にあったが)に対応するため、高橋さんが[専門家]に依頼を出したとしても、何も不思議なことではなかった。


「あのー、すみませーん、お話、ダメでしょうかー? 」


 丈士が焦りに焦っているのも知らず、巫女の少女はそう問いかけてくる。


(忙しいからって、追い返すか? )


 丈士は何も答えないまま、必死に対処方法を考えていた。


 大家の高橋さんが除霊の依頼を出した[専門家]ということは、当然、一般の人々に比べて霊的な事象に詳しいし、その対処方法も心得ているのだろう。

 もし、そんな相手と、丈士の妹、ヤンデレ妹幽霊の星凪が遭遇してしまったら、何が起こるか分からない。


 だが、無視することも難しい。

 すでに居留守は使えないし、何というか、無理やり追い返して、[不自然だ]と怪しまれるのもよくない。


「え、えっと……、少しだけなら、大丈夫です」


 不自然にならないように適当に応対して、なるべく早く帰ってもらおう。

 そう判断した丈士は、愛想あいそ笑いを浮かべながら扉を開くことにした。


「あ、こんにちは! お休みのところ、すみま……、せん? 」


 巫女は人当たりの良い明るい笑顔を浮かべたままだったが、丈士の顔と、次にその向こうにある部屋の中の様子を目にして、急に真顔になって何度かまばたきをくりかえした。


「え? 部屋の中に、何か? 」


 その巫女の様子に、思わずその視線の先を振り返った丈士だったが、そこに星凪の姿があることを見て絶句した。


「なぁに? お兄ちゃん、怖い顔して。……それより、お客さん? 」


 状況を理解していないのか、星凪は丈士の表情を見て、不思議そうに首をかしげるだけだった。


 辺りが沈黙に包まれること、数秒。


 先に動いたのは、巫女の少女だった。


→巫女さんは、こんな子です。

https://www.pixiv.net/artworks/91229175

※謎ポーズでごめんなさい。躍動感とか出したかったんですが熊吉にそんな画力はなかったです。

多分、これから必殺技とか出します(設定は作ってないですが(笑))。


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