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妹でもヤンデレでも幽霊でも、別にいいよね? お兄ちゃん? ~暑い夏に、幽霊×ヤンデレで[ヒンヤリ]をお届けします!~(完結)  作者: 熊吉(モノカキグマ)
第七章:「決着をつけるために」

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7-9:「探索」

7-9:「探索」


 昼食を済ませ、小休憩を挟んだ後、丈士たちはたたり神と戦うためにさっそく動き出した。


 たたり神がいる場所は、おおよその見当はついている。

 問題なのは、そこでできるだけ有利に戦うためになにができるか、そしてたたり神を逃がさないためになにをしておくべきかということだった。


 基本中の基本となるのが、周辺の状況の確認だった。

 丈士も星凪もここで生まれ育ったので土地勘はあるが、霊的な存在に対処する際に頼りとなる満月やゆかりにはそれがなく、たたり神と戦う前に知っておいてもらわなければならない。

 また、霊感のある人間からすれば、何かしらの気づきもあるはずだった。


 丈士と星凪の両親には「満月とゆかりに近所を案内してくる」と言って、丈士たちは連れ立って家を出発した。

 両親には元々、満月とゆかりが丈士の帰省に同行しているのは、都会にはない田舎の自然や風景を楽しむためだと説明してあるから、両親は「暑いから帽子をかぶって行きなさい」と言っただけで、丈士の言葉をすんなりと信じてくれた。


 両親が丈士たちのために用意してくれたのは、両親が畑仕事の時に使っていたような麦わら帽子だった。

 丈士は元々自分用のものを持っていたので、やや使い古された感のあるそれを、満月とゆかりは両親が予備にととっておいた新品をかぶることになった。


 農作業用の素朴なものだったが、大きなスーツケースをわざわざ持ち込むほどにはおしゃれに興味があるゆかりによってリボンが巻かれ、満月とゆかりがかぶる麦わら帽子はかわいらしい見た目にアレンジされている。


「ね、お兄ちゃん。まずは、どこから見てもらおうか? 」


 家を出て、とりあえず二枝川の方向に向かって歩いていた丈士の前に割って入るようにしながら星凪がそうたずねてくる。

 自分だけ仲間外れはイヤだと思ったのか、星凪も今はいつものセーラー服に麦わら帽子をかぶっていた。


「う~ん……、そうだな」


 丈士は少し考え込んだ後、ピン、と右手の人差し指を立てる。


「まずは、橋の上に。そこからなら、二枝川が一望にできますから」


 それでいいですか、と満月とゆかりに確認すると、2人とも異論はないようだった。

 地元民である丈士と星凪の土地勘を、素直に信じてくれているようだった。


────────────────────────────────────────


 それから丈士たちは、できる範囲でたたり神が潜んでいるであろう二枝川のふちの周辺を探索した。

 丈士が最初に提案した、川の上をまたぐようにかかっている橋をはじめとし、星凪が川に流されてしまった川原や、かつてたたり神を祭っていた神社の跡地。

ふちの周辺の地形がどうなっているかなども、地元民しか知らないような小道を使って確かめた。


 ただ、二枝川のたたり神が潜んでいるであろうふちには、近づきすぎないようにした。

 たたり神は負った傷の回復のためにじっとしているはずだったが、あまり近づきすぎてたたり神を刺激したくなかった。


 それから丈士たちは、日が暮れる前に家へと戻った。

 暗くなるまで外出していると両親に心配されるだろうし、何より、一般的に霊などは夜の方が活動は盛んになるため、川の近くにいることは避けたかったからだ。


 帰宅すると、両親が夕食を用意して待っていてくれた。


 どうやら、丈士たちが外出している間にわざわざ買い物に行って来てくれたらしい。

 地元でとれた食材を使った料理が食卓に並んでいる。


 目を引くのは、二枝川で取れたあゆを塩焼きにしたものだった。

 残念ながら完全な天然ものではなく、二枝川の鮎は毎年放流することで数を保っている、半分養殖のような状態のものだったが、自然の中で育つためその味は天然ものに近く、地元でよく食べられているほか、田舎の自然や風景を求めてやって来た観光客にも人気の料理だった。


 その他にも、素朴だが心づくしの料理が並んでいる。

 夏野菜を使った味噌汁に、ゆでたオクラを薄切りにして鰹節かつおぶし醤油しょうゆなどの調味料であえたもの、ジャガイモの煮っころがし。


 あちこち歩き回ってきたおかげでほど良く空腹だった丈士たちは、もちろん美味しくそれらの料理をたいらげた。


 その後は、丈士たちはゆっくりとくつろぐことにした。

 夜の行動は危険かもしれなかったし、明日以降も、たたり神と戦って勝つための作戦を練るために、いろいろ動かなければならない。

 しっかり休んで体力を回復しておかなければならなかった。


 と言っても、田舎が初めてであるらしい満月とゆかりは、なかなかじっとしてはいられない様子だった。

 お風呂に入ってさっさと眠ってしまった方が疲れをとるにはいいのだろうが、せっかくここまで来たのだしすぐに寝てしまうのはもったいない、と、縁側で夜風に当たりながらおしゃべりなどを楽しんでいる。


 丈士はというと、縁側のすぐ隣の和室で、巻いた座布団を枕に仰向けに寝転んでいた。

 地元とはいえ歩き回って疲れてはいたし、時折軽く咳なども出ていたが、夜といってもまだ気温は下がりきっておらず、風通しの良い1階で涼んでから自室に戻ろうと思っていた。


「丈士、あんた、カゼかい? 」


 軽く咳き込む丈士のことを、満月とゆかりに冷たい麦茶を持ってきてくれた母親が少し心配するような顔でのぞきこんだ。


「なんとなくだけど、顔色も悪いような気もするし。今日はもう、やすんだらどうだい? 」

「はは、大丈夫、大丈夫。ちょっと、久しぶりに帰ってきて、はしゃいだだけだから」


 丈士はそう言って笑って見せ、母親はその言葉を信じたのか居間でテレビドラマを見るのに戻って行った。


(そう。……オレは、大丈夫。大丈夫なんだ)


 丈士がそんなことを思いながら、目を閉じて身体を休めていた時だった。


 急に、辺りの気温が数度、一気に下がったような気がした。


 だが、すぐに、丈士はそれが、本当に気温が下がったわけではないことに気がついた。

 それはもう、これまでに何度も経験してきた気配だったからだ。


 念のため、丈士の横で寝ころんでいた星凪の方を確認すると、星凪はすでに起き上がっていて、満月とゆかりがいるはずの縁側の方を見ている。

 どうやら、この感覚は星凪が丈士に急に抱き着いてきたとか、そういう原因ではないようだった。


(まさか、たたり神が攻めて来たのか!? )


 丈士は何も知らない両親を驚かさないように心の中でだけそう思いながら、慌てて起き上がった。


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