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妹でもヤンデレでも幽霊でも、別にいいよね? お兄ちゃん? ~暑い夏に、幽霊×ヤンデレで[ヒンヤリ]をお届けします!~(完結)  作者: 熊吉(モノカキグマ)
第六章「生きている」

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6-7:「プール:2」

6-7:「プール:2」


 更衣室で財布を見つけ、それを手に戻って来た丈士が周囲を探すと、満月とゆかりの姿はすぐに見つけることができた。


 2人とも、足のつかない深いプールではなく、子供や子供もちの家族向けの、簡単に足がつく浅いプールで遊んでいた。

 今はビーチボールを使って、ボールを落とさないようにする遊びをしている。


「満月さん。音寺さん。少し早いけど、店が混む前に昼にしないか? 」


 丈士がプールサイドから2人に声をかけると、満月は「あ、そうですね! もう、いい時間ですね」とボールをキャッチしながらうなずき、ゆかりは(ええい、満月先輩との時間を邪魔してっ! )と、恨みがましい視線で丈士を睨みつけた。


「そんな顔すんなって。ほら、オレが何かおごるよ」


 遠慮なく向けられるゆかりからの抗議の視線に、丈士は苦笑し、それから、自身の手に持った財布をポンポンと軽く放り投げながらそう言った。


「むぅ。おごってくれるというのなら、しかたありませんね」


 その丈士の仕草に、ゆかりは少しすましたような顔でうなずいてみせる。


(ヤレヤレ、ゲンキンなコだぜ)


 丈士は内心で少し呆れながらも、4人で連れ立って売店へと向かって行った。


────────────────────────────────────────


 店が混む前に早めに昼食を買っておこうという考えでいたのだが、同じことを考える人は多いらしく、軽食や食事などを売っている店はすでに込み始めていた。


 この施設には、レストランのように座って落ち着いて食べられる店と、海の家のように簡易な作りのフードコートのような店があったが、丈士たちはフードコートの方で昼食を食べることにした。

 というのも、プールでの思い出を話す時に満月が「焼きそばが美味しかった」という話を嬉しそうにするので、その味が丈士も星凪もゆかりも気になっていたからだった。


 実際、ここの焼きそばは美味しかった。

 泳いだりして運動した後でほどよく空腹になっていたということもあったが、大きな鉄板でじゅうじゅうと焼かれた焼きそばは香ばしく、麺はもちもちとした食感で、ソースの風味と青のりの風味が合わさって絶品だった。


 だが、量が少し物足りなかった。

 いつもなら十分お腹いっぱいになれる量を買ったのだが、やはり運動をした後で空腹になっていたせいか、丈士はおかわりを買いに行かなければならなかった。


 初めて訪れたレジャープールにまだ興奮がおさまらないのか、「ちょっとあっちを見てくる! 」と飛んで行ってしまった星凪と別れ、丈士がたこ焼きとアメリカンドッグ、イチゴシロップのかき氷を手に戻ってくると、そこでは満月がただ1人で待っていた。


 ゆかりは、どうやらトイレにでも行ってしまったのだろう。

 満月は4人集まってわいわいおしゃべりをしていた席に残ったまま、少しうつむいていた。


 その横顔を目にして、丈士の心はざわついた。


 満月の横顔は、何か、辛そうに見えたのだ。

 何かを必死に我慢して、耐えているような、そんな印象だった。


 だが、丈士が戻ってきたことに気がつくと、満月はすぐに、いつも明るい笑顔になった。


「あ、おかえりなさい、丈士さん! ずいぶん、買い込んできましたねぇ」

「ああ。何か、腹が減っちゃってさ。よかったら、満月さんも食べます? 」

「あっ、ハイ、いただきます」


 丈士が満月に買って来たものをすすめると、満月は嬉しそうにうなずき、たこ焼きを1つ楊枝で指して頬張った。


「うん! 美味しいですね! ありがとうございます、丈士さん! 」


 それから満月は笑顔のままそう言った。


 イスに座り、自身も楊枝でたこ焼きを頬張った後、丈士は2つ目のたこ焼きを口に運びながら、じっと、難しい顔で考え込む。


「あの、丈士さん? どうか、しましたか? 」


 丈士から向けられる視線に少し気恥ずかしくなったのか、満月はそう言いながら丈士から視線をそらした。


「言った方がいいのかどうか、あんまり自身はないんですけど」


 たこ焼きを咀嚼そしゃくして飲み込んだ後、丈士は、少し居づらそうにしている満月に向かって口を開いた。


「満月さん。……何か、無茶してるんじゃありませんか? 」

「……えっ!? そ、そんなこと! ありませんよ! 」


 満月は丈士の言葉に少し驚いた後、慌てて、身体の前で両手をふって見せる。

 だが、満月のことを真剣なまなざしで丈士が見つめ続けると、その視線に耐え切れなくなったのか、満月は丈士から視線をそらした。


「そんなこと……、ありませんよぅ」


 それから、今にも消えてしまいそうな声で、満月はそう言った。


 それは、否定の言葉ではあったが、実質的に丈士の指摘を肯定する言葉だった。


「満月さん。もしかして、水が怖いんじゃないですか? 」


 あまり満月を見つめ続けるのも悪いと思い、丈士も満月から視線をそらし、たこ焼きを頬張りながら、自分の思ったことを口にする。


「何か、ずっと、足がつく浅いプールで遊んでいたみたいですし。……あの時、満月さん、オレを追いかけて、助けようとしてくれましたよね? でも、その時、おぼれかけたって。……もしかして、水の中に、アイツが、たたり神の姿が、ちらついてるんじゃないですか? 」


 その丈士の言葉に、満月は無言のまま、肯定も、否定もしなかった。

 ただ、うつむいたままだ。


 だが、今の状況では、それは、丈士が言っていることが事実であると、認めているのと同じことだった。


「自分でも、今日、初めて気がついてんですけど……。すみません、実は、少し怖くなってきちゃいまして。そのせいで、ゆかりちゃんと水に潜る練習をしようっていう約束だったのに、それもうやむやに……。でも、せっかくみんなで楽しみにしてたのに、雰囲気悪くしちゃうかな、なんて」


 丈士がじっと、満月が何かを言うのを待っていると、やがて、満月はか細い声でそう言った。


「すみません……。丈士さん」

「満月さんは、何も悪く何てありませんって。悪いのはアイツ……、たたり神ですよ」


 小さく謝罪する満月に、丈士はかき氷を口に運んでガリガリとかみ砕きながら言う。


「でも、満月さん、もう少しオレのことも頼って欲しかったです」

「えっと……、丈士さんを、頼る……? 」

「オレは、満月さんみたいに霊と戦えないし、誰かを気遣って、いつも明るくしていられるような強さはないし。……でも、そんなオレでも、満月さんの心配をさせてもらえたら、嬉しいかなって」


 丈士のその言葉に、満月はしばらく無言で、少し驚いたような顔で丈士のことを見つめていた。


 やがて、満月は少しだけ涙をこぼし、嬉しそうに丈士に向かって微笑みかける。


「ありがとうございます。丈士さん」


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