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妹でもヤンデレでも幽霊でも、別にいいよね? お兄ちゃん? ~暑い夏に、幽霊×ヤンデレで[ヒンヤリ]をお届けします!~(完結)  作者: 熊吉(モノカキグマ)
第六章「生きている」

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6-6:「プール:1」

6-6:「プール:1」


 休日の午前中ということでそこそこ人が乗っている電車で数駅。

 丈士たちが目的地としているレジャープールは、降りた駅からさらにバスに乗って10分ほどの場所にあった。


 水場で遊んでいるイメージがあるからか、かわいらしくデフォルメされたカピバラがマスコットキャラとなっている施設で、まだ夏本番とは言えない時期だったが、かなりの人たちでにぎわっていた。


 入場チケットを買ってゲートをくぐった後、満月とゆかりと一度別れて更衣室へと向かった丈士は、そこで、数えきれないほどたくさんのロッカーが並んでいることにまず驚かされた。

 設備の充実した大きなレジャープールだったから、訪れる人の数も相当多いのだろう。

 どれだけロッカーがあるかなど数えたりはしなかったが、ざっと見ただけでも数百個はありそうだった。

 その光景に、丈士は少しソワソワとしてしまう。


 とりあえずあいているロッカーを見つけ、そこに自分の荷物や身に着けていた服をしまい、丈士の着替えをじっくり観察しようとする星凪を何とかあしらいながら水着に着替えた丈士は、泳ぐつもり満々で買って来たゴーグルを頭の上に乗せ、更衣室を後にした。


 外は、いい天気だった。

 ほんの少し雲があるだけの、ほとんど快晴と言っていいほどの空で、豊富な日差しが燦々(さんさん)と降り注いでくるのが肌でわかる。


 日差しの眩しさに手をかざしながら周囲を見渡すと、そこには、大勢の人々がいて、プールを楽しんでいるようだった。


 正面には、ぐねぐねと曲がりくねっている流れるプール。

 左側には、機械で海のような波を起こしている波のあるプール。

 右側の奥には、この施設の一番の目玉であるウォータースライダーがそびえている。


「わーっ、すごい! 人がいっぱい! 」


 星凪も、興奮を隠せず、瞳を輝かせていた。


 丈士は早くプールに飛び込んでみたかったが、自分1人で先に向かうのは満月やゆかりに悪いと思ってじっとこらえ、適当な日陰のベンチを見つけてそこで待った。


 ほどなくして、更衣室で着替えを済ませた満月とゆかりがやってくる。


「すみません! 少し、準備に手間取りまして」


 そう言いながらあらわれた満月は、何というか、[フル装備]だった。


 満月はビキニタイプの水着姿で、健康な肌が青い空によく映えている。

 そして、その右手にはカラフルなビーチボールと、タンクつきの水鉄砲。

 左手には、抱き着くのにちょうどいい大きさの、かわいらしいイルカの浮き風船。


 プールで遊びまくるつもりだと一目で分る、はしゃいだ格好をしていた。

 準備に手間取ったというのも、納得だ。


「ああ、コラ! あんまり見ないでください! 満月先輩がけがれます! 」


 ある意味期待以上の姿であらわれた満月の姿を見て正直嬉しかった丈士だったが、そんな丈士の視線から満月を守るようにゆかりが間に割って入って来る。


 ゆかりはというと、上下に別れたビキニタイプの水着だが、こちらはかわいらしいフリルがついたものだった。

 しかし、ゆかりが好きなのか、スミレの花に近い紫色をしたその水着は、フリルつきなのにどこか落ち着いた雰囲気で、少し大人っぽく思える。

 また、テレビ番組などに出ているためか、素顔を隠すためにサングラスを身に着けていた。


 ちなみに、星凪はというと、相変わらずのスク水姿だ。


(ああ、お兄ちゃんの好み、わかってないな~)


 と、星凪は満月とゆかりの水着姿を見て勝ち誇ったような笑みを浮かべていたが、正直に言うと、今の丈士には星凪のスク水よりも満月やゆかりの水着姿の方が嬉しかった。

 もちろん、星凪の機嫌を損ねたくはないので黙っていたが。


けがれるって、さすがに酷くない? 」

「酷くないです! 満月先輩は私がしっかり守りますから! 」


 満月の姿を隠されてちょっと残念に思いながら、ゆかりの塩対応に少し傷ついたように丈士は抗議したが、ゆかりは小さく舌を出しながら丈士のことを睨んだだけだった。


「まぁまぁ、せっかく遊びに来たんですから、楽しく過ごしましょ! ねっ? 」


 険悪になる雰囲気をやわらげるべく、満月はなだめるような笑顔でそう言うと、プールサイドに向かって駆けていき、丈士たち3人を振り返って催促さいそくする。


「今日は、イヤなことはみ~んな忘れて、いっぱい遊びましょ! 」


 その言葉に丈士は肩をすくめ、ゆかりはしょうがないとでも言いたそうに微笑み、それからお互いに視線を交錯させる。


 ひとまず休戦とすることで合意すると、丈士、星凪、ゆかりの3人は、満月を追ってプールサイドへと向かって行った。


────────────────────────────────────────


 学校のプール以外の場所で、まともに泳いだのはずいぶん久しぶりだった。


 たたり神によって星凪の命を奪われた3年前のあの時から、丈士は必要以上に水辺に近づくことを避けながら生きてきたから、純粋じゅんすいに楽しむために泳ぐ機会などなかった。


 丈士は流れるプールを3週は泳ぎ、ウォータースライダーを5回は滑り降りて、飛び込み台から飛び込んでみたり、波のあるプールを行ったり来たりして見たり、ひとまず回れるところはすべて回った。


 ひとまず満足した丈士は、そこで、近くに満月やゆかりの姿がないことに気がついた。

 星凪は「水に入るのはやっぱり怖い」ということで、丈士の頭上の辺りにふゆふよと浮かびながら周囲で遊んでいる人たちを興味深そうに眺めているが、いつの間にか丈士たちは単独行動をしてしまっていたようだった。


 施設の壁に設置されている時計によると、時刻は11時30分ほど。

 もうすぐ昼食時だった。


「店が混む前に、なんか買うか」


 丈士はそう呟くと、まず財布を取るために更衣室へ向かい、それから、満月とゆかりを探しに向かうために、プールからあがることにした。


※作者より

 投稿ペースを乱してしまい、読者様には大変ご迷惑をおかけして、申し訳ございませんでした。


 水着回、ということで、熊吉なりにイラストもご用意させていただきました。

 もしよろしければ、ご覧いただけますと幸いです。

https://www.pixiv.net/artworks/92178945


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